相続や不動産売買の相談では、「登記簿」と「固定資産税台帳」という二つの資料が登場します。
どちらも土地や建物の情報が記載されているため、「同じ内容ではないのですか」と質問されることがあります。
しかし、この二つは目的も管理する機関も異なり、記載される情報や更新の仕組みにも違いがあります。
この違いを理解しておくことは、相続税申告や不動産取引だけでなく、税理士が依頼者へ適切なアドバイスを行ううえでも役立ちます。
今回は、固定資産税台帳と登記簿の違いについて解説します。
管理している機関が異なる
最も大きな違いは、管理している機関です。
固定資産税台帳は、市区町村が管理しています。
目的は、固定資産税を適正に課税することです。
一方、登記事項証明書(登記簿)は法務局が管理しています。
こちらは、不動産の所在や現況、所有権や抵当権などの権利関係を公示することが目的です。
同じ土地や建物を対象とした資料でも、役割はまったく異なります。
記載内容にも違いがある
固定資産税台帳には、
・土地や建物の評価額
・固定資産税の課税情報
・納税義務者
など、課税に必要な情報が記載されています。
一方、登記簿には、
・所在地
・地目
・地積
・建物の種類
・構造
・所有権
・抵当権
など、不動産の権利関係や現況が記録されています。
つまり、
固定資産税台帳は「課税のための資料」。
登記簿は「権利と現況を公示する資料」。
という違いがあります。
情報が更新されるタイミングも異なる
この二つは更新方法にも違いがあります。
固定資産税台帳は、市区町村が現況調査などを行いながら情報を更新します。
例えば、
建物が新築された。
土地の利用状況が変わった。
相続が発生した。
こうした情報を市区町村が把握し、課税のために更新していくことがあります。
一方、登記簿は所有者などから登記申請があって初めて内容が更新されます。
つまり、申請がなければ、実際の状況と登記内容が一致しない場合もあるのです。
現況と登記内容が異なることもある
例えば、建物を取り壊したにもかかわらず滅失登記をしていないケースでは、登記簿には建物が残ったままになります。
一方、市区町村は現地調査などにより建物の不存在を把握し、固定資産税台帳では更新されていることがあります。
また、相続が発生した場合でも、相続登記が完了していなければ、登記簿上の所有者は亡くなった方のままです。
しかし、市区町村では納税通知書の送付先などを相続人へ変更していることがあります。
このように、同じ不動産でも二つの資料に違いが生じることがあります。
取得できる人にも違いがある
登記事項証明書は、手数料を支払えば原則として誰でも取得できます。
不動産取引の安全性を確保するため、広く公開されているからです。
一方、固定資産税台帳は課税資料であるため、取得できる人が限定されています。
一般的には、
・所有者
・相続人
・代理人
・一定の利害関係人
などが取得できます。
誰でも自由に閲覧できる資料ではありません。
相続では両方を確認する意味がある
相続手続きでは、登記簿だけを確認すれば十分というわけではありません。
登記簿では権利関係を確認し、
固定資産税台帳では評価額や課税状況を確認する。
それぞれ役割が異なるため、両方を確認することで不動産の全体像を把握できます。
特に登記内容と現況が一致していない場合には、その違いに気付くきっかけにもなります。
税理士が理解しておきたいポイント
税理士は固定資産税台帳や登記簿を見る機会が多くあります。
その際、
「どちらが正しい資料なのか」
ではなく、
「目的が異なる資料である」
という視点を持つことが重要です。
例えば、
相続税評価では固定資産税評価額を参考にすることがあります。
一方で、所有者や土地の権利関係を確認する際には登記簿が欠かせません。
資料ごとの役割を理解して使い分けることが、実務では重要になります。
結論
固定資産税台帳と登記簿は、同じ不動産を対象としていても、その目的や管理機関、記載内容、更新方法が異なる資料です。
固定資産税台帳は課税のため、登記簿は権利と現況を公示するために作成されています。
相続や不動産取引では、どちらか一方だけでは十分とはいえません。
それぞれの役割を理解し、必要に応じて両方を確認することで、不動産の状況をより正確に把握することができます。
税理士もこの違いを理解しておくことで、依頼者への説明が分かりやすくなり、土地家屋調査士や司法書士との連携もより円滑になるでしょう。
参考
近畿税理士会「周辺専門講座 税理士が知っておくと損しない土地家屋調査士の業務【第3部】『ディスカッション』」