中小企業の事業承継というと、自社株を誰に引き継ぐのかという問題に目が向きがちです。
しかし、会社経営に必要な財産がすべて会社名義になっているとは限りません。
参考記事では、会社の事業に使用している社長個人の不動産についても、自社株とともに後継者へ信託できる点が自社株信託の強みとして取り上げられています。
自社株の承継だけを準備していても、会社が使っている土地や建物が相続争いに巻き込まれれば、事業承継に影響する可能性があります。
会社で使っていても社長個人の財産であることがある
中小企業では、会社が事業に使用している不動産を社長個人が所有していることがあります。
会社の事務所や店舗、工場などとして利用していても、土地や建物の所有者は社長個人というケースです。
会社経営の実態から見ると重要な事業用資産ですが、法律上の所有者が社長個人であれば、社長個人の財産として承継の問題を考える必要があります。
この点を見落として自社株だけの対策を進めると、事業承継後に問題が残る可能性があります。
社長が亡くなれば不動産にも承継問題が生じる
社長個人が所有している不動産については、社長が亡くなればその承継を考えなければなりません。
会社が長年利用してきた土地や建物であっても、会社自身が所有しているわけではありません。
そのため、後継者への自社株の承継を準備していても、会社経営に必要な不動産について別の問題が残ることがあります。
参考記事では、会社経営のために用いている社長個人の資産についても、自社株信託の対象とするスキームが考えられると説明されています。
事業承継では、自社株と事業に必要な個人資産を一緒に確認することが重要です。
自社株と不動産が別々の人に渡る可能性がある
たとえば、社長に複数の相続人がいる場合を考えてみましょう。
後継者となる長男に自社株を承継させても、会社が利用している不動産が別の相続人に承継されることがあります。
すると、会社を経営する人と、会社経営に必要な不動産を持つ人が別々になります。
参考記事では、会社経営に必要不可欠な社長個人の財産が相続争いに巻き込まれるリスクについて触れています。
事業を安定して継続するためには、自社株だけではなく、会社が実際に使用している社長個人の財産まで把握しておく必要があります。
自社株とともに不動産を信託できる
参考記事で紹介されている方法の一つが、会社経営に必要な社長個人の不動産を、自社株とともに後継者へ信託する方法です。
民事信託では、自社株だけが信託の対象になるわけではありません。
社長個人が所有している不動産なども対象にすることができます。
参考記事では、自社株信託を締結する際、社長個人の不動産がある場合には、自社株とともに後継者へ信託できる点を自社株信託の強みとして説明しています。
会社経営に関係する財産をまとめて考えられるわけです。
相続争いが会社経営へ波及するリスクを軽減する
家族の相続問題と会社経営は、本来別の問題に見えるかもしれません。
しかし、社長個人の財産を会社が事業に利用している場合には両者がつながっています。
社長個人が所有している事業用不動産をめぐって相続争いが起これば、その影響が会社経営にも及ぶ可能性があります。
参考記事では、会社経営に必要不可欠な社長個人の財産を信託しておくことで、その財産が相続争いに巻き込まれるリスクを軽減できるとしています。
会社の事業継続という観点から相続対策を考えることがポイントです。
事業承継では会社と個人の財産を棚卸しする
この問題から分かるのは、事業承継を考えるときには会社の財産だけを見ていてはいけないということです。
社長個人の財産の中に、会社経営に使用しているものがないかを確認する必要があります。
参考記事が具体的に取り上げているのは、自社株と会社経営に用いている社長個人の不動産などです。
どの財産を誰が所有しているのかを確認し、事業承継後も会社が必要な財産を利用できる状態をどう維持するのかを考えます。
事業承継対策の前提として、会社と社長個人の財産関係を整理することが重要になります。
自社株の後継者と事業用資産の承継を一緒に考える
自社株の承継だけを先に決めてしまうと、事業用資産の承継との間にずれが生じる可能性があります。
そのため、誰を後継者にするのかを考えるときには、その人物が会社経営に必要な財産をどのように利用していくのかについても考える必要があります。
参考記事が示している自社株と社長個人の不動産を一緒に信託するという方法は、こうした問題への一つの対応策です。
株式という経営に関係する財産と、会社が実際に利用する事業用財産を一体として考えることができます。
死亡後だけでなく生前から準備できる
民事信託を利用する意味は、社長が亡くなった後の承継だけにあるわけではありません。
参考記事では、社長が元気なうちは後継者候補を育てながら、認知症などによって判断能力が低下した場合にも備えられるとしています。
さらに、社長が亡くなった後の財産の承継先についても定めることができます。
自社株と事業用不動産について、社長が元気な時期から死亡後までを一連の流れとして考えることができます。
不動産だけで相続問題が解決するわけではない
自社株と不動産を信託すれば、すべての相続問題が解決するわけではありません。
参考記事では、自社株信託をしても、他の相続人の遺留分算定の基礎となる相続財産から当然に除外されるわけではないため、遺留分対策を併せて検討する必要があるとしています。
後継者に会社経営に必要な財産を集中させれば、それだけ他の相続人との調整も重要になります。
事業を継続するための財産承継と、相続人間の問題を同時に考える必要があります。
結論
中小企業の事業承継では、自社株を誰へ承継させるのかが重要です。
しかし、自社株だけ対策すれば事業承継が完成するとは限りません。
会社が使用している土地や建物などを社長個人が所有している場合、その財産についても承継を考える必要があります。
後継者が自社株を引き継いでも、会社経営に必要な不動産が別の相続人に承継されれば、相続問題が会社経営へ影響する可能性があります。
参考記事では、自社株信託を利用する際に、会社経営に必要な社長個人の不動産を自社株とともに後継者へ信託する方法が紹介されています。
事業承継で確認すべきなのは、自社株だけではありません。
会社が事業を続けるために必要な財産は何か、その財産を誰が所有しているのか、そして社長の相続後に誰が承継するのかまで確認することが重要です。
会社の財産と社長個人の財産を一体的に見ながら承継を設計することが、安定した事業承継につながります。
参考
企業実務 2026年9月号 社長の相続対策リスク