厚生年金に10年入ると年金はいくら増えるのか パートでも加入期間と給与に応じて上乗せされる仕組み編

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第3号被保険者だった人がパート先の厚生年金に加入すると、毎月の給与から厚生年金保険料が差し引かれるようになります。

そのため、

社会保険に入ると手取りが減る

という変化はすぐに分かります。

一方で分かりにくいのが、

将来の年金はいくら増えるのか

という点です。

厚生年金は、加入しただけで全員同じ金額が上乗せされる制度ではありません。

どのくらいの給与で働いたのか。

何年間加入したのか。

こうした条件によって将来の年金額が変わります。

パートであっても厚生年金に加入すれば、その期間と報酬に応じた本人名義の老齢厚生年金が積み上がります。

第3号のままでいる場合との大きな違いです。

厚生年金は2階部分の年金

日本の公的年金は、よく建物に例えて説明されます。

1階部分が国民年金の老齢基礎年金です。

2階部分が会社員などが加入する厚生年金の老齢厚生年金です。

第3号被保険者である期間は、原則として国民年金保険料を本人が直接負担しなくても、老齢基礎年金につながる期間になります。

しかし、第3号であることによって本人名義の老齢厚生年金が新たに積み上がるわけではありません。

一方、勤務先の厚生年金へ加入して第2号被保険者になれば、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金が積み上がります。

これが厚生年金へ加入する大きな意味です。

報酬比例部分とは何か

老齢厚生年金の中心となるのが報酬比例部分です。

名前のとおり、働いていたときの報酬と厚生年金への加入期間に応じて年金額が決まる仕組みです。

大まかに考えると、

平均的な報酬が高いほど年金額は増える

加入期間が長いほど年金額は増える

という関係になります。

したがって、

厚生年金に10年間入れば必ず年金が年額いくら増える

という一つの答えがあるわけではありません。

月給10万円程度で10年間働いた人と、月給30万円程度で10年間働いた人では、将来の老齢厚生年金の上乗せ額は異なります。

標準報酬月額とは何か

厚生年金では、毎月の給与額そのものを一円単位で保険料計算に使うわけではありません。

給与を一定の幅で区分した「標準報酬月額」を使います。

例えば給与がある範囲に入っていれば、それに対応する標準報酬月額が決まります。

厚生年金保険料の計算にも、この標準報酬月額が使われます。

将来の老齢厚生年金を計算するときにも、加入期間中の報酬が重要になります。

そのためパートで厚生年金へ加入するときには、

加入したかどうか

だけでなく、

どのくらいの報酬で何年間加入したか

を見る必要があります。

10年間加入するとどうなるのか

仕組みを理解するため、単純な例を考えてみます。

仮に厚生年金の計算上の平均的な報酬が月額10万円程度で、10年間加入したとします。

賞与はないものとして単純化します。

現在の報酬比例部分の基本的な考え方では、

平均標準報酬額

に、

一定の給付乗率

と、

加入月数

を掛けて年金額を計算します。

2003年4月以降の加入期間については、基本となる給付乗率として1000分の5.481が使われます。

10年間なら加入月数は120月です。

単純化して計算すると、

10万円掛ける1000分の5.481掛ける120月

となります。

およそ6万6000円です。

つまり月額10万円程度の報酬で10年間厚生年金に加入した場合、単純計算では老齢厚生年金の報酬比例部分が年額約6万6000円増えるイメージです。

月額に直せば約5500円です。

実際の年金額は加入時期や報酬、賞与、制度上の計算などによって異なるため、これはあくまで仕組みを理解するための概算です。

月額15万円ならどうなるのか

同じ10年間でも報酬が高くなれば、厚生年金の上乗せも大きくなります。

例えば平均的な報酬を月額15万円として単純計算してみます。

15万円掛ける1000分の5.481掛ける120月

です。

およそ9万9000円になります。

月額では約8200円です。

つまり同じ10年間でも、報酬が月額10万円程度の場合と15万円程度の場合では、将来の厚生年金の上乗せ額が変わります。

これが報酬比例という仕組みです。

月額20万円ならさらに増える

平均的な報酬を月額20万円として同じ方法で考えると、

20万円掛ける1000分の5.481掛ける120月

となります。

およそ13万2000円です。

月額に直せば約1万1000円です。

このように、

報酬が高くなる

加入期間が長くなる

ほど老齢厚生年金の上乗せは大きくなります。

ただし、これは現在の計算方法を使って仕組みを単純化した例です。

実際の受給額を確認するときには、個人の年金記録に基づいて確認する必要があります。

10年ではなく20年ならどうなるのか

加入期間も重要です。

同じ月額10万円程度の報酬でも、10年間ではなく20年間加入すれば、加入月数は240月になります。

単純化すれば、報酬比例部分は10年間の場合のおおむね2倍になります。

厚生年金は、

一度加入すれば大きな年金がもらえる

という制度ではありません。

毎月少しずつ年金の権利を積み上げていく制度です。

短時間労働者であっても、加入期間が長くなれば、その積み重ねは大きくなります。

第3号のまま10年間過ごした場合

では、同じ10年間を第3号被保険者として過ごした場合はどうでしょうか。

第3号被保険者の期間は、原則として老齢基礎年金の保険料納付済期間として扱われます。

したがって基礎年金については、その期間が年金額の計算につながります。

しかし第3号であることによる老齢厚生年金の報酬比例部分はありません。

一方、パート先で厚生年金に加入して第2号になれば、基礎年金につながることに加え、本人名義の老齢厚生年金も積み上がります。

この上乗せ部分が、第3号のままでいる場合との違いになります。

第3号から第2号になると保険料負担も生じる

もちろん、将来の年金が増える部分だけを見ることはできません。

第3号から第2号になれば、本人に厚生年金保険料の負担が発生します。

給与から保険料が差し引かれるため、現在の手取りは減ります。

第3号のままであれば本人による国民年金保険料の直接負担はありません。

したがって、

厚生年金に入れば年金が増えるから必ず得

という単純な比較ではありません。

現在の負担と将来の給付の両方を見る必要があります。

会社も厚生年金保険料を負担する

ただし、厚生年金には重要な特徴があります。

保険料を本人だけで負担するわけではありません。

原則として勤務先も半分を負担します。

給与明細に表示されている本人負担額とは別に、会社側にも保険料負担があります。

その保険料を基礎として厚生年金制度全体が運営されています。

第1号被保険者として国民年金保険料を自分で負担する場合とは、この点が大きく異なります。

第3号から第2号への移行を考える場合には、会社負担分の存在も忘れてはいけません。

長生きするほど受給総額は増える

老齢厚生年金は、原則として受給開始後、生涯にわたって受け取る年金です。

そのため加入によって年額10万円の厚生年金が増えたとしても、その価値を1年分だけで考えることはできません。

10年間受け取れば単純には100万円です。

20年間なら200万円です。

もちろん実際には年金額の改定などがあるため、単純な掛け算だけで将来の受給総額を決めることはできません。

それでも、

毎年受け取る年金が生涯にわたって上乗せされる

という点は重要です。

厚生年金加入の価値は、長期的な視点で見る必要があります。

年金には老後以外の保障もある

厚生年金を考えるときには、老齢厚生年金だけを見るのも十分ではありません。

公的年金には、老後の年金だけでなく障害年金や遺族年金があります。

一定の要件を満たせば、厚生年金加入中の障害について障害厚生年金につながる場合があります。

加入者が亡くなった場合には、一定の遺族について遺族厚生年金が関係することもあります。

つまり厚生年金保険料は、

自分の老後資金だけを積み立てている

わけではありません。

現役時代を含めたさまざまな生活上のリスクを支える社会保険料でもあります。

年収の壁を超える判断にも関係する

パートで働く第3号被保険者が社会保険の壁を意識するとき、

保険料がいくら増えるのか

には強い関心が向きます。

しかし、

厚生年金が将来いくら増えるのか

は見落とされやすい部分です。

保険料負担は来月から始まります。

年金を受け取るのは何年も先です。

この時間差があるためです。

だからこそ、年収の壁を超えるかどうかを考える場合には、

現在の手取り

だけではなく、

5年加入したらどうなるのか

10年加入したらどうなるのか

20年加入したらどうなるのか

という長期的な視点も必要になります。

自分の年金額は個別に確認する必要がある

厚生年金の上乗せ額は人によって違います。

加入期間が違います。

給与が違います。

賞与の有無も違います。

過去の加入記録も違います。

そのため一般的なモデル計算だけで、自分の将来の年金額を正確に判断することはできません。

モデル計算は、

厚生年金に入るとどのような仕組みで年金が増えるのか

を理解するためのものです。

実際の老後設計では、自分自身の年金記録や見込額を確認することが重要になります。

結論

パートで働く人でも、勤務先の厚生年金に加入すれば本人名義の老齢厚生年金が積み上がります。

その金額は全員同じではありません。

基本的には、

どのくらいの報酬で働いたのか

どのくらいの期間加入したのか

によって変わります。

例えば仕組みを単純化すると、平均的な報酬が月額10万円程度で10年間加入した場合、現在の報酬比例部分の基本的な計算では、年額約6万6000円の老齢厚生年金が上乗せされるイメージになります。

月額15万円程度なら年額約9万9000円、月額20万円程度なら年額約13万2000円です。

第3号被保険者のままでも、その期間は原則として老齢基礎年金につながります。

しかし本人名義の老齢厚生年金は、第3号であることだけでは積み上がりません。

第2号になって厚生年金へ加入することで、2階部分の年金が新たに積み上がります。

もちろん、その代わり現在の給与から厚生年金保険料が差し引かれます。

だからこそ、

手取りが減るから損

あるいは、

年金が増えるから得

という一方向だけで判断することはできません。

現在の保険料負担と、将来にわたって受け取る年金の増加を両方見る必要があります。

第3号被保険者制度の縮小によってパートの厚生年金加入が増えるのであれば、将来の年金がどの程度増えるのかを具体的に理解することが、働き方を考えるうえでますます重要になるのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 厚労省「年金3号」縮小へ調査 働き控えの実態把握

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