住宅ローンを組むと、毎月一定額を返済しながら少しずつ借金を減らしていくのが一般的です。
ところが、借りた元金の一部を毎月返さず、最終返済日まで残しておく住宅ローンがあります。
これが元金据え置きを利用した住宅ローンです。
ドコモSMTBネット銀行が始めた期日一括返済併用型住宅ローンでは、元金の50%を最終返済日に一括して返済します。
その分、毎月の返済額を抑えられることが大きな特徴です。
しかし、返済額が減ったからといって借金そのものが減ったわけではありません。
元金据え置きの仕組みを理解するには、毎月の返済額ではなく、住宅ローン残高がどう動くのかを見ることが重要です。
元金とは何か
住宅ローンの返済額は、大きく元金と利息から成り立っています。
元金とは金融機関から実際に借りたお金です。
例えば1億円を借りれば、最初の元金は1億円です。
利息は、その元金を借りていることに対して金融機関へ支払う費用です。
通常の住宅ローンでは、毎月の返済によって元金と利息を支払います。
返済が進むにつれて元金が減り、それに伴って住宅ローン残高も小さくなっていきます。
元金据え置きとは何か
元金据え置きとは、借りた元金の全部または一部について、一定期間は返済しない仕組みです。
今回の2階建て住宅ローンでは、元金の50%を最終返済日まで据え置きます。
例えば1億円を借りたとします。
そのうち5000万円については通常の住宅ローンのように返済していきます。
一方、残りの5000万円は最終返済日まで元金を返しません。
この5000万円が据え置かれる部分です。
したがって、返済期間の最後になっても5000万円の元金が残ることになります。
なぜ毎月の返済額が減るのか
毎月の返済額を抑えられる理由は、毎月返済する元金が少なくなるからです。
通常の住宅ローンなら、1億円の元金を返済期間中に少しずつ返していきます。
一方、元金の50%を据え置けば、返済期間中に少しずつ返していく対象は5000万円になります。
もちろん据え置いた5000万円にも利息は発生します。
それでも、5000万円の元金返済を最後まで先送りするため、毎月の返済額は通常の住宅ローンより小さくできます。
つまり毎月の負担が消えたのではなく、将来へ移動したと考えると分かりやすいでしょう。
据え置いた元金にも利息はかかる
ここは特に重要なポイントです。
元金を据え置くことと、利息を支払わなくてよいことは別です。
金融機関から5000万円を借り続けている以上、その5000万円に対する利息は発生します。
通常の住宅ローンなら、元金返済が進むにつれて残高が減ります。
残高が減れば、そこから発生する利息も徐々に小さくなります。
ところが据え置き部分は元金が減りません。
5000万円を据え置いているなら、その残高が長期間残ります。
そのため、毎月返済額だけではなく、返済期間全体でどれだけ利息を支払うのかを見る必要があります。
普通の住宅ローンとの違い
通常の住宅ローンと2階建て住宅ローンの大きな違いは、返済期間中に元金をどこまで減らすかです。
通常の住宅ローンは、最終返済日に残高がゼロになるように元金を返していきます。
一方、2階建て住宅ローンでは、あらかじめ元金の一部を最終返済日に残します。
毎月の家計だけを見ると、2階建て住宅ローンの方が楽に感じる可能性があります。
しかし住宅ローン残高を見ると景色は違います。
通常の住宅ローンでは時間の経過とともに借金が減っていきます。
元金据え置き型では、大きな借金が長期間残り続けます。
1億円借りた場合を考える
分かりやすくするため、1億円の住宅ローンを例に考えてみます。
通常の住宅ローンなら、返済期間を通じて1億円の元金を少しずつ返済します。
最終返済時には残高がゼロになります。
一方、元金の50%を据え置く場合、5000万円を返済期間中に返し、残り5000万円を最後に一括返済します。
つまり返済期間の最終段階になっても、住宅ローン残高が5000万円残っているわけです。
毎月の返済が軽くなった理由は、この5000万円を返していなかったからです。
この構造を理解せず、毎月の返済額だけを比較すると、住宅ローンの本当の負担を見誤る可能性があります。
最後の5000万円をどうするのか
元金据え置き型住宅ローンでは、契約するときから出口を考える必要があります。
例えば35年後に5000万円が残るなら、その5000万円をどう用意するのかを考えます。
金融資産を長期間積み立てる方法があります。
退職金などのまとまった資金を利用する方法もあります。
購入した住宅を売却し、その代金で返済する方法も考えられます。
ただし、35年後の金融資産や退職金、住宅価格を正確に予測することはできません。
だからこそ、単一の返済方法だけを前提にするのではなく、複数の選択肢を持っておくことが重要になります。
高額物件ほど残る金額も大きい
元金50%という割合だけを見ると、リスクの大きさを実感しにくいかもしれません。
重要なのは金額に置き換えることです。
6000万円借りれば3000万円です。
1億円借りれば5000万円です。
1億6000万円借りれば8000万円です。
高額なタワーマンションなどを購入するために利用するほど、最終返済日に残る元金も大きくなります。
毎月数万円、十数万円の返済負担を軽くすることだけでなく、将来数千万円の残高をどう処理するのかまで考える必要があります。
返済の先送りという性格を理解する
元金据え置きは、住宅ローンの負担をなくす仕組みではありません。
返済する時期を変える仕組みです。
現役時代の毎月返済額を抑える代わりに、将来に大きな返済額を残します。
現在の家計を楽にできるというメリットがある一方、将来の資金計画への依存度が高くなります。
したがって、現在の収入だけで判断する住宅ローンではありません。
将来の金融資産、退職時期、住宅の売却可能性なども含めて考える必要があります。
結論
元金据え置きとは、住宅ローンの元金の一部を毎月返済せず、将来まで残しておく仕組みです。
2階建て住宅ローンでは、元金の50%を最終返済日に一括返済する商品が登場しています。
元金返済を先送りするため、毎月の返済額を抑えられます。
しかし、据え置いた元金がなくなるわけではありません。
さらに、据え置いている間も元金に対する利息は発生します。
住宅ローンを比較するときに大切なのは、毎月いくら払うのかだけを見ることではありません。
今いくら借金が残っているのか。
10年後にいくら残るのか。
そして最終返済日にいくら残るのか。
住宅ローン残高の推移を見ることで、元金据え置きという仕組みの本当の意味が見えてきます。
参考
日本経済新聞 2026年9月17日 朝刊 タワマン購入へ「2階建て」ローン、月々の負担減に落とし穴