後期高齢者支援金とは何か 現役世代から高齢者医療への仕送りの仕組み編

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75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度は、高齢者自身が支払う保険料だけで運営されているわけではありません。大きな役割を担っているのが、会社員や自営業者など現役世代が加入する医療保険から拠出される「後期高齢者支援金」です。

新聞などでは、現役世代から高齢者への「仕送り」と表現されることもあります。

高齢化によって医療費が増加するなか、この支援金は現役世代の社会保険料にも大きな影響を与えています。

今回は、後期高齢者支援金とはどのような制度なのか、誰が負担し、なぜ現役世代の保険料と深く関係しているのかを整理します。

後期高齢者支援金とは何か

後期高齢者支援金とは、現役世代が加入する医療保険から後期高齢者医療制度へ拠出されるお金です。

後期高齢者医療制度は、原則として75歳以上の人を対象としています。

高齢になるほど医療機関を利用する機会が増える傾向があるため、75歳以上の人が支払う保険料だけですべての医療費を賄うことは困難です。

そこで、高齢者本人だけでなく、現役世代や国、地方自治体を含めて社会全体で高齢者医療を支える仕組みが設けられています。

その重要な柱の一つが後期高齢者支援金です。

高齢者医療は誰が支えているのか

後期高齢者医療制度の給付費は、大きく分けると三つの財源によって支えられています。

一つ目が後期高齢者自身が支払う保険料です。

二つ目が国や地方自治体による公費です。

三つ目が現役世代の医療保険から拠出される後期高齢者支援金です。

おおむね、

高齢者自身の保険料が約1割

現役世代からの支援金が約4割

公費が約5割

という構造になっています。

つまり、後期高齢者医療のかなりの部分を現役世代と税金で支えていることになります。

誰が後期高齢者支援金を負担するのか

支援金を負担しているのは、特定の人だけではありません。

会社員が加入する健康保険組合や協会けんぽ、公務員などが加入する共済組合、自営業者などが加入する国民健康保険といった各医療保険制度が負担します。

これらの医療保険制度は、加入者から集めた保険料などを財源として後期高齢者支援金を拠出します。

したがって、会社員の場合は給与から天引きされている健康保険料の一部が、間接的に75歳以上の医療費を支えていると考えることができます。

なぜ現役世代が負担するのか

背景にあるのが世代間扶養という考え方です。

医療保険は、自分が支払った保険料を自分のためだけに積み立てておく制度ではありません。

現在保険料を支払っている人たちのお金を使って、その時点で医療を必要としている人を支える社会保険の仕組みです。

若いときには医療費が比較的少なくても、高齢になるにつれて医療費は増える傾向があります。

そこで、現役世代も高齢者医療の費用を分担しています。

社会全体でリスクを分かち合うという公的医療保険の基本的な考え方が背景にあります。

なぜ仕送りと呼ばれるのか

後期高齢者支援金は、しばしば現役世代から高齢者への「仕送り」と表現されます。

現役世代が加入する健康保険から後期高齢者医療制度へ資金が移転するためです。

ただし、家庭内で行われる一般的な仕送りとは性格が異なります。

法律に基づく社会保障制度として、各医療保険者が負担するものです。

現役世代が任意に支払っているわけではありません。

高齢化すると支援金はどうなるのか

大きな問題となるのが人口構造の変化です。

75歳以上の人口が増えれば、後期高齢者医療制度全体の医療費も増えやすくなります。

一方、その医療費を支える現役世代は少子化によって減少しています。

支えられる側が増え、支える側が減るという構造です。

そのため、一人当たりの現役世代に求められる負担が重くなる可能性があります。

団塊の世代がすべて75歳以上となったことで、この問題はさらに重要になっています。

支援金と健康保険料の関係

会社員にとって重要なのは、後期高齢者支援金が健康保険料と無関係ではないという点です。

健康保険組合などは、自分たちの加入者に対する医療給付だけを行っているわけではありません。

後期高齢者支援金などの高齢者医療に関する負担も抱えています。

高齢者医療への拠出額が増えれば、健康保険組合などの財政を圧迫します。

その結果、保険料率の引き上げなどにつながる可能性があります。

給与が増えても社会保険料が上昇すれば、手取り収入はその分だけ増えにくくなります。

高齢者医療の問題は、高齢者だけの問題ではないのです。

働く高齢者が増えると負担が減るとは限らない

ここには現在の制度が抱える興味深い問題があります。

75歳以上でも所得が高く、現役並み所得者に該当すると医療費の窓口負担は3割になります。

本人の負担が増えるため、単純に考えれば現役世代の負担は減りそうです。

ところが、現役並み所得者に対する医療給付については、公費負担の仕組みが通常とは異なります。

その結果、3割負担となる高齢者が増えることで、現役世代からの支援金が増える場合があります。

日本経済新聞の試算では、2025年度に3割負担の75歳以上が約13万4000人増加したことで、現役世代からの支援金が約400億円増えたとされています。

働く高齢者が増えて所得が上がることが、必ずしも現役世代の社会保険料負担の軽減につながらないという制度上の問題が表面化しています。

税金で負担するのか保険料で負担するのか

ここで重要になるのが、公費と社会保険料の役割分担です。

高齢者医療に必要なお金そのものが消えるわけではありません。

公費を減らせば、その分を保険料などで負担する必要があります。

反対に公費を増やせば、現役世代の保険料負担を抑えられる可能性がありますが、国や地方自治体には新たな財源が必要になります。

つまり、

税金で負担するのか

社会保険料で負担するのか

高齢者本人に負担してもらうのか

という負担配分の問題でもあります。

単純に高齢者の窓口負担を引き上げれば解決する問題ではありません。

今後の社会保障改革で重要になる視点

少子高齢化が続く日本では、後期高齢者支援金の問題はさらに重要になります。

高齢者の負担能力に応じた自己負担を求めることも必要でしょう。

一方で、高齢者の自己負担を増やした結果として公費が減り、現役世代の保険料負担が増えるのであれば、制度改革の目的と矛盾してしまいます。

高齢者の自己負担、公費、現役世代からの支援金を個別に考えるのではなく、三つを一体として設計する必要があります。

現役世代の負担軽減を目指すのであれば、窓口負担率だけではなく、その裏側にある財源構造まで見ることが重要です。

結論

後期高齢者支援金とは、現役世代が加入する健康保険などから後期高齢者医療制度へ拠出される資金です。

後期高齢者医療の給付費の約4割を支えており、会社員などが支払う健康保険料とも深く関係しています。

高齢化によって医療費が増える一方、支える現役世代は減少しています。そのため、後期高齢者支援金の増加は現役世代の社会保険料負担を考えるうえで避けて通れない問題です。

さらに、働く高齢者が増えて3割負担の対象者が増えることで、逆に現役世代からの支援金が増えるという制度上の矛盾も明らかになっています。

これからの高齢者医療改革では、高齢者にいくら負担してもらうかだけではなく、公費と社会保険料をどのように配分するのかという視点が重要になるでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年8月7日 朝刊
高齢者の貢献、現役に打撃 医療費3割負担なら公費ゼロ 昨年度日経試算、「仕送り」400億円増の矛盾

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