ソフトバンクグループが発行を準備している1兆円規模の個人向け社債では、利率が4%台後半になるとの見方があります。
銀行の定期預金などと比べると、かなり高い金利です。
では、なぜこれほど高い金利を受け取れるのでしょうか。
社債の利率を考えるときに重要になるのが信用格付けです。
社債の金利は単純に高ければ有利というものではありません。高い金利の裏側には、その企業にお金を貸すことによって投資家が負担する信用リスクがあります。
ソフトバンクグループの社債を見る場合も、利率だけでなく格付けとセットで考える必要があります。
信用格付けとは何か
信用格付けとは、企業や国などがお金を借りた場合に、元本や利息を約束通り支払う能力がどの程度あるのかを格付け会社が評価したものです。
代表的な格付け会社にはS&Pグローバル・レーティング、ムーディーズ、フィッチ・レーティングスなどがあります。
格付けは一般にアルファベットで表示されます。
S&Pの場合、最上位はトリプルAです。
そこからダブルA、シングルA、トリプルB、ダブルB、シングルBなどと信用力が下がっていきます。
さらに同じ格付けの中でもプラスやマイナスを付けて細かく分類します。
例えばダブルBプラスは、ダブルBより一段階上で、トリプルBマイナスより一段階下になります。
格付けは、企業の知名度や会社の規模を評価するものではありません。
重要なのは借りたお金を返済できる能力です。
そのため、売上高や利益だけでなく、借入金、キャッシュフロー、保有資産、事業リスク、財務政策など幅広い要素が評価されます。
投資適格級と投機的等級とは何か
信用格付けには、大きな境界線があります。
それが投資適格級と投機的等級です。
S&Pの格付けでは、トリプルBマイナス以上が投資適格級、ダブルBプラス以下が投機的等級になります。
つまり、
トリプルA
ダブルA
シングルA
トリプルB
までが基本的に投資適格級です。
その下のダブルB以下が投機的等級になります。
投資適格級とは、元本や利息を支払う能力について相対的に信用力が高いと評価されている債券です。
生命保険会社や年金基金などの機関投資家の中には、運用ルールによって投資適格級以上の債券を中心に運用するところもあります。
一方、投機的等級の社債は投資適格級より信用リスクが高いと評価されています。
その代わり、一般的には投資家に高い利回りを提示します。
このため投機的等級の社債はハイイールド債と呼ばれることもあります。
ただし、投機的等級だから直ちに危険な企業という意味ではありません。
格付けは、信用リスクの相対的な位置を示すものだからです。
反対に、投資適格級だから元本が保証されているわけでもありません。
社債を見る場合には、この点を理解しておく必要があります。
ダブルBプラスとはどの位置なのか
ソフトバンクグループについて、S&Pグローバル・レーティングはダブルBプラスの格付けを付与しています。
ここで重要なのがダブルBプラスの位置です。
投資適格級の最も下はトリプルBマイナスです。
そのすぐ下がダブルBプラスです。
つまりダブルBプラスは、投機的等級の中では最上位に位置します。
投資適格級まであと一段階という位置です。
S&PはダブルB格について、短期的にはそれほど脆弱ではないものの、事業環境や金融環境などの不確実性にさらされる可能性がある格付けとして位置付けています。
ソフトバンクグループの場合、一般的なメーカーなどとは財務構造が大きく異なります。
ソフトバンクグループは投資会社として、英アーム・ホールディングスなど巨額の株式資産を保有しています。
その一方で、多額の有利子負債を抱えながら投資を行っています。
そのため信用力を見るうえでは、保有資産と負債のバランスが非常に重要になります。
代表的な指標がLTVです。
LTVは保有資産価値に対して純負債がどの程度あるのかを見る指標です。
ソフトバンクグループのLTVは2026年6月末時点で13%となり、3月末から4ポイント低下しました。
アーム株の上昇によって保有資産価値が増えたことが大きな要因です。
S&Pは2026年7月、アーム株の上昇などを受け、ソフトバンクグループの格付け見通しをネガティブから安定的に引き上げています。
ただし格付けそのものはダブルBプラスです。
したがって信用力が改善方向にあるという評価と、現在の格付けが投機的等級であるという事実は分けて考える必要があります。
なぜ格付けが低いほど金利が高くなるのか
社債の利率と信用格付けには密接な関係があります。
例えば、信用力が非常に高い企業と信用力が低い企業が、同じ金利で社債を発行したとします。
投資家であれば、通常は信用力の高い企業の社債を選びます。
わざわざ高い信用リスクを負う理由がないからです。
そこで信用力の低い企業は、投資家に社債を購入してもらうため、より高い金利を提示する必要があります。
この上乗せされる利回りは、信用リスクに対する対価と考えることができます。
一般的に、
信用力が高いほど金利は低くなりやすい
信用力が低いほど金利は高くなりやすい
という関係になります。
これが、格付けと社債利回りの基本的な関係です。
したがって社債の金利が高い場合には、
なぜこの企業はこれだけ高い金利を支払う必要があるのか
という視点が重要になります。
高金利は投資家にとって収益機会であると同時に、信用リスクを引き受ける対価でもあるからです。
利率4%台後半をどう考えるのか
今回のソフトバンクグループの個人向け社債については、利率が4%台後半になるとの見方があります。
仮に100万円を年4.8%で運用すれば、税引き前の利息は年間4万8000円です。
7年間同じ利率で利息を受け取れば、単純計算では税引き前で33万6000円になります。
低金利時代の日本では非常に大きく見える金額です。
しかし、この4%台後半という数字だけを見て有利と判断することはできません。
ソフトバンクグループの信用リスクを引き受け、7年間資金を貸すことへの対価だからです。
さらに市場金利が上昇すれば、購入した社債の市場価格が下落する可能性があります。
満期まで保有して発行企業が予定通り償還すれば額面金額が返ってくるのが基本ですが、途中で売却する場合には購入価格を下回る可能性があります。
したがって社債を見る場合には、利率だけではなく、格付け、償還期間、発行企業の財務状況、市場金利などを総合して考える必要があります。
格付けは絶対的な安全証明ではない
もう一つ注意したいのが、格付けを過信しないことです。
格付け会社が示しているのは、将来の元本返済を保証するものではありません。
あくまで信用力についての評価です。
企業の経営環境が急速に悪化すれば、格付けが引き下げられることがあります。
反対に財務状態が改善すれば、格付けが引き上げられることもあります。
また同じ企業でも、格付け会社によって評価が異なる場合があります。
そのため個人投資家が社債を購入するときには、格付けだけで判断するのではなく、企業がどのような事業を行い、どの程度の負債を抱え、どのような資産やキャッシュフローを持っているのかを見ることも重要です。
特にソフトバンクグループのような投資会社では、保有株式の価格変動によって資産価値が大きく変化する可能性があります。
AI投資を積極化して負債が増えれば、財務構造も変化します。
高い利率の背景には、こうした企業固有のリスクがあります。
結論
信用格付けとは、企業などが元本や利息を約束通り支払う能力について格付け会社が評価したものです。
一般的にトリプルBマイナス以上が投資適格級、ダブルBプラス以下が投機的等級とされます。
ソフトバンクグループにS&Pが付与しているダブルBプラスは、投機的等級の中では最上位で、投資適格級の一段階下に位置します。
今回の個人向け社債で予想されている4%台後半という高い利率を見る場合、この格付けとの関係が重要です。
社債の金利が高いのは、単なるサービスではありません。
投資家が発行企業の信用リスクを負担するため、その対価として国債や信用力の高い社債より高い金利が設定されます。
社債投資では、利率の高さを見るだけでは不十分です。
なぜその利率が必要なのかを考えることで、初めて社債のリスクとリターンを正しく理解することができます。
ソフトバンクグループ債の4%台後半という利率は、金利収入の大きさだけでなく、ダブルBプラスという信用格付けと合わせて見る必要があるのです。
参考
日本経済新聞 2026年8月19日 朝刊 ソフトバンクG、個人向け社債1兆円
日本経済新聞 2026年8月19日 朝刊 個人向け社債 利回り上昇でニーズ増す
金融経済教育推進機構 格付け
S&Pグローバル・レーティング 信用格付け