工場から出る端材、食品工場から出る残さ、農業で発生する副産物など、地域では様々な廃棄物が発生します。
従来は、こうしたものを費用をかけて処分することが一般的でした。
しかし、ある企業にとって不要になったものでも、別の企業にとっては原材料になる可能性があります。
地域の中で発生した廃棄物や未利用資源をできるだけ地域の中で再利用し、新しい商品や産業につなげていく考え方が地域資源循環です。
日本経済新聞が紹介した福井県では、主要産業である繊維産業から出る廃材を新しい糸へ再生する取り組みが進められています。
環境負荷を減らすだけではなく、廃棄物を新しい地域資源へ変えることができれば、地方創生にもつながります。
地域資源循環とは何か
地域資源循環とは、地域で発生する資源をできるだけ捨てず、再利用や再資源化によって地域の中で循環させる考え方です。
対象になるのは一般的なごみだけではありません。
工場の製造工程で発生する端材。
食品加工で発生する残さ。
農業や林業から出る副産物。
使われなくなった製品。
廃熱や未利用エネルギーなども地域資源として考えることができます。
これまで廃棄物と呼ばれていたものを、もう一度利用できる資源として捉え直すことが出発点になります。
廃棄物から原材料へ変える
従来型の経済では、原材料を仕入れ、商品をつくり、使用後に廃棄するという一方向の流れが一般的でした。
この場合、商品をつくり続けるためには新しい資源を外部から調達し続けなければなりません。
一方、使用済み製品や製造工程の廃材を原材料へ戻すことができれば、新しい資源の使用量を減らせます。
企業にとっても廃棄物の処理費用を削減できる可能性があります。
さらに再生した原材料を商品として販売できれば、新しい収益源にもなります。
廃棄物をコストから資産へ変えられる可能性があるわけです。
福井県の繊維産業では何が起きているのか
福井県は国内有数の繊維産地です。
繊維製品を製造する過程では、裁断くずや端材など様々な廃材が発生します。
日本経済新聞の記事では、繊維廃材から新たな糸へリサイクルされる割合は1%未満にとどまっているとされています。
そこで一般社団法人ぐるぐるふくいは、繊維資材を手掛けるSHINDOなどと連携し、廃材から新しい糸をつくる取り組みを始めました。
地域の主要産業から発生する廃棄物を、同じ繊維産業で利用できる原材料へ戻そうとしているわけです。
地域資源循環を具体的に示す事例といえます。
なぜ一社では難しいのか
資源循環は一社だけで実現することが難しい場合があります。
例えば繊維メーカーには廃材があります。
しかし、その企業が廃材を細かく分別し、再生し、新しい糸に加工する設備まで持っているとは限りません。
回収する企業が必要になります。
分別する企業も必要です。
再生加工する企業も必要です。
その原材料を使って商品をつくる企業も必要になります。
さらに再生商品を購入する企業や消費者がいなければ循環は完成しません。
資源循環は複数の企業をつなぐことで初めて成立することが多いのです。
企業同士の情報不足が壁になる
ある企業が大量の廃材を捨てている一方で、近くの別の企業が同じような材料を外部から購入している可能性があります。
しかし、お互いの情報を知らなければ取引は生まれません。
何が廃棄されているのか。
年間どのくらいの量が出るのか。
どのような品質なのか。
どの企業なら利用できるのか。
こうした情報を共有する必要があります。
自治体のSDGs登録制度や企業間マッチングには、この情報不足を解消する役割も期待されています。
自治体が企業をつなぐ意味
自治体自身がリサイクル事業を行う必要はありません。
重要なのは、地域の企業や団体をつなぐことです。
福井県ではSDGsに取り組む企業や団体が参加する仕組みが整えられ、さらに2026年2月には企業間マッチングを主眼とするポータルサイトも開設されました。
どの企業がどのような技術を持っているのか。
どの企業がどのような課題を抱えているのか。
これらを見えるようにすれば、新しい連携が生まれる可能性があります。
自治体は資源循環の実施主体ではなく、循環を生み出すための調整役になることができます。
地域で循環させるメリットは何か
資源を再利用するだけなら、必ずしも同じ地域で行う必要はありません。
遠くのリサイクル工場へ運ぶこともできます。
それでも地域内で循環させることには意味があります。
まず輸送距離を短くできれば、物流費や環境負荷を減らせる可能性があります。
さらに回収、加工、製造などの仕事を地域内につくることができます。
地域企業同士の取引が増えれば、地域で生まれたお金が地域内に残りやすくなります。
環境政策と地域経済政策を同時に進められるところが地域資源循環の特徴です。
廃棄費用と原材料費を同時に減らせる可能性
資源循環には企業の経営面でもメリットがあります。
廃棄物を出す企業は通常、処理費用を負担します。
一方、製造企業は原材料を購入します。
廃棄物を別の企業の原材料として利用できれば、廃棄側は処理費用を削減できる可能性があります。
利用側も新品の原材料より安く調達できる可能性があります。
双方に経済的なメリットが生まれれば、環境への意識だけに頼らず資源循環を続けやすくなります。
持続可能な仕組みにするためには、環境面だけでなく経済合理性を持たせることが重要です。
再生すれば何でも環境に良いとは限らない
一方、廃棄物を再生すれば必ず環境負荷が下がるとは限りません。
再生加工に大量のエネルギーを使う場合があります。
廃材を遠距離輸送すれば物流による環境負荷も発生します。
細かな分別に大きな費用がかかることもあります。
新品の原材料を使うより再生品の方が結果として環境負荷が高くなる可能性もあります。
そのため、回収から再生、輸送、製造までを含めて全体を見る必要があります。
資源循環そのものを目的にするのではなく、本当に資源消費や環境負荷を減らせているかを確認することが重要です。
再生材にも品質が求められる
再生原材料を普及させるためには品質も重要です。
企業は環境に良いという理由だけで原材料を選ぶわけではありません。
強度や耐久性、色、加工しやすさなど、製品に必要な品質を満たさなければ利用できません。
供給量が安定していることも重要です。
月によって再生材の量が大きく変動すれば、製造計画を立てにくくなります。
地域資源循環を産業として成立させるには、回収量、品質、価格を安定させる仕組みが必要になります。
リサイクル商品を買う市場も必要になる
廃材から原材料をつくるだけでは循環は完成しません。
その原材料を使った商品を購入する企業や消費者が必要です。
再生材を使った商品が通常の商品より大幅に高ければ、販売が難しくなる場合があります。
一方、環境への配慮や地域での資源循環そのものに価値を感じる消費者もいます。
企業が再生材を利用した商品を調達することも考えられます。
自治体が公共調達で一定の再生製品を利用する方法もあります。
供給側だけでなく需要側を育てることが資源循環では重要になります。
地域の未利用資源は他にもある
地域資源循環の対象は繊維廃材だけではありません。
農業では規格外農産物や農作物の残さがあります。
林業では間伐材などがあります。
食品産業では食品残さがあります。
これらを肥料、飼料、燃料、新素材などへ利用できる可能性があります。
ある地域では価値がないと思われていたものでも、技術や企業を組み合わせることで新しい商品へ変わることがあります。
地域に何があるのかを改めて調べることが、資源循環の出発点になります。
地域産業そのものを強くできるか
地域資源循環の目的は、ごみを減らすことだけではありません。
地域産業の競争力を高める可能性もあります。
例えば福井県の繊維産業が、再生繊維を利用した高品質な商品を生み出すことができれば、環境配慮型の繊維産地として新しい価値をつくれるかもしれません。
廃棄物問題への対応が新しい技術開発につながる。
新しい技術が商品開発につながる。
商品が売れれば地域企業の収益になる。
この循環が生まれれば、環境問題の解決が地域産業の成長につながります。
結論
地域資源循環とは、地域で発生する廃棄物や未利用資源を捨てるのではなく、新しい原材料や商品として再利用し、できるだけ地域の中で循環させる仕組みです。
福井県の繊維産業では、製造工程で発生する廃材を新しい糸へ再生する取り組みが進められています。
重要なのは、一社だけで資源循環を完結させようとしないことです。
廃材を出す企業、回収する企業、再生する企業、商品を製造する企業、購入する企業や消費者をつなぐ必要があります。
自治体には、その企業同士を見える化し、マッチングを促す役割があります。
そして資源循環を長く続けるためには、環境に良いという理由だけでは十分ではありません。
廃棄費用や原材料費を削減し、新しい商品や雇用を生み出すなど、企業にとっても経済的なメリットのある仕組みにする必要があります。
これまで捨てていたものを地域の新しい資源として捉え直す。
そこから新しい企業間取引や産業を生み出すことができれば、地域資源循環は環境政策であると同時に地方創生の重要な経済政策にもなるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 自治体SDGs、企業が相棒
日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 SDGsパートナー 甲府の登山用品店、天然素材の衣類提案