預金口座が凍結されたらどうなるのか―遺言代用信託という選択肢(相続準備編)

FP
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身近な人が亡くなったとき、多くの人が最初に直面するのは悲しみだけではありません。葬儀費用の支払いや当面の生活費の確保といった現実的な問題があります。

特に夫婦の生活費を一方の名義口座から支出していた場合、その口座が凍結されることで家族が資金不足に陥ることがあります。

近年、このような問題への対策として注目されているのが「遺言代用信託」です。

今回は、相続発生後の資金確保という視点から、遺言代用信託の仕組みと活用方法について考えてみます。

預金口座はなぜ凍結されるのか

銀行は預金者の死亡を確認すると、その口座を凍結します。

これは相続人の権利を保護するための措置です。勝手な払い戻しや財産の持ち出しを防ぐ目的があります。

しかし、家族にとっては大きな問題になることがあります。

例えば、

・葬儀費用の支払い
・当面の生活費の確保
・公共料金や住宅ローンの支払い

などがすぐに必要になるケースは少なくありません。

相続手続きが完了するまでには数か月かかることもあり、その間の資金繰りに困る家族もいます。

相続制度としては合理的な仕組みですが、残された家族の日常生活には大きな影響を与える可能性があります。

遺言代用信託とは何か

遺言代用信託は、生前に金融機関と契約し、自分の死亡後に指定した受取人へ資金を渡す仕組みです。

契約時に、

・預ける金額
・受取人
・受取方法

を決めておきます。

本人が亡くなると、信託財産として管理されていた資金が受取人へ支払われます。

一般的な相続財産とは区別して管理されるため、通常の預金口座のような凍結の影響を受けにくいことが特徴です。

そのため、葬儀費用や当面の生活費を迅速に確保できます。

一括受取と分割受取

遺言代用信託には主に二つの受取方法があります。

一時金方式

契約者の死亡後、指定した金額をまとめて受け取る方法です。

例えば、

・葬儀費用として200万円
・納骨や法要費用として100万円

など、まとまった支出に備えることができます。

定時定額方式

毎月あるいは定期的に一定額を受け取る方法です。

例えば、

・1,000万円を信託
・毎月10万円ずつ給付

といった設計が可能です。

高齢の配偶者の生活費を支援する仕組みとして利用されることもあります。

生前にも活用できる

遺言代用信託は死亡後だけの制度ではありません。

本人を受取人に指定し、定期的に資金を受け取る契約も可能です。

高齢になると、

・特殊詐欺
・悪質商法
・投資詐欺

などの被害リスクが高まります。

まとまった資金を信託財産として分けて管理しておくことで、一度に大きな金額を失うリスクを抑える効果も期待できます。

認知機能の低下に備える手段の一つとして考えることもできるでしょう。

家族信託との違い

遺言代用信託と比較される制度に家族信託があります。

家族信託は家族に財産管理を任せる仕組みであり、

・預金
・不動産
・株式
・賃貸物件

など幅広い財産を対象にできます。

一方で、

・契約設計が複雑
・専門家への報酬が必要
・初期費用が高額

という特徴があります。

資産の大半が預金であり、家族に当面の資金を残したいという目的であれば、遺言代用信託の方が利用しやすい場合があります。

生命保険との比較

死亡後に家族へ資金を渡す手段としては生命保険も有力です。

生命保険には、

「500万円 × 法定相続人の数」

という相続税の非課税枠があります。

これは遺言代用信託にはない大きなメリットです。

一方で、

・高齢になると加入しにくい
・健康状態による制限がある
・解約時に元本割れする可能性がある

という特徴もあります。

また、生前の定期給付という使い方は難しいため、利用目的によって選択肢が変わります。

利用前に考えておきたいポイント

遺言代用信託は便利な制度ですが、相続全体のバランスを考える必要があります。

特定の相続人だけに多くの資金を渡すと、

・他の相続人との不公平感
・遺留分を巡るトラブル
・相続人間の対立

につながる可能性があります。

制度だけを単独で考えるのではなく、

・遺言書
・生命保険
・家族信託
・生前贈与

なども含めて全体設計を行うことが重要です。

結論

相続対策というと相続税対策に目が向きがちですが、実際には「亡くなった直後の生活資金をどう確保するか」という問題も重要です。

遺言代用信託は、預金口座凍結による資金不足を防ぐ有効な手段の一つです。

特に高齢夫婦世帯や老老介護世帯、一人暮らしの高齢者が増える中で、その重要性は今後さらに高まるでしょう。

相続対策は財産を残すためだけではなく、残された家族が困らないようにするための準備でもあります。

自分の家族にとってどのような形が最適なのか、一度考えてみる価値はあるのではないでしょうか。

参考

・日本経済新聞 2026年5月30日朝刊「ステップアップ 遺言代用信託で家族に金銭 相続財産の『凍結』に備え」

・一般社団法人信託協会 信託に関する各種統計資料

・法務省 相続・遺言制度に関する資料

・国税庁 相続税のあらまし

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