税効果会計では、将来の税負担を軽くする効果がある場合に繰延税金資産を計上するだけでなく、反対に、将来の税負担が増えると考えられる場合には繰延税金負債を計上します。
今回の参考記事では、その例として特別償却準備金が取り上げられています。
5000千円の機械について取得価額の30パーセントに当たる1500千円を特別償却限度額とし、法定実効税率40パーセントを前提に600千円の税効果額を計算しています。その結果、税効果を考慮した特別償却準備金は900千円となっています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250… 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…
圧縮積立金についても、税負担を現在から将来へ繰り延べるという点から、繰延税金負債の考え方を理解することができます。
圧縮記帳とは何か
会社が固定資産を取得するとき、国や地方自治体から補助金などを受け取ることがあります。
たとえば、会社が設備投資のために補助金を受け取り、その資金を使って機械を購入したとします。
補助金を受け取れば、通常は会社に利益が生じることになります。
しかし、一定の要件を満たす場合には、圧縮記帳によって、その時点での課税を繰り延べることが認められることがあります。
圧縮記帳とは、補助金などによって固定資産を取得した場合に、一定の金額について固定資産の取得価額を圧縮するなどして課税を繰り延べる仕組みです。
重要なのは、税金そのものが永久に免除される制度ではないという点です。
現在の税負担を軽減する代わりに、将来の税負担が増える可能性があります。
圧縮積立金とは何か
圧縮記帳には、会計上の処理方法として積立金方式が用いられることがあります。
この場合、圧縮に相当する金額を圧縮積立金として純資産の部に積み立てます。
会社の利益をそのまま減らしてしまうのではなく、税務上の課税繰延べ効果を純資産の中に積立金として反映させる考え方です。
ここで税効果会計が関係してきます。
圧縮積立金を考えるときには、税効果を考慮する必要があるためです。
今回の参考記事で扱われている特別償却準備金でも、税効果を考慮したうえで積立額が計算されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…
現在の税負担が軽くなると将来に影響が出る
圧縮記帳によって現在の課税所得を抑えることができれば、その事業年度の税負担は軽くなります。
しかし、その効果が永久に続くとは限りません。
たとえば固定資産の税務上の帳簿価額が圧縮されれば、その後の減価償却費も圧縮しなかった場合より小さくなることがあります。
すると将来は、圧縮記帳をしなかった場合に比べて税務上の損金が少なくなります。
損金が少なくなれば、その分だけ課税所得が増える方向に働きます。
つまり、
現在の税負担は軽くなる
将来の損金は少なくなる
将来の課税所得が増える
将来の税負担が増える
という関係になります。
税金を免除しているというより、税金を支払う時期を将来へ移していると考えると分かりやすくなります。
将来加算一時差異が生じる
これまでの記事では、貸倒引当金や賞与引当金などを通じて将来減算一時差異を取り上げてきました。
現在は損金にならなくても将来損金になるため、将来の課税所得を減らすタイプの一時差異です。
圧縮積立金では反対方向の税効果を考えます。
現在は課税を繰り延べることができても、将来その差が解消するときには課税所得を増加させる方向に働きます。
このような一時差異が将来加算一時差異です。
将来減算一時差異が繰延税金資産につながるのに対して、将来加算一時差異は繰延税金負債につながります。
繰延税金負債とは何か
繰延税金負債とは、現在存在する一時差異が将来解消するときに税負担を増加させると考えられる場合に、その税金への影響を負債として認識したものです。
たとえば、税効果会計の対象となる将来加算一時差異が1000万円あり、税率を30パーセントと仮定します。
単純化すると、
1000万円掛ける30パーセント
で300万円です。
この300万円が将来の税負担に相当する金額として繰延税金負債になるという考え方です。
今回の参考記事でも、特別償却準備金について、1500千円に40パーセントを掛けた600千円を税効果額として計算しています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…
積立金は税効果を差し引いて考える
圧縮積立金を積み立てる際には、税効果を考慮することが重要です。
仮に税務上の圧縮に相当する金額が1000万円で、税率が30パーセントだったとします。
税効果額は300万円です。
したがって、考え方を単純化すれば、税効果を考慮した積立金部分は、
1000万円から300万円
で700万円となります。
残る300万円は将来の税負担に対応する部分として考えます。
参考記事の特別償却準備金でも同じ構造が示されています。
特別償却限度額1500千円から税効果額600千円を差し引き、900千円を特別償却準備金としています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…
このように見ると、なぜ準備金や積立金の金額から税効果額を差し引くのかが理解しやすくなります。
繰延税金負債を計上すると税金費用が増える場合がある
参考記事では、繰延税金負債を計上するときの法人税等調整額についても説明されています。
繰延税金負債を計上するときには法人税等調整額を借方に計上し、税金費用を増額します。
反対に、繰延税金負債を取り崩すときには税金費用を減額します。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…
これは繰延税金資産とは反対の動きです。
繰延税金資産は将来の税負担を軽減する効果を表します。
繰延税金負債は将来の税負担が増える効果を表します。
この2つを対比させると、法人税等調整額の借方と貸方の関係も理解しやすくなります。
特別償却準備金と並べると理解しやすい
今回の参考記事から圧縮積立金へ話を広げる際に重要なのが、特別償却準備金との共通点です。
参考記事では、中小企業投資促進税制による特別償却について、特別償却準備金方式を採用したケースが示されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…
特別償却によって現在の税負担を軽くできても、減価償却できる総額そのものが増えるわけではありません。
将来の減価償却費が減少するなどして、現在軽減された税負担が将来に現れてきます。
圧縮記帳にも、現在の課税を将来へ繰り延べるという共通した考え方があります。
そのため、
現在税金が減るから繰延税金資産
と単純に考えてはいけません。
現在の税負担が軽くなった結果、将来の税負担が増えるのであれば、繰延税金負債を考える必要があります。
結論
圧縮積立金は、補助金などを利用して固定資産を取得し、一定の要件を満たして圧縮記帳を行う場合などに関係する積立金です。
圧縮記帳によって現在の課税を繰り延べることができても、税金が永久に消えるわけではありません。
固定資産の税務上の帳簿価額が小さくなることで、将来の減価償却費などが減少し、将来の課税所得を増加させる方向に働くことがあります。
このような将来の税負担増加につながる一時差異について、税効果会計では繰延税金負債を認識します。
今回の参考記事で取り上げられている特別償却準備金と圧縮積立金を並べて考えると、「現在の節税効果の裏側には将来の税負担がある」という繰延税金負債の基本的な仕組みが理解しやすくなります。
参考
企業実務 2026年9月 なるほど納得勘定科目 会計上の利益と税金の費用を対応させるには