首都圏中古マンションは「住む家」から「値上がり資産」へ変わったのか ― PER最高更新が示す市場構造の変化(不動産投資分析編)

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首都圏の中古マンション市場で、これまでとは異なる現象が起きています。

東京カンテイによれば、2025年時点の首都圏中古マンションPERは31.78倍となり、過去最高を更新しました。しかも、新築マンションPER(30.46倍)を上回っています。

本来、不動産投資は「賃料収入」を基準に採算を判断します。しかし、現在の中古マンション市場では、賃料よりも価格上昇の期待が先行し、「いくらで貸せるか」より「いくらで売れるか」が重視される局面に入っています。

これは単なる不動産価格上昇ではなく、日本の資産市場そのものの性格変化を映している可能性があります。

マンションPERとは何か

PER(株価収益率)は本来、株式投資で使われる指標です。

不動産では、

「物件価格 ÷ 年間賃料収入」

で計算されます。

例えば、

  • 1億円のマンション
  • 年間賃料300万円

であれば、

PERは約33倍となります。

これは、

「投資回収に33年かかる」

ことを意味します。

つまり、PERが高いほど投資効率は低下していることになります。

不動産投資では一般的に、

  • PERが低い → 利回りが高い
  • PERが高い → 利回りが低い

という関係になります。

今回の特徴は、「賃料以上に価格だけが急上昇している」点にあります。

なぜ中古マンションPERはここまで上昇したのか

新築価格高騰による中古流入

近年、首都圏新築マンション価格は急騰しています。

都心部では2億円超えも珍しくなく、一般的な高所得層でも購入が難しくなっています。

その結果、

  • 新築を諦めた実需層
  • 海外投資家
  • 富裕層
  • 買い取り再販業者

が中古市場へ流入しました。

特に築10年前後の「まだ新しい中古」は、新築代替として人気が集中しています。

賃料はそれほど上がっていない

一方で、賃料上昇は限定的です。

記事では、

  • 中古マンション価格:前年比14.9%上昇
  • 月額賃料:前年比2.8%上昇

とされています。

つまり、

「家賃収入の成長速度を価格上昇が大きく上回っている」

状態です。

これは不動産市場が、

「インカムゲイン(賃料収入)」

よりも、

「キャピタルゲイン(値上がり益)」

を重視する市場へ変化していることを意味します。

「住むための住宅」から「金融資産」への変化

現在の都心中古マンションは、単なる住宅ではありません。

むしろ、

  • 株式
  • 外貨
  • 美術品

に近い「資産保全商品」として扱われ始めています。

特に東京の都心部では、

  • 円安
  • 世界的インフレ
  • 日本の超低金利
  • 海外マネー流入

が価格を押し上げています。

これは「住宅市場」というより、

「グローバル資産市場」

に近い動きです。

神谷町PER79.88倍という数字は、もはや「賃貸採算」では説明できない水準です。

なぜ投資家は高PERでも買うのか

通常、PERが上昇すると投資妙味は低下します。

それでも買われる理由は、

「さらに値上がりすると考えられているから」

です。

つまり現在の中古マンション市場では、

  • 家賃収入
  • 実需
  • 利回り

よりも、

  • 希少性
  • 流動性
  • 将来売却価格

が重視されています。

これは株式市場でいう「成長株投資」に近い構造です。

投資家は、

「家賃で回収する」

のではなく、

「高く売却して利益を得る」

ことを期待しています。

しかし、この構造は永続するのか

ここが最大の論点です。

現在の価格上昇は、

  • 超低金利
  • 世界的金融緩和
  • 円安
  • 東京一極集中

に支えられています。

しかし今後、

  • 金利上昇
  • 景気減速
  • 海外マネー縮小
  • 人口減少
  • 実需層の所得停滞

が進めば、PERの高い市場は調整圧力を受けやすくなります。

特に注意が必要なのは、

「賃料が裏付けになっていない価格上昇」

です。

不動産価格の本質的価値は、最終的には賃料収益に収れんしやすいためです。

実需層にとって何が起きているのか

現在の市場では、

「住むために買う人」

が最も苦しい立場になっています。

理由は、

  • 価格上昇
  • 金利負担増
  • 管理費・修繕積立金上昇
  • 固定資産税増加

が同時進行しているためです。

一方で賃金上昇は限定的です。

その結果、

「東京で普通に住宅を買う」

こと自体が、非常に難しくなっています。

住宅が生活インフラではなく「投資商品化」すると、実需層は市場から排除されやすくなります。

これは海外主要都市でも起きてきた現象です。

中古マンション市場は今後どうなるのか

今後のポイントは、

「賃料市場が価格上昇に追いつけるか」

です。

もし賃料が上がらなければ、

  • 利回り低下
  • 投資妙味低下
  • 購入層縮小

につながります。

一方で、

  • 東京への人口集中
  • 富裕層需要
  • インフレ耐性資産需要

が続けば、高PER状態が長期化する可能性もあります。

つまり現在の中古マンション市場は、

「住宅市場」

「金融市場」

の中間に位置する特殊な局面にあると言えます。

結論

首都圏中古マンションPERの過去最高更新は、単なる不動産価格高騰ではありません。

それは、

「住宅が値上がり資産へ変質している」

ことを示しています。

かつて不動産投資は、

「家賃収入を積み上げる投資」

でした。

しかし現在の都心中古市場では、

「将来さらに高く売れる期待」

が価格形成を主導しています。

これは東京不動産市場の金融資産化とも言える変化です。

ただし、賃料成長を超える価格上昇は永続しません。

今後は、

  • 金利
  • 実需層の所得
  • 海外資金
  • 人口動態

が、中古マンション市場の持続可能性を左右していくことになります。

参考

・日本経済新聞 朝刊 2026年5月8日
「首都圏中古マンション、新築より割高感 『PER』過去最高32倍」

・東京カンテイ 「中古マンションPERに関する調査」

・日本経済新聞 「マンション価格高騰」関連記事各種

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