2026年の基準地価では、全国の全用途平均が前年比1.5%上昇しました。
全国平均の地価上昇は5年連続です。
東京では商業地が11.4%上昇し、住宅地も5.8%上昇しました。
一方、札幌、仙台、広島、福岡の地方4市では地価上昇の勢いが鈍っています。
同じ日本の不動産市場でも、地価の動きは一様ではありません。
今後の地価を考えるうえで重要になるのが、金利、建築費、賃料の3つです。
この3つの力関係によって、土地にいくらまで支払えるのかが変わります。
全国の地価は5年連続で上昇
2026年の基準地価では、全国の全用途平均が前年比1.5%上昇しました。
5年連続の上昇です。
地価調査の対象となった地点のうち、上昇した地点は49.9%でした。
一方で34.4%の地点では地価が下落しています。
全国平均が上昇しているからといって、日本中の土地が値上がりしているわけではありません。
ほぼ半数の地点で地価が上昇する一方、3分の1を超える地点では下落しています。
今後はこの地域差がさらに重要になる可能性があります。
東京圏では地価上昇が続く
2026年の3大都市圏の全用途平均は前年比4.4%上昇しました。
東京圏は5.4%上昇しています。
東京都の商業地は11.4%上昇し、全国の都道府県で唯一2桁の上昇となりました。
東京都の住宅地も5.8%上昇し、全国で最も高い伸びです。
東京ではオフィス需要や住宅需要、訪日客による観光需要、不動産投資など複数の需要が重なっています。
こうした強い需要が地価を支えています。
地方4市では上昇率が鈍化
一方、札幌、仙台、広島、福岡の地方4市では状況が変わり始めています。
2026年の全用途平均は前年比4.1%上昇しました。
全国平均を大きく上回っていますが、2025年の5.3%から上昇率は縮小しました。
地方4市の上昇率は2023年をピークに鈍化しています。
背景にある重要な要因が建築費高騰です。
土地価格が高くなり、建築費まで上昇すると、不動産開発の採算を確保することが難しくなります。
1つ目のポイントは金利
今後の地価を見るうえで重要な1つ目の要素が金利です。
不動産は高額な資産です。
個人が住宅を購入するときには住宅ローンを利用することが多く、企業が大規模な不動産開発をするときにも資金調達が必要になります。
金利が上昇すれば、借入金に対する利息負担が増えます。
住宅購入者にとっては毎月の住宅ローン返済額が増えます。
不動産会社や投資家にとっては資金調達コストが増えます。
金利上昇は個人と企業の両方から不動産価格にブレーキをかける可能性があります。
金利上昇で住宅の購入可能額が下がる
住宅購入者が負担できる毎月の返済額には限界があります。
住宅ローン金利が上昇すれば、同じ返済額で借りられる金額は小さくなります。
すると購入できる住宅価格も低くなります。
価格の高いマンションを諦める。
中心部から郊外へ移る。
新築から中古へ移る。
住宅購入そのものを延期する。
こうした行動が増えれば住宅需要は変化します。
住宅価格をさらに引き上げることが難しくなれば、不動産会社がマンション用地に支払える価格にも影響します。
投資用不動産も金利の影響を受ける
金利は住宅だけでなく、オフィスや賃貸住宅などの投資用不動産にも影響します。
投資家が借入金を使って不動産を購入している場合、金利が上昇すれば利息負担が増えます。
同じ賃料収入でも、金利負担が増えれば手元に残る利益は減ります。
そのため投資家が不動産に支払える価格も変わります。
金利が低い時代には成立した高い不動産価格が、金利上昇によって成立しにくくなる可能性があります。
2つ目のポイントは建築費
地価を左右する2つ目の重要な要素が建築費です。
土地を購入しても、その上に建物を建てなければ不動産開発は完成しません。
建築費が上昇すれば、土地代と建築費を合わせた総事業費が膨らみます。
完成後のマンション価格やオフィス賃料を十分に引き上げられなければ、開発事業の採算は悪化します。
その結果、不動産会社が土地に支払える金額も小さくなります。
建築費高騰は建物価格だけではなく、土地価格にも影響するのです。
博多と札幌では再開発にも影響が出ている
建築費高騰の影響は、すでに再開発計画にも表れています。
JR九州は2028年末の完成を目指していた博多駅の複合ビル計画を中止しました。
建築費が当初想定の約2倍に膨らんだことが背景にあります。
JR北海道も札幌駅直結の再開発計画について、完成時期を2028年度から2034年度へ変更しました。
需要の強い主要駅前でも、建築費が大幅に上昇すれば計画をそのまま進められない場合があります。
土地が魅力的であることと、その土地で開発事業が成立することは別の問題です。
3つ目のポイントは賃料
金利と建築費が地価に下押し圧力をかける一方、地価を支える重要な要素が賃料です。
オフィスや賃貸住宅などの不動産は、賃料によって収益を生みます。
賃料が上昇すれば不動産の収益力が高くなります。
収益力が高くなれば、投資家はその不動産により高い価格を支払えるようになります。
そして建物の価格上昇は、その建物が立つ土地の価値にもつながります。
今後の地価を考えるときには、金利や建築費だけでなく、賃料がどこまで上昇できるのかを見る必要があります。
東京では賃料上昇が地価を支えている
2026年6月末時点で、東京都心5区の大規模オフィスの平均空室率は0.8%でした。
空室が非常に少ない状態です。
平均オフィス賃料は1坪あたり4万2109円となり、前年同期比16.4%上昇しました。
建築費や金利が上昇しても、賃料が大きく上昇すれば不動産の収益を増やすことができます。
東京の商業地が11.4%上昇している背景には、こうした強いオフィス需要と賃料上昇があります。
金利と建築費という逆風を、賃料上昇という追い風がどこまで打ち返せるのかが重要です。
地方では賃料上昇に限界がある
地方都市では建築費が上昇しても、東京と同じように賃料を引き上げられるとは限りません。
企業や住民が負担できる賃料には地域差があります。
建築費は20%上昇する。
しかし賃料は5%しか上げられない。
このような状況では不動産開発の採算は悪化します。
その結果、再開発を延期したり、土地の購入価格を抑えたりする動きが出ます。
建築費が全国的に上昇する一方で、賃料上昇力には地域差があることが、今後の地価の二極化につながる可能性があります。
東京と地方の格差を見る
これからの地価は、日本全体が同じ方向へ動くというより、地域ごとの差が重要になると考えられます。
オフィス需要が強い。
住宅需要が強い。
観光客が増えている。
物流施設への需要がある。
半導体など大型産業投資がある。
こうした地域では土地需要が強くなります。
一方、人口減少が進み、住宅やオフィスへの需要が弱い地域では、建築費や金利の上昇を価格や賃料へ転嫁することが難しくなります。
全国平均だけでは、この違いは見えません。
金利と建築費と賃料をセットで見る
今後の地価を考える場合には、3つの数字を別々に見るのではなく、関係を見ることが重要です。
金利が上昇しているのか。
建築費が上昇しているのか。
賃料も上昇しているのか。
例えば金利と建築費が上昇していても、それ以上に賃料が上昇すれば不動産の収益力を維持できる可能性があります。
反対に金利と建築費が上昇しているのに賃料がほとんど上がらなければ、土地に支払える金額は小さくなります。
地価の方向を決めるのは1つの数字ではなく、この3つの力関係です。
地価が上がり続けるとは限らない
5年連続で全国平均の地価が上昇しているからといって、今後も同じペースで上昇するとは限りません。
不動産市場を取り巻く条件は変化しています。
住宅ローン金利が上昇すれば、住宅購入者の負担は増えます。
建築費がさらに上昇すれば、再開発やマンション建設が難しくなります。
一方、オフィスや住宅の賃料が上昇すれば、不動産の収益力は高まります。
この3つがどの方向へ動くのかによって、地域ごとの地価も変わります。
過去の地価上昇だけを見て将来を判断しないことが重要です。
結論
2026年の基準地価では、全国の全用途平均が前年比1.5%上昇し、5年連続の上昇となりました。
しかし全国の土地が一律に上昇しているわけではありません。
東京では商業地が11.4%、住宅地が5.8%上昇する一方、札幌、仙台、広島、福岡では地価上昇率が鈍っています。
これからの地価を見るうえで重要なのが、金利、建築費、賃料の3つです。
金利が上昇すれば住宅購入者や不動産投資家の資金調達負担が増えます。
建築費が上昇すれば不動産会社が土地に支払える金額が小さくなります。
一方、賃料が上昇すれば不動産の収益力が高まり、高い土地価格を支えることができます。
金利と建築費は地価を抑える方向に働きやすく、賃料上昇は地価を支える方向に働きます。
重要なのは、どれか1つを見ることではありません。
金利と建築費がどれだけ上昇し、それを賃料の上昇でどこまで吸収できるのかを見ることです。
今後の日本の地価は、全国一律に上がるか下がるかではなく、収益力のある地域とそうでない地域との差がより重要になっていくと考えられます。
地価を見るときには全国平均だけではなく、それぞれの地域で金利、建築費、賃料の3つがどのようなバランスになっているのかを確認することが重要です。
参考
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 基準地価、5年連続上昇 建築費高騰
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 東京の商業地11.4%上昇
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 物流施設、湾岸部けん引 半導体向けは伸び縮小