円安で日本の不動産はどれだけ安く見えるのか 海外投資家のドル建て価格編

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日本人から見ると、東京を中心としたマンション価格はすでに非常に高い水準にあります。

しかし海外投資家から見ると、同じマンションが必ずしも同じように高く見えるわけではありません。

その理由が為替です。

日本の不動産価格が円建てで上昇していても、それ以上に円安が進めば、ドルなどの外貨から見た価格は上昇しないことがあります。場合によっては、日本人には値上がりしている不動産が、海外投資家には値下がりして見えることさえあります。

海外マネーによる日本のマンション投資を考えるうえでは、円建て価格だけでなく、ドル建て価格というもう一つの物差しを見る必要があります。

円建て価格とドル建て価格は違う

例えば、日本で10億円のマンションを購入するとします。

為替相場が1ドル100円なら、

10億円を100円で割る

ため、ドル建て価格は1000万ドルです。

ところが1ドル150円まで円安になった場合、

10億円を150円で割る

ため、約667万ドルになります。

マンションの円建て価格は10億円のままです。

しかし米国などのドル投資家から見ると、1000万ドルだったマンションが約667万ドルで購入できることになります。

単純計算では約33%安くなったことになります。

これが円安による日本不動産の割安感です。

マンション価格が上がっても海外投資家には安くなることがある

さらに重要なのは、日本国内でマンション価格が上昇している場合です。

先ほどの10億円のマンションが20%値上がりして12億円になったとします。

日本人から見れば明らかな値上がりです。

為替が1ドル100円なら、ドル建て価格は1200万ドルです。

ところが為替が1ドル150円なら、

12億円を150円で割る

ため、800万ドルになります。

つまり円建てでは、

10億円から12億円

へ20%上昇しています。

それでもドル建てでは、

1000万ドルから800万ドル

へ20%低下しています。

日本人には20%値上がりして見える一方、ドル投資家には20%値下がりして見えるということです。

同じ不動産なのに、使用する通貨によって価格の見え方が正反対になることがあります。

海外ファンドは世界の不動産を比較している

海外の大手投資ファンドは、日本だけを見て投資しているわけではありません。

東京のマンションと、

ニューヨーク

ロンドン

パリ

シンガポール

香港

シドニー

など世界の主要都市の不動産を比較します。

その際には現地通貨建ての価格だけではなく、ドルなど共通の通貨に換算して比較することになります。

日本の不動産価格が円建てで上昇していても、円安が進んでいれば、世界の不動産との比較では割安感が残る可能性があります。

日本人が「これ以上マンション価格が上がれば誰が買うのだろう」と感じる水準でも、世界の投資家には違う価格に見えていることがあるのです。

円安は投資できる金額も大きくする

為替は購入価格だけでなく、海外投資家が日本で動かせる資金量にも影響します。

例えば海外ファンドが10億ドルを日本へ投資するとします。

1ドル100円なら1000億円です。

1ドル150円なら1500億円です。

同じ10億ドルでも、日本で使える円は500億円増えます。

つまり円安になると、海外ファンドの外貨資金が日本国内ではより大きな購買力を持つことになります。

大型ファンドが数十棟のマンションをまとめて購入できる背景を考える際にも、世界規模の資金力と為替の組み合わせは重要です。

不動産投資では購入価格だけを見ない

ただし、円安だから日本の不動産を買えば必ず利益が出るわけではありません。

海外ファンドは購入価格だけでなく、不動産から得られる収益も見ます。

例えば、

家賃

空室率

管理費

修繕費

税金

将来の売却価格

などです。

前回まで取り上げたキャップレートやイールドギャップも重要になります。

円安によって割安に購入できても、賃料収入が低下すれば投資価値は下がります。

反対に、

円安で割安に購入できる

家賃が上昇する

物件価値が上昇する

という条件が重なれば、海外投資家には非常に魅力的な投資先となります。

近年の日本の都市部マンションでは、この複数の要因が重なっていることが海外マネー流入の背景にあります。

円高になれば為替差益を得られる可能性もある

海外投資家にとって、円安時に日本の不動産を購入するもう一つの魅力は、将来円高になった場合です。

例えば1ドル150円のときに150億円の不動産を購入したとします。

ドル建てでは1億ドルです。

数年後、不動産価格が150億円のままで、為替だけが1ドル120円になったとします。

150億円を120円でドル換算すると1億2500万ドルです。

円建ての不動産価格はまったく上昇していません。

それでもドル投資家から見ると、

1億ドルから1億2500万ドル

へ資産価値が増えたことになります。

円高による為替差益です。

もちろん実際には売買費用や税金などがありますが、為替だけでも投資収益が大きく変わることが分かります。

反対に円安が進めば為替差損になる

為替は利益だけでなく損失も生みます。

先ほどと反対に、1ドル150円で日本の不動産を購入した後、1ドル180円まで円安が進んだとします。

150億円の不動産を180円でドル換算すると約8333万ドルです。

購入時には1億ドルだった資産が、ドル建てでは約8333万ドルまで減少します。

円建ての不動産価格が変わっていなくても、海外投資家には損失が発生したことになります。

そのため海外ファンドは為替リスクをそのまま抱えるとは限りません。

金融取引を使って為替変動の影響を抑える為替ヘッジを行う場合もあります。

ただし為替ヘッジにはコストがかかります。

したがって海外投資家は、不動産そのものの収益と為替の両方を考えて投資判断をする必要があります。

円高になると新規投資には逆風になる可能性がある

日本の不動産への海外マネー流入を考えるうえで、今後の円相場は重要です。

例えば1ドル150円のときに15億円の物件を買うには1000万ドル必要です。

ところが1ドル120円まで円高になると、同じ15億円の物件を購入するために1250万ドル必要になります。

海外投資家から見れば25%値上がりしたことになります。

不動産価格そのものが変わらなくても、円高だけで日本の不動産の割安感が薄れるわけです。

そのため急激な円高が進めば、海外投資家の新規購入意欲が低下する可能性があります。

マンション価格を支えてきた海外マネーの流入が弱くなれば、不動産価格にも影響する可能性があります。

円安だけで海外マネーを説明することはできない

もっとも、日本への不動産投資を円安だけで説明するのは適切ではありません。

投資家にとって重要なのは最終的な投資収益です。

日本の都市部には、

比較的安定した賃貸需要

低い空室率

家賃の上昇余地

巨大な東京市場

法制度の安定性

豊富な不動産取引

などの特徴があります。

円安はこうした投資環境に加わる一つの要素です。

つまり、

日本の不動産そのものに投資価値がある

そこへ円安による割安感が加わる

という構図で考える必要があります。

J REITにも海外マネーは入る

為替の影響を受けるのは実物不動産だけではありません。

証券取引所に上場しているJ REITも海外投資家の投資対象です。

J REITを購入すれば、海外投資家は自らマンションやオフィスビルを取得しなくても、日本の不動産から生まれる収益に投資できます。

円安によって日本の資産に割安感が生じたり、J REITの分配金利回りが海外の金融商品と比較して魅力的になったりすれば、海外資金が流入する可能性があります。

反対に円高や海外金利の上昇などによって投資魅力が低下すれば、資金が流出することもあります。

日本の不動産市場は、実物不動産とJ REITの両方を通じて世界の金融市場と結びついているのです。

日本人と海外投資家ではマンションを見る物差しが違う

日本人がマンションを購入するときには、多くの場合、

年収

住宅ローン金利

頭金

毎月の返済額

などを考えます。

一方、海外ファンドは、

ドル建て取得価格

キャップレート

イールドギャップ

賃料上昇

為替

将来の売却価格

などを考えます。

同じマンション市場を見ていても、判断基準が違います。

この違いが、日本人の所得では説明しにくいマンション価格上昇を生み出す一因となります。

結論

円安になると、日本の不動産は海外投資家から見て安くなります。

重要なのは、円建て価格とドル建て価格がまったく違う動きをする可能性があることです。

日本国内でマンション価格が上昇していても、それ以上に円安が進めば、ドル建てでは価格が低下することがあります。

さらに同じ外貨資金でも、円安になれば日本国内でより多くの円を使えるため、海外ファンドの購買力は高まります。

一方で、購入後にさらに円安が進めば為替差損が生じる可能性があります。逆に円高へ転じれば、円建ての不動産価格が変わらなくても為替差益を得られることがあります。

そのため海外投資家にとって、日本のマンション投資は単なる不動産投資ではありません。

不動産価格、家賃、金利、キャップレート、そして為替を組み合わせた国際的な資産運用です。

日本人から見れば非常に高くなったマンションでも、世界の投資家から見ればまだ割安に映ることがあります。

マンション価格の行方を考えるうえで、これからは円建て価格だけを見るのではなく、「海外投資家には何ドルに見えているのか」という視点も重要になってくるのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊「マンション、海外マネー増勢 カナダファンドが1000億円 資金流入で高値続く」

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊「投資ファンド 不動産や企業買収活発に」

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