2027年4月から飲食料品の消費税率を現在の8%から1%へ引き下げる制度が予定されています。
期間は2029年3月までの2年間です。
家計の負担を軽くすることが目的ですが、税率が大きく下がることで、これまであまり目立たなかった問題が浮かび上がります。
その一つが、消費者から見ればよく似た商品なのに、一方は1%、もう一方は10%になるという問題です。
代表的な例が、エナジードリンクと指定医薬部外品のドリンクです。
レッドブルはなぜ1%になるのか
エナジードリンクとして知られるレッドブルは、税制上は飲食料品として扱われます。
現在は飲食料品に適用される8%の軽減税率の対象です。
予定されている制度が実施されれば、2027年4月から税率は1%になります。
ポイントは、消費者が商品をどのような目的で飲むかではありません。
税制上、その商品が何に分類されているかです。
元気を出したいときに飲む商品であっても、食品として販売されていれば飲食料品として扱われます。
リポビタンDはなぜ10%のままなのか
一方、リポビタンDは指定医薬部外品です。
医薬品や医薬部外品は、消費税の軽減税率制度における飲食料品には含まれません。
したがって、飲食料品の税率が1%になっても、標準税率である10%が適用されます。
ここに大きな違いがあります。
消費者から見ると、レッドブルもリポビタンDも疲れたときなどに飲む商品として似た場面で購入されることがあります。
しかし税制上の分類は異なります。
その結果、2027年4月以降は1%と10%という9ポイントの税率差が生まれることになります。
ビールは10%でノンアルコールビールは1%
さらに分かりやすい例がビールです。
酒類は現在の軽減税率でも対象外です。
今回予定されている飲食料品の消費税率引下げでも、酒類は対象外となります。
そのため、ビールや発泡酒などの消費税率は10%のままです。
一方、酒類に該当しないノンアルコールビールは飲食料品として扱われるため、対象となれば1%になります。
現在は8%と10%なので税率差は2ポイントです。
それが1%と10%になれば、差は9ポイントまで広がります。
商品そのものの価格差が小さければ、消費税によって税込価格の関係が変わる可能性もあります。
1000円の商品ならどれくらい違うのか
税抜価格が1,000円の商品で単純に比較してみます。
税率1%なら税込価格は1,010円です。
税率10%なら税込価格は1,100円です。
差は90円です。
現在の8%と10%なら、税込価格はそれぞれ1,080円と1,100円なので差は20円です。
つまり、税率引下げによって税負担の差が70円拡大する計算です。
商品単価が低ければ1回の買い物で感じる差は小さいかもしれません。
しかし、繰り返し購入する商品では無視できない差になる可能性があります。
税率差が消費者の商品選択を変える可能性
今回注目したいのは、単に飲食料品が安くなるということだけではありません。
類似商品間の相対価格が変わることです。
例えば、これまで価格やブランド、味、機能などを比較して商品を選んでいた消費者が、税込価格の差を意識するようになる可能性があります。
物価高によって家計の節約志向が強まっている状況では、数十円の違いでも購入頻度が高い商品ほど影響が大きくなります。
税制が商品の競争条件を変える可能性があるわけです。
企業は1%の商品を新しく開発するのか
では、企業が税率1%の対象になる商品を積極的に開発するのでしょうか。
ここでは制度が2年間限定であることが重要になります。
新商品を開発するには、研究開発、製造設備、パッケージ、広告、販売網などにコストがかかります。
2027年4月に始まった1%の税率が2029年3月で終了するのであれば、税率差だけを理由に新商品を開発しても投資を回収できない可能性があります。
そのため、税率差を利用するためだけの商品開発が急速に広がるとは限りません。
ブランド力が税率差を吸収する可能性もある
もう一つ重要なのがブランド力です。
消費者は必ずしも価格だけで商品を選んでいるわけではありません。
長年購入している商品や特定の効能、味、ブランドに価値を感じている場合、多少価格差が広がっても購入を続ける可能性があります。
したがって、1%と10%という税率差が、そのまま販売数量の差になるとは限りません。
税率だけではなく、ブランド、機能、価格、販売方法などを合わせて見る必要があります。
消費税率が商品の境界線を目立たせる
今回の制度で興味深いのは、これまで存在していた商品の分類が、税率差の拡大によって一気に目立つようになることです。
食品なのか。
医薬品や医薬部外品なのか。
酒類なのか。
それとも酒類ではない飲料なのか。
現在でもこの分類によって8%と10%に分かれています。
しかし差は2ポイントです。
これが1%と10%の9ポイントになれば、商品の分類が税込価格に与える影響は格段に大きくなります。
消費税率の引下げは家計支援策であると同時に、複数税率制度が持つ商品の線引きの問題をこれまで以上に浮かび上がらせることになります。
結論
2027年4月から予定されている飲食料品の消費税率1%への引下げでは、単に食料品の税負担が軽くなるだけではありません。
レッドブルのような飲食料品は1%となる一方、指定医薬部外品であるリポビタンDは10%のままです。
ビールなどの酒類も10%ですが、ノンアルコールビールは飲食料品として1%になるため、税率差は9ポイントまで広がります。
重要なのは、消費者から見た商品の類似性ではなく、税制上の分類によって税率が決まることです。
税率差が2ポイントなら目立たなかった商品の境界線も、9ポイントになれば価格競争や消費者の商品選択に影響する可能性があります。
2年間の消費税減税は、家計への効果だけではなく、似た商品をなぜ異なる税率で扱うのかという複数税率制度そのものを考える機会にもなりそうです。
参考
日本経済新聞 2026年9月20日 朝刊 消費減税、類似品に差
国税庁 2026年9月15日 飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて