個人向け国債をNISAに入れると何が変わるのか 利子まで非課税になれば実質利回りが上がる理由編

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個人向け国債をNISAの対象に加える案が実現すると、私たちの資産運用にはどのような変化が起きるのでしょうか。

最大のポイントは税金です。

現在、個人向け国債から受け取る利子には原則として税金がかかります。

もしNISAの対象となり、その利子を非課税で受け取れる仕組みになれば、同じ金利の個人向け国債でも投資家が実際に受け取れる金額は増えます。

つまり国債そのものの金利を引き上げなくても、税制によって実質的な魅力を高めることができるわけです。

そして、その影響は個人向け国債だけにとどまりません。

銀行預金や他の金融商品との競争にも変化を与える可能性があります。

個人向け国債とは何か

個人向け国債は、国が個人向けに発行する国債です。

簡単にいえば、個人が国へお金を貸す金融商品です。

国はその資金を利用し、保有者に利子を支払い、最終的に元本を返します。

個人向け国債には、

変動10年

固定5年

固定3年

という種類があります。

株式のように企業の成長によって大きな値上がり益を狙う商品とは性格が異なります。

元本割れを避けながら一定の利子を受け取りたい人にとって、資産運用の選択肢の一つになっています。

個人向け国債の利子には税金がかかる

個人向け国債は安全性の高い金融商品ですが、利子をそのまま全額受け取れるわけではありません。

原則として利子には20.315パーセントの税金がかかります。

所得税および復興特別所得税と住民税です。

例えば100万円分の個人向け国債を保有し、仮に年3パーセントの利子を受け取れるとします。

年間の利子は3万円です。

しかし3万円がそのまま手元に残るわけではありません。

税金は約6095円です。

税引き後に受け取れる金額は約2万3905円になります。

投資を比較するときには、表示されている金利だけではなく、税引き後にいくら残るのかを見ることが重要です。

税引前金利と税引後金利は違う

金融商品の広告などで表示される金利は、基本的に税引前です。

そのため実際の手取り利回りは低くなります。

先ほどの年3パーセントという例なら、税引き後の利回りは単純計算で約2.39パーセントです。

100万円を運用した場合、

税引前では3万円

税引後では約2万3905円

となります。

この差は1年間なら約6095円です。

しかし投資額が大きくなったり、保有期間が長くなったりすれば、税金の影響も積み重なっていきます。

だからこそ金融商品を比較するときには、税引前金利だけを見ると判断を誤ることがあります。

NISAに入れば税引前と税引後が近づく

ここで個人向け国債がNISAの対象になった場合を考えてみます。

仮に国債の利子もNISAで非課税になる仕組みが導入されたとします。

先ほどと同じ100万円、年3パーセントなら、年間3万円の利子をそのまま受け取れることになります。

通常なら約2万3905円。

非課税なら3万円。

国債そのものの金利は同じ3パーセントです。

それでも投資家の手取りは増えます。

つまりNISAによる非課税措置は、国債の表面上の金利を変えずに、税引き後の利回りを高める効果を持つことになります。

国が金利を上げなくても魅力を高められる

これは国債を発行する政府から見ると興味深い仕組みです。

通常、国債をもっと買ってもらおうとすれば、より高い金利を提示する方法があります。

しかし国債の金利が高くなれば、政府が支払う利子も増えます。

政府にとっては将来の財政負担につながります。

一方、税制優遇を使えば違います。

国債の金利そのものを引き上げなくても、投資家から見た手取り利回りを高めることができます。

ただし、政府にとって負担がなくなるわけではありません。

本来受け取れるはずだった税収が減るからです。

利払い費として負担するのか。

税収減として負担するのか。

形は違っても、政策にはコストがあります。

銀行預金との比較が変わる

個人向け国債がNISA対象になれば、特に影響を受ける可能性があるのが銀行預金です。

銀行預金の利息にも原則として税金がかかります。

例えば預金と個人向け国債の税引前金利が同程度だったとします。

両方とも課税されるなら、税制面では大きな違いはありません。

ところが、

銀行預金の利息は課税

個人向け国債の利子はNISAで非課税

となれば状況が変わります。

同じような金利なら、税引き後では個人向け国債の方が有利になる可能性があります。

これまで預金に置かれていたお金の一部が個人向け国債へ動くことも考えられます。

預金と国債は同じではない

もっとも、税引き後利回りだけで預金と国債を比較することはできません。

預金には日常的な決済資金として利用できる利便性があります。

普通預金なら必要なときに引き出せます。

一方、個人向け国債は原則として発行から1年間は中途換金できません。

1年経過後は中途換金できますが、直前2回分の各利子相当額に一定の調整が行われます。

したがって、

生活費

緊急時の資金

近いうちに使う予定のお金

まで国債へ移せばよいということではありません。

預金と個人向け国債にはそれぞれ異なる役割があります。

それでも税制が変われば、どちらにお金を置くかという判断に影響する可能性はあります。

銀行にとっては預金流出の問題になる

家計から見れば、

預金から個人向け国債へ

という単純な資産の移動に見えます。

しかし銀行から見ると意味が違います。

預金は銀行にとって重要な資金調達手段です。

銀行は預金などで集めた資金を企業や個人への融資、あるいは有価証券への投資などに利用します。

もし個人向け国債に強い税制優遇が与えられ、預金から国債へ大量の資金が動けば、銀行の資金調達にも影響する可能性があります。

その場合、銀行側も預金金利を引き上げるなどして預金者をつなぎ留めようとするかもしれません。

NISAで国債を優遇することは、国債市場だけではなく銀行の預金獲得競争にも波及する可能性があるのです。

NISAに国債が入ると制度の性格も変わる

これまでNISAは、株式や投資信託などを通じた長期的な資産形成を後押しする制度として発展してきました。

そこへ個人向け国債が加われば、NISAの性格は少し変わります。

株式投資では企業の成長による利益を投資家が受け取ります。

国債では政府へ資金を貸し、その対価として利子を受け取ります。

どちらも金融資産ではありますが、お金の行き先が違います。

個人向け国債をNISAに加えることは、

個人の資産形成支援

という目的に加えて、

個人による国債保有の促進

という政策目的を持つ可能性があります。

ここが今回の議論を見るうえで重要なポイントです。

非課税という見えにくい金利上乗せ

個人向け国債のNISA対象化を考えるときには、表面金利だけを見るべきではありません。

例えば金利3パーセントの国債があったとしても、

課税される3パーセント

と、

非課税の3パーセント

では投資家にとって価値が違います。

税制優遇は、実質的には投資家の手取り利回りを押し上げる働きをします。

言い換えれば、

「税金を取らない」

という方法によって国債の商品力を高めることができるわけです。

だからこそ、個人向け国債をNISAに入れるかどうかは単なる商品追加の話ではありません。

国が税制を使って国債の魅力をどこまで高めるのかという政策判断でもあります。

結論

現在、個人向け国債の利子には原則として20.315パーセントの税金がかかります。

仮に個人向け国債がNISAの対象となり、利子が非課税になれば、国債そのものの金利が変わらなくても投資家の手取り利回りは上昇します。

これは個人にとって大きなメリットです。

一方、政府から見れば、金利を引き上げずに国債の魅力を高められる可能性があります。

その代わり、本来得られたはずの税収を失います。

さらに銀行預金の利息が課税されたまま国債だけが非課税になれば、預金から国債へ資金が動く可能性もあります。

つまり個人向け国債のNISA対象化は、

「安全な金融商品をNISAで買えるようにする」

というだけの話ではありません。

税制によって国債の実質利回りを高め、家計金融資産の流れを変える政策にもなり得ます。

NISAの商品範囲を考えるときには、利回りだけでなく、

「非課税によって誰のお金をどこへ動かそうとしているのか」

まで見ることが重要なのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月6日 朝刊 「なんでもNISA」の陥穽

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