令和8年分の年末調整では、基礎控除や給与所得控除だけでなく、扶養親族などの所得要件の見直しにも注意が必要です。
扶養控除というと、家族を養っていれば自動的に受けられる制度と思われることがあります。
しかし、税制上の扶養親族に該当するためには、年齢や生計の状況だけでなく、親族本人の所得が一定の範囲内であることなどの要件を満たす必要があります。
今回の改正によって所得要件が変わるため、これまで所得が基準を超えていて扶養控除などの対象にならなかった親族が、新たに対象となる可能性があります。
税制上の扶養には条件がある
日常生活で使う扶養という言葉と、所得税で使われる扶養親族という言葉は必ずしも同じ意味ではありません。
生活費を負担している家族だからといって、必ず税制上の扶養控除を受けられるわけではありません。
所得税では、その親族との関係や生計を一にしているかどうか、親族本人の所得など、法律上の要件によって判断します。
さらに、扶養控除そのものについては年齢などの要件もあります。
年末調整では、こうした条件を確認して扶養控除などを適用します。
なぜ所得要件が重要なのか
扶養親族などの判定では、親族本人の所得が重要になります。
たとえば子どもや親がパートやアルバイトで給与を受け取っている場合、その所得が一定の基準を超えると税制上の扶養から外れることがあります。
反対に、所得が基準内であれば他の要件を満たすことで扶養親族などに該当する可能性があります。
このため、家族の働き方によって本人の所得税にも影響が生じます。
いわゆる年収の壁が意識される理由の一つです。
年収ではなく所得で判定する
ここで注意したいのが、年収と所得は同じではないことです。
たとえば親族がアルバイトで給与を受け取っている場合、給与として受け取った年間の金額が給与収入です。
そこから給与所得控除を差し引いて給与所得を計算します。
税制上の扶養判定では、この所得の考え方が重要になります。
給与収入だけを見て、扶養に入れる、入れないと判断すると誤解する可能性があります。
令和8年度税制改正では給与所得控除の最低保障額も見直されているため、扶養親族などの所得要件と合わせて理解することが大切です。
所得要件が変わると対象者も変わる
令和8年度税制改正では、扶養親族などについて所得要件の見直しが行われています。
これによって、改正前の基準では所得が高いため要件を満たさなかった親族でも、改正後には要件を満たす場合があります。
家族の収入が前年とほとんど変わっていなくても、税制上の判定結果が変わる可能性があるということです。
前年に扶養控除などの対象ではなかったからといって、令和8年分もそのまま対象外だと判断しないことが重要になります。
会社が自動的に変更してくれるわけではない
今回の改正で特に注意したいのが申告手続きです。
改正によって新たに扶養親族などの要件を満たすことになった親族について扶養控除などの適用を受ける場合には、給与所得者の扶養控除等異動申告書など必要な書類を会社へ提出する必要があります。
会社は従業員の家族が一年間にいくら所得を得たのかを自動的に把握できるわけではありません。
従業員自身が家族の所得状況を確認し、必要な申告をすることになります。
制度が変わったことを知らずに前年と同じ内容で書類を提出すると、本来受けられる控除を年末調整で反映できない可能性があります。
12月1日以後の給与から適用される
令和8年分については適用時期にも注意が必要です。
扶養親族などの所得要件の改正は、令和8年12月1日以後に支払う給与などから適用されます。
そのため、令和8年12月の給与や年末調整では、新しい要件を踏まえた確認が必要になります。
令和8年は改正前の制度から改正後の制度へ切り替わる時期が年末に重なるため、給与担当者にとっても従業員にとっても確認事項が増える年になります。
税金の扶養と社会保険の扶養は別の制度
扶養についてもう一つ注意したいのが、所得税と社会保険を混同しないことです。
所得税の扶養控除などには税法上の所得要件があります。
一方、健康保険などの被扶養者になるための要件は、社会保険制度に基づいて判断されます。
税制上の扶養親族になったからといって、必ず社会保険上の扶養にもなるわけではありません。
反対に、社会保険上の扶養に入っているからといって、所得税の扶養控除が必ず適用されるわけでもありません。
年収の壁を考える場合には、税金と社会保険を分けて確認する必要があります。
年末に家族の所得を確認する
扶養判定では、一年間の所得を確認することが重要です。
特にパートやアルバイトの場合、勤務時間の増減や賞与などによって、当初想定していた年間収入と実際の年間収入が異なることがあります。
複数の勤務先から給与を受け取っている場合にも注意が必要です。
年初の見込みだけで判断するのではなく、年末に近づいた段階で実際の年間所得を確認することが大切です。
令和8年については制度そのものも変わるため、前年の基準をそのまま使わず、新しい所得要件で確認する必要があります。
結論
令和8年度税制改正では、扶養親族などの所得要件が見直されます。
その結果、これまで所得要件を満たさず扶養控除などの対象にならなかった親族が、新たに対象となる場合があります。
重要なのは、家族の年収だけで判断しないことです。
給与収入から給与所得控除を差し引いた給与所得などを基に、税制上の所得要件を確認する必要があります。
さらに、新たに扶養親族などの要件を満たしたとしても、会社が自動的に年末調整へ反映してくれるわけではありません。
必要に応じて給与所得者の扶養控除等異動申告書などを提出することが必要です。
令和8年分の年末調整では、前年に扶養の対象だったかどうかだけを見るのではなく、改正後の要件で家族一人ひとりの状況を改めて確認することが重要になります。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 8年分年末調整のしかたを公表、昨年との変更点や留意事項など掲載
国税庁 2026年8月31日 令和8年分 年末調整のしかた