住宅ローンを組む年齢が高くなれば、60歳以降も返済が続くケースが増えてきます。
例えば40歳で35年の住宅ローンを組めば、契約上の完済年齢は75歳になります。
そこで気になるのが、住宅ローンは定年までに完済した方がよいのかという問題です。
定年までに完済できれば、老後の固定費を大きく減らすことができます。
一方、定年前の完済を優先するあまり、貯蓄や退職金を住宅ローン返済に使い過ぎれば、老後の生活資金が不足する可能性があります。
重要なのは60歳という年齢そのものではありません。
60歳以降の収入と住宅ローン返済額、生活費、貯蓄を合わせて考えることです。
住宅ローンの完済年齢を見る
住宅ローンを考えるときには、借入期間だけではなく完済年齢を確認する必要があります。
例えば45歳で30年の住宅ローンを組めば、完済するのは75歳です。
50歳で25年なら同じく75歳になります。
住宅ローンを組んだ時点では給与収入が十分にあっても、60歳以降も同じ収入が続くとは限りません。
65歳以降に年金生活へ移行すれば、現役時代より収入が減る家庭も多くなります。
そのため、住宅ローンを組む時点から完済年齢まで確認しておくことが重要です。
定年と収入減少は同じとは限らない
以前は60歳で定年を迎え、その後は給与収入が大きく減るという働き方が一般的でした。
しかし、現在は60歳以降も働く人が増えています。
企業によっては再雇用や継続雇用などによって働き続けることができます。
そのため、60歳時点で住宅ローンが残っていることだけを理由に危険と判断する必要はありません。
重要なのは、何歳まで働く予定なのか、その間にどの程度の収入を得られるのかという点です。
住宅ローンの完済年齢と、自分の就労予定を重ねて考える必要があります。
60歳以降の給与水準を確認する
60歳以降も働く予定だから住宅ローン返済は問題ないと考える場合にも注意が必要です。
働き続けても給与水準が現役時代と同じとは限らないからです。
例えば59歳まで月50万円の手取り収入があった人が、60歳以降は月30万円になったとします。
住宅ローン返済額が月12万円なら、59歳までは手取り収入の24%ですが、60歳以降は40%になります。
住宅ローン返済額が変わらなくても、収入が減れば家計に占める負担は大きくなります。
60歳以降については、働くかどうかだけではなく収入がいくらになるかまで確認する必要があります。
年金生活に住宅ローンを持ち込む影響
65歳などから公的年金を受け取り始めた後も住宅ローンが残っている場合には、年金収入から返済を続けることになります。
現役時代には無理のない返済額でも、年金生活では大きな固定費になる可能性があります。
住宅ローン以外にも食費、光熱費、医療費、税金、社会保険料などが必要です。
マンションであれば管理費や修繕積立金もあります。
さらに、高齢になるほど住宅の修繕や医療、介護などでまとまった資金が必要になる可能性があります。
老後の住宅費は住宅ローンだけではないという点が重要です。
金利上昇が老後の返済を重くする
変動金利型住宅ローンを利用している場合には、完済年齢だけでなく金利上昇リスクも考える必要があります。
例えば60歳以降に収入が減少した時期と、住宅ローン金利が上昇する時期が重なる可能性があります。
現役時代なら月2万円の返済増加を吸収できても、年金生活では同じ2万円が大きな負担になることがあります。
そのため、60歳以降も住宅ローンが残る予定なら、現在の金利だけで返済可能性を判断しないことが重要です。
一定程度金利が上昇した場合でも返済できるかを試算しておく必要があります。
定年前の繰上返済という方法がある
60歳以降の住宅ローン負担を減らす方法の1つが繰上返済です。
現役時代に余裕資金があれば、期間短縮型の繰上返済によって完済年齢を早めることができます。
例えば完済予定が70歳だった住宅ローンを、繰上返済によって65歳まで短縮できれば、年金生活に入った後の住宅ローン負担を減らすことができます。
また、返済額軽減型を利用して、60歳以降の毎月返済額を少なくする考え方もあります。
どちらが適しているかは、老後の収入や貯蓄状況によって変わります。
退職金を返済資金として当てにし過ぎない
住宅ローンを組むときに、「残った住宅ローンは退職金で返せばよい」と考えることがあります。
しかし、退職金は住宅ローン返済だけに使うお金ではありません。
老後の生活費や医療費、介護費、住宅修繕費などにも備える必要があります。
退職金で住宅ローンを完済できたとしても、その結果、老後の現金がほとんど残らなければ家計は不安定になります。
退職金による一括返済を予定する場合には、完済後に老後資金がいくら残るのかを確認することが重要です。
定年完済にこだわり過ぎない
住宅ローンは定年までに必ず完済しなければならないわけではありません。
60歳以降も十分な給与収入があり、住宅ローン残高も小さく、手元資金にも余裕があるなら、あえて急いで完済しない選択肢もあります。
低い金利の住宅ローンを返済するために、老後の生活防衛資金まで使う必要はありません。
一方、60歳以降に収入が大きく減る予定で住宅ローン残高も多いなら、現役時代から返済計画を見直す必要があります。
年齢だけで判断するのではなく、住宅ローンと金融資産の両方を見ることが重要です。
60歳と65歳と70歳で家計を試算する
老後まで住宅ローンが続く場合には、年齢ごとに家計を確認すると分かりやすくなります。
60歳時点で住宅ローン残高はいくらなのか。
65歳時点ではいくらなのか。
70歳時点ではいくらなのか。
それぞれの年齢で給与や年金などの収入はいくらになるのか。
住宅ローン返済後に生活費を支払い、さらに貯蓄を残せるのか。
こうした数字を並べることで、定年前にどの程度住宅ローンを減らしておく必要があるのかが見えてきます。
結論
住宅ローンを定年までに完済できれば、60歳以降の固定費を減らすことができ、老後の家計は安定しやすくなります。
しかし、定年までの完済そのものを目的にする必要はありません。
60歳以降も十分な収入があり、住宅ローン残高が小さく、貯蓄にも余裕があるなら、住宅ローンを残したまま返済を続ける選択肢もあります。
反対に、60歳以降に収入が大きく減少する予定なら、現役時代から繰上返済などを利用して住宅ローン負担を減らすことを検討する必要があります。
特に注意したいのは、退職金を住宅ローン完済のために使い切ることです。
住宅ローンがなくなっても、老後の生活には現金が必要です。
重要なのは「定年時に住宅ローンをゼロにすること」ではなく、「60歳以降も住宅ローンを含めた家計が無理なく回る状態を作ること」です。
60歳、65歳、70歳と年齢ごとの収入、住宅ローン残高、貯蓄を確認しながら返済計画を考えることが重要です。
参考
日本経済新聞 2026年9月26日 朝刊 住宅ローン金利上昇に備え 借入額抑制や貯蓄が重要に