2026年10月から、東証株価指数(TOPIX)の改革が本格的に始まります。
今回の改革では、構成銘柄が従来の1,636銘柄から986銘柄へと約40%減少する方向です。
これは、日本株に投資する個人投資家にとっても重要な変化です。
特に、TOPIXに連動する投資信託や上場投資信託(ETF)を保有している人は、投資対象となる企業の構成が変わることを理解しておく必要があります。
また、日銀が保有する約94兆円のETFのうち、約60兆円がTOPIX連動型とみられています。
日銀によるETF売却とTOPIX改革が同時に進むなかで、日本株市場の資金配分にも変化が生じる可能性があります。
では、個人投資家は今回の改革をどのように受け止めればよいのでしょうか。
今回は、新TOPIX時代のインデックス投資について、資産形成の実務に役立つ視点から解説します。
インデックス投資とは何か
インデックス投資とは、特定の株価指数に連動する運用成果を目指す投資方法です。
代表的な株価指数には、TOPIX、日経平均株価、米国のS&P500などがあります。
例えば、TOPIX連動型の投資信託では、TOPIXの値動きに近い運用成果を目指します。
投資家は、個別企業の株式を一つずつ購入しなくても、投資信託を通じて複数の企業に分散投資できます。
インデックス投資の特徴は、個別企業の株価を予測することよりも、市場全体の成長を取り込むことを重視する点です。
また、一般にアクティブ運用型の投資信託と比べて、運用コストを低く抑えやすいという特徴があります。
ただし、インデックス投資であっても元本が保証されるわけではありません。
株式市場全体が下落すれば、投資信託の基準価額も下落します。
長期的な資産形成では、こうした価格変動を理解したうえで投資することが重要です。
TOPIX改革で投資対象はどう変わるのか
今回のTOPIX改革では、浮動株時価総額や年間売買代金回転率などを重視して構成銘柄を選別します。
浮動株時価総額とは、市場で実際に売買される可能性が高い株式の時価総額です。
売買代金回転率は、株式がどの程度活発に取引されているかを示す指標です。
こうした基準によって、投資家にとって売買しやすい銘柄を中心とした指数への転換を目指します。
従来のTOPIXは、旧東証1部に上場していた企業を中心に構成されていました。
一方、新TOPIXでは市場区分にとらわれず、一定の基準を満たす企業が採用対象となります。
そのため、スタンダード市場やグロース市場の企業にも採用の機会が広がります。
ただし、構成銘柄数が減少するからといって、投資対象が単純に大型株だけになるわけではありません。
また、TOPIXは企業の利益成長率だけを基準に銘柄を選ぶ指数でもありません。
新TOPIXは、成長株だけに投資する指数ではなく、市場規模と流動性を重視した日本株指数と理解することが適切です。
構成銘柄数が減ると分散効果は弱まるのか
個人投資家にとって気になるのが、構成銘柄数の減少による分散効果への影響です。
一般に、投資対象の銘柄数が多いほど、個別企業に固有のリスクを分散しやすくなります。
しかし、分散効果は銘柄数だけで決まるわけではありません。
重要なのは、それぞれの銘柄にどの程度の資金が配分されているかという点です。
例えば、1,000銘柄に投資していても、上位10銘柄に投資資金の大部分が集中していれば、実質的な分散効果は限定的になる場合があります。
反対に、500銘柄でも投資比率が適切に分散されていれば、一定の分散効果が期待できます。
TOPIXは浮動株時価総額を基礎とする指数です。
そのため、構成銘柄数が減少しても、除外される企業の指数内での比率が小さければ、指数全体の値動きへの影響は限定的となる可能性があります。
個人投資家は、構成銘柄数だけでなく、上位銘柄への集中度や業種別の構成比率にも注目する必要があります。
TOPIXと日経平均株価の違い
日本株に投資する代表的な指数として、TOPIXと日経平均株価があります。
両者は同じ日本株指数ですが、構成方法が異なります。
TOPIXは、浮動株時価総額を基礎として構成銘柄の組み入れ比率を決める指数です。
一方、日経平均株価は225銘柄を対象とし、株価換算係数などによって調整した株価を基礎とする指数です。
この違いによって、同じ企業でも指数への影響度が異なります。
例えば、TOPIXでは浮動株時価総額が大きい企業ほど、指数への影響が大きくなる傾向があります。
一方、日経平均株価では、時価総額だけでなく、調整後の株価水準によって指数への寄与度が変わります。
そのため、TOPIXと日経平均株価は、同じ期間でも異なる値動きを示すことがあります。
今回のTOPIX改革によって構成銘柄数は減少しますが、両指数の算出方法の違いがなくなるわけではありません。
個人投資家は、投資信託がどの指数に連動しているかを確認することが重要です。
投資信託とETFのどちらを選ぶべきか
TOPIXに投資する方法には、主に投資信託とETFがあります。
投資信託は、金融機関を通じて購入し、原則として1日1回算出される基準価額によって取引する金融商品です。
少額から積立投資を行いやすい商品も多く、長期的な資産形成に適しています。
一方、ETFは証券取引所に上場しており、株式と同じように市場で売買できます。
取引時間中に価格を確認しながら売買できることが特徴です。
ただし、ETFでは売買手数料や売買価格の差などに注意が必要です。
また、分配金の再投資についても、商品や利用する証券会社の仕組みによって対応が異なります。
投資信託では、分配金を再投資する仕組みを利用できる商品があります。
長期積立投資を重視する場合には、購入のしやすさや自動積立の仕組みが重要になります。
一方、取引時間中の売買を重視する場合には、ETFが選択肢となります。
どちらが適しているかは、投資目的や運用期間、売買頻度によって異なります。
運用コストの差は長期投資で大きくなる
インデックス投資では、運用コストが重要です。
投資信託では信託報酬などの費用が継続的に発生します。
ETFでも信託報酬に相当する運用管理費用などが発生します。
例えば、1,000万円を運用する場合を考えます。
年間の運用コストが0.1%であれば、単純計算で年間1万円です。
一方、年間コストが0.5%であれば、年間5万円となります。
差額は年間4万円です。
20年間では、単純合計で80万円の差となります。
実際には運用資産の価格変動や複利効果などがあるため、費用差の影響はこの単純計算とは異なります。
それでも、長期投資では小さなコスト差が積み重なることを理解しておく必要があります。
TOPIX改革に伴って運用会社が構成銘柄を入れ替える際には、売買コストが発生する場合もあります。
そのため、信託報酬だけでなく、実際の運用成果が指数からどの程度乖離しているかを確認することも重要です。
NISAでTOPIX連動型商品を活用する
NISAは、一定の範囲内で投資による利益を非課税とする制度です。
2024年に始まった新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠が設けられています。
年間投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円です。
両方を利用した場合、年間最大360万円まで投資できます。
非課税保有限度額は、取得価額を基準として合計1,800万円です。
このうち成長投資枠で利用できる上限は1,200万円となっています。
TOPIX連動型の投資信託やETFの中にも、NISAの対象となる商品があります。
ただし、すべてのTOPIX連動型商品が両方の投資枠で購入できるわけではありません。
利用する金融機関で、対象商品と利用可能な投資枠を確認する必要があります。
また、NISAで投資したからといって、株価下落による損失がなくなるわけではありません。
NISA口座で生じた損失は、原則として課税口座の利益と損益通算できない点にも注意が必要です。
日本株だけに投資するリスク
TOPIX連動型の投資信託は、日本株への分散投資に利用できます。
しかし、日本株だけに投資する場合、投資対象の国や地域は日本に集中します。
日本経済の成長率や企業業績、為替相場、金融政策などの影響を受けやすくなります。
そのため、長期的な資産形成では、海外株式や債券などを組み合わせることも選択肢になります。
例えば、日本株30%、海外株式50%、債券20%という資産配分を考えることができます。
ただし、これは資産配分の仕組みを説明するための例であり、すべての投資家に適した比率ではありません。
実際の資産配分は、年齢や収入、保有資産、投資期間、損失への許容度などによって異なります。
また、海外株式に投資する場合には、為替変動の影響にも注意が必要です。
日本株と海外株式を組み合わせても、世界的な株価下落局面では同時に値下がりすることがあります。
分散投資は損失を完全に防ぐ仕組みではなく、特定の資産や地域への集中を抑えるための方法です。
日銀のETF売却をどう考えるか
日銀は2026年1月から、保有ETFの売却を開始しました。
2026年3月末時点のETF保有額は時価で約94兆円です。
現在の売却方針を前提とすると、すべてのETFを売却するまで100年以上かかるとされています。
個人投資家にとって気になるのは、日銀の売却が株価に与える影響です。
日銀がETFを売却すれば、ETF市場に売り需要が発生します。
その影響が現物株式市場に波及する可能性もあります。
ただし、日銀のETF売却がそのまま同額の現物株式売却につながるわけではありません。
また、株価は企業業績や金利、海外投資家の動向など、多くの要因によって変化します。
日銀のETF売却だけを理由として、長期投資の方針を大きく変更することには慎重であるべきです。
重要なのは、売却方針の変更や市場の需給動向を確認しながら、自分の投資目的に沿った判断を続けることです。
TOPIX改革で投資信託を乗り換える必要はあるのか
TOPIX改革を受けて、現在保有している投資信託を売却し、別の商品へ乗り換えるべきか悩む人もいるかもしれません。
しかし、TOPIXの構成銘柄が変更されるからといって、直ちに乗り換える必要があるとは限りません。
通常、TOPIX連動型の投資信託やETFでは、運用会社が指数の変更に対応します。
投資家自身が個別銘柄を売買する必要はありません。
また、課税口座で投資信託を売却する場合、利益が生じていれば税金が発生することがあります。
NISA口座で売却した場合も、非課税保有限度額の再利用には制度上のルールがあります。
そのため、指数改革だけを理由に頻繁な売買を行うと、税金や取引コストが増える可能性があります。
まず確認すべきなのは、現在保有している商品の運用方針や費用、投資対象が、自分の資産形成の目的に合っているかという点です。
指数改革は、投資方針を点検する機会として活用することが適切でしょう。
個人投資家が確認したい5つのポイント
新TOPIX時代に個人投資家が確認したいポイントは、大きく5つあります。
第一に、保有する投資信託やETFがどの指数に連動しているかという点です。
TOPIXと日経平均株価では、構成銘柄や算出方法が異なります。
第二に、運用コストです。
信託報酬などの継続的な費用は、長期的な運用成果に影響します。
第三に、投資対象の集中度です。
構成銘柄数だけでなく、上位企業や特定業種への投資比率を確認することが重要です。
第四に、資産全体の分散状況です。
日本株だけでなく、海外株式や債券、預貯金などを含めて資産配分を考える必要があります。
第五に、投資期間と資金の使用目的です。
老後資金や教育資金、住宅購入資金など、資金を使う時期によって適切な運用方法は異なります。
これらの基本的な視点は、TOPIX改革後も変わりません。
結論
2026年10月から始まるTOPIX改革は、日本株に投資する個人投資家にとって重要な変化です。
構成銘柄が1,636銘柄から986銘柄へと減少することで、指数連動型の投資信託やETFの投資対象も変化します。
しかし、構成銘柄数が減少するからといって、インデックス投資の基本的な考え方が変わるわけではありません。
重要なのは、低コストで分散投資を行い、長期的な視点で資産形成を続けることです。
また、TOPIX改革と日銀のETF売却は、株式市場の需給構造に影響する可能性があります。
ただし、こうした変化だけで株価の将来を予測することは困難です。
個人投資家は、指数の構成変更に過度に反応するのではなく、自分の投資目的や運用期間、リスク許容度を確認することが大切です。
NISAを活用する場合にも、非課税という制度上の利点だけでなく、投資対象や運用コストを理解する必要があります。
新TOPIX時代に求められるのは、指数改革の内容を理解しながら、長期的な資産形成の基本を守ることです。
株式市場の仕組みが変わっても、分散投資、長期投資、コスト管理という原則の重要性は変わりません。
参考
日本経済新聞 2026年10月14日朝刊 日銀保有ETFの銘柄、大幅減少へ 4割減のTOPIX改革と連動
日本経済新聞 2026年10月8日朝刊 TOPIX刷新、4割減の986銘柄 マクドナルド・GO・ワークマンを採用
日本取引所グループ 2026年10月7日 TOPIX改革に関する公表資料
金融庁 2024年 新しいNISA制度に関する公表資料