再生可能エネルギーは脱炭素だけのものではない エネルギー安全保障にもつながる理由編

経営

太陽光や風力などの再生可能エネルギーというと、二酸化炭素の排出量を減らすためのものというイメージが強いでしょう。

企業が再生可能エネルギーを導入する理由についても、脱炭素や環境対策として説明されることが多くあります。

しかし、気候安全保障という視点から見ると、再生可能エネルギーにはもう1つの意味があります。

それがエネルギー安全保障です。

海外から運ばれてくる燃料だけに依存せず、国内や地域、自社施設でエネルギーをつくることができれば、エネルギー供給の選択肢を増やすことができます。

再生可能エネルギーは、環境対策だけではなく企業の事業継続とも関係しているのです。

エネルギー安全保障とは何か

エネルギー安全保障とは、社会や企業活動に必要なエネルギーを安定的に確保できる状態をつくることです。

企業は電気や燃料がなければ事業を続けることができません。

しかし、エネルギーの供給はさまざまな要因によって影響を受けます。

国際情勢が変化することがあります。

資源価格が急騰することもあります。

自然災害によって発電所や送電網、港湾などが被害を受ける可能性もあります。

こうした事態が起きても必要なエネルギーを確保できるかどうかが、エネルギー安全保障の重要なポイントです。

化石燃料への依存には供給リスクがある

石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料は、現代の経済活動を支えてきました。

一方、資源の産出地域が限られているため、利用する国や企業は供給元の状況から影響を受けます。

国際情勢の変化によって供給が不安定になれば、価格が大きく上昇する可能性があります。

輸送ルートに問題が生じれば、必要な燃料が予定通り届かないことも考えられます。

企業が直接燃料を輸入していなくても、燃料価格が上昇すれば電力料金や物流費などを通じて影響を受ける可能性があります。

エネルギーの問題は企業のコストと事業継続の両方に関係しているのです。

再生可能エネルギーは国内でつくることができる

再生可能エネルギーの特徴の1つは、国内や地域でエネルギーを生み出せることです。

太陽光であれば日射を利用します。

風力であれば風を利用します。

バイオマスであれば地域の資源を利用できる場合があります。

海外から燃料を運んでこなければ発電できない仕組みとは異なり、国内に存在するエネルギー資源を活用できます。

もちろん、発電設備の製造や保守などまで含めれば海外との関係がなくなるわけではありません。

それでも、エネルギー源そのものを国内で確保できることには安全保障上の意味があります。

企業が自社で発電する意味

企業が工場や倉庫などの屋根へ太陽光発電設備を設置する場合を考えてみます。

通常時には、自社でつくった電気を利用することで外部から購入する電力量を減らせる可能性があります。

これは電気料金の削減だけを意味するものではありません。

外部のエネルギー供給への依存度を一定程度下げることにもつながります。

さらに、停電時の利用に対応した設備や蓄電池などを組み合わせれば、非常時の電源として利用できる場合があります。

企業がエネルギーの単なる消費者から、一部を自ら生産する立場へ変わるわけです。

エネルギー価格の変動にも備えられる

企業にとってエネルギー価格の急上昇は大きな経営リスクです。

特に電力や燃料を大量に使用する製造業では、エネルギー価格の上昇が製造原価に直接影響します。

自社で使用する電力の一部を再生可能エネルギーによって確保できれば、購入電力の価格変動による影響を一定程度抑えられる可能性があります。

もちろん、発電設備の導入には初期投資や維持費が必要です。

それでも、エネルギー調達を長期的に考える場合には、単純な現在の電気料金だけではなく将来の価格変動リスクまで含めて検討する意味があります。

再生可能エネルギーだけですべて解決するわけではない

再生可能エネルギーにも弱点があります。

太陽光発電は夜間には発電できません。

曇りや雨の日には発電量が低下します。

風力発電も風の状況によって発電量が変化します。

つまり、必要なときに必ず必要な量を発電できるとは限りません。

そのため、再生可能エネルギーだけに依存すれば安全保障上の問題がすべて解決するわけではありません。

重要なのは、複数のエネルギー源を組み合わせることです。

蓄電池との組み合わせが重要になる

再生可能エネルギーの弱点を補う方法の1つが蓄電池です。

発電量が多い時間帯に電気を蓄え、発電量が少ない時間帯に利用します。

企業のBCPという観点では、停電時に重要設備へ電力を供給する手段にもなります。

ただし、蓄電池にも容量があります。

長期間の停電を蓄電池だけで乗り切ることが現実的とは限りません。

系統電力、自家発電、再生可能エネルギー、蓄電池など、それぞれの特徴を組み合わせることが重要です。

1つの方法へ集中するのではなく、エネルギーにも分散という考え方が必要なのです。

地域でエネルギーをつくる意味

再生可能エネルギーは、企業単独だけでなく地域のレジリエンスとも関係します。

例えば、地域で発電した電力を地域の施設や企業で利用する仕組みを整える方法があります。

災害時には、避難所や病院など重要な施設へ電力を供給できる仕組みを組み合わせることも考えられます。

企業が地域のエネルギーインフラの一部を支える存在になる可能性があるわけです。

これは、企業が地域社会と共存しながら事業を継続するという気候安全保障の考え方ともつながります。

脱炭素と安全保障を同時に考える

再生可能エネルギーの導入を、二酸化炭素排出量の削減だけで判断すると、企業にとって環境対策のコストに見えることがあります。

しかし、エネルギー安全保障という視点を加えると見方が変わります。

外部エネルギーへの依存度を下げる。

価格変動リスクを抑える。

非常時の電源を確保する。

地域のエネルギー供給力を高める。

こうした効果まで含めれば、再生可能エネルギーは企業のレジリエンスを高める設備投資として考えることもできます。

環境対策と経営戦略を別々に考えるのではなく、両方を一体として考えることが重要になります。

結論

再生可能エネルギーは、二酸化炭素排出量を減らすためだけのものではありません。

国内や地域、自社施設でエネルギーを生み出すことができれば、海外からの燃料や外部の電力供給への依存度を一定程度下げることができます。

さらに、エネルギー価格の変動への備えや、災害時の事業継続にもつながる可能性があります。

一方、太陽光や風力は天候によって発電量が変化するため、再生可能エネルギーだけに依存することも新たなリスクになります。

重要なのは、系統電力、自家発電、再生可能エネルギー、蓄電池などを組み合わせ、供給源を分散することです。

これまで再生可能エネルギーは、主に環境問題への対応として語られてきました。

これからは「エネルギーをどこから安定的に確保するのか」という安全保障の視点からも考える必要があります。

気候安全保障の時代には、脱炭素への投資と事業継続への投資が重なり始めているのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月25日 朝刊 「気候安全保障」時代の企業経営

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