令和8年度税制改正では、扶養親族などの所得要件が見直されます。
その結果、これまで所得要件を満たしていなかった家族が、新たに扶養控除などの対象となる場合があります。
ここで注意したいのが、要件を満たせば会社が自動的に扶養控除を適用してくれるわけではないことです。
会社が年末調整を正しく行うためには、従業員から家族の状況について必要な情報を提供してもらう必要があります。
その重要な役割を担う書類の一つが、給与所得者の扶養控除等異動申告書です。
会社は家族の状況をすべて把握しているわけではない
会社は従業員本人の給与については把握しています。
しかし、従業員の配偶者や子ども、親などが一年間にいくら収入を得ているのかまで自動的に把握できるわけではありません。
子どもがアルバイトを始めることもあります。
配偶者の働き方が変わることもあります。
親の所得状況が変化する場合もあります。
結婚や離婚、出生などによって家族構成そのものが変わることもあります。
こうした情報は、基本的に従業員側から会社へ伝える必要があります。
扶養控除等申告書とは何か
給与所得者の扶養控除等申告書は、給与から所得税を源泉徴収する際や年末調整などで重要になる書類です。
従業員本人の情報だけでなく、一定の要件を満たす配偶者や扶養親族などに関する情報を会社へ申告します。
会社は提出された申告書などを基に、毎月の源泉徴収や年末調整に必要な判定を行います。
つまり、扶養控除等申告書は単なる会社の社内書類ではありません。
従業員の税務上の状況を会社へ伝え、正しい所得税計算につなげるための重要な書類です。
なぜ異動という言葉が付いているのか
正式名称には異動という言葉が入っています。
これは、一度提出した後でも扶養親族などの状況が変わる可能性があるためです。
たとえば扶養している家族が就職し、所得が増えることがあります。
反対に、働き方が変わったことで所得が減り、新たに税制上の要件を満たす場合もあります。
子どもが生まれるなど家族構成が変わるケースもあります。
こうした変更が生じた場合には、必要に応じて異動内容を会社へ申告します。
年初に一度提出すれば一年間何も確認しなくてよい書類とは限らないのです。
令和8年は制度変更による異動にも注意する
令和8年分では特に注意が必要です。
本人や家族の働き方が変わっていなくても、税制そのものが変わるからです。
令和8年度税制改正によって扶養親族などの所得要件が見直されます。
その結果、前年と同じ程度の所得であっても、改正後には新たに扶養親族などの要件を満たす場合があります。
国税庁は、新たに要件を満たすことになった親族などについて扶養控除等の適用を受けるためには、給与所得者の扶養控除等異動申告書などの提出が必要になるとしています。
今年は家族の状況が変わったかどうかだけでなく、制度変更によって判定が変わらないかも確認する必要があります。
年収だけを書けばよいわけではない
扶養親族などの判定では、収入と所得を区別することも重要です。
たとえば子どもがアルバイトをしている場合、一年間に受け取った給与収入と税法上の給与所得は同じ金額ではありません。
給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を計算します。
税制上の所得要件を判定するときには、この所得の考え方が関係します。
令和8年度税制改正では給与所得控除の最低保障額も引き上げられているため、前年の年収基準だけを記憶して判断するのではなく、新しい制度に基づいて確認することが重要です。
提出内容が違っていれば年末調整も変わる
年末調整では、会社が把握している情報を基に一年間の所得税を計算します。
そのため、扶養親族について必要な申告が行われていなければ、本来適用できる控除が年末調整に反映されないことがあります。
反対に、扶養親族の所得が増えて要件を満たさなくなったにもかかわらず変更を申告していなければ、年末調整の内容を修正する必要が生じる可能性があります。
年末調整を正しく行うには、会社の給与担当者だけでなく従業員側の情報提供も欠かせません。
税制上の扶養と社会保険上の扶養は分けて考える
扶養控除等申告書を考えるときに混同しやすいのが社会保険です。
所得税の扶養親族と健康保険などの被扶養者は、同じ制度ではありません。
それぞれ異なる要件で判定されます。
会社の健康保険で家族を扶養に入れる手続きをしたからといって、所得税の年末調整に必要な申告がすべて自動的に完了するとは限りません。
逆に、税制上の扶養親族に該当しても、社会保険上の被扶養者に該当するとは限りません。
税金と社会保険は別々に確認することが大切です。
年末調整の書類は税額を左右する
年末調整の申告書は、毎年同じような内容を書くため形式的な書類に見えることがあります。
しかし、記載された内容は所得税額の計算に直接関係します。
扶養親族の人数や所得、生命保険料などの情報によって、適用される所得控除などが変わるからです。
特に令和8年は複数の税制改正が重なるため、前年の申告内容をそのまま写すのではなく、改正後の要件を確認することが重要になります。
結論
扶養家族が増えたり、税制改正によって新たに扶養親族などの要件を満たしたりしても、会社がその事実を自動的に把握できるわけではありません。
そのため、給与所得者の扶養控除等異動申告書などを通じて、必要な情報を会社へ伝えることが重要になります。
令和8年分では、扶養親族などの所得要件が見直されます。
前年には対象外だった親族でも、新しい要件では対象となる可能性があります。
年末調整の書類は単なる事務手続きではありません。
会社が一年間の所得税を正しく計算するための重要な情報源です。
令和8年の年末調整では、前年と家族構成が変わっていない場合でも、改正後の要件で扶養関係をもう一度確認することが大切です。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 8年分年末調整のしかたを公表、昨年との変更点や留意事項など掲載
国税庁 2026年8月31日 令和8年分 年末調整のしかた