人生100年時代の財産管理は元気なうちに設計する

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人生100年時代の財産管理というと、老後資金をいくら準備すればよいのかという問題に目が向きます。

預金はいくら必要なのか。

年金はいくら受け取れるのか。

資産運用をどう続けるのか。

介護費用はいくら準備するのか。

もちろん、どれも重要です。

しかし長寿化によって、もう一つ考えなければならない問題があります。

自分で財産を管理できなくなった後、その財産を誰が管理するのかという問題です。

100歳まで生きるためのお金を準備していても、認知症によって85歳から自分で管理できなくなれば、その後15年間の財産管理を誰かに任せる必要があります。

人生100年時代の財産設計では、いくら持つかだけではなく、最後までどう使えるようにするかを考える必要があります。

財産があっても使えなければ意味がない

老後資金として3,000万円の預金を準備していたとします。

自宅もあります。

年金も毎月入ってきます。

経済的には十分な準備ができているように見えます。

しかし本人の判断能力が低下すると事情が変わります。

高額な預金を動かす。

自宅を売却する。

証券を売却する。

介護施設と契約する。

こうした行為について本人自身が十分に判断できなくなる可能性があります。

財産の額と、その財産を自由に管理できることは別問題です。

老後資金を準備すると同時に、将来その資金を使える仕組みも準備しておく必要があります。

認知症になった瞬間にすべてできなくなるわけではない

認知症と財産管理を考えるときには、認知症になったら何もできないという理解も避けなければなりません。

認知症の状態は人によって異なります。

日常の買い物はできる。

生活費も自分で管理できる。

しかし複雑な金融商品について判断することは難しい。

不動産売却のような高額な契約は理解しにくい。

このような状態もあります。

重要なのは病名だけで一律に考えるのではなく、本人が何を理解し、何を自分で決められるのかを見ることです。

2026年6月に成立した法定後見制度の改正も、この考え方を強く反映しています。

法定後見制度は必要な部分を支える方向へ変わる

現行の法定後見制度には、後見、保佐、補助の3種類があります。

改正後はこれを補助に一本化します。

そして本人が必要としている支援について、個別に権限を設定する仕組みへ変わります。

さらに家庭裁判所が支援の必要がなくなったと判断すれば、制度を終了できるようになります。

例えば遺産分割についてだけ支援が必要な人なら、その手続きに必要な権限を設定し、終了後にほかの支援が必要なければ制度を終了することが可能になります。

本人ができることまで奪わず、必要な部分を補う方向への転換です。

法定後見だけが認知症対策ではない

認知症対策というと成年後見制度だけを考えがちですが、元気なうちにはほかの選択肢があります。

銀行預金の管理については、金融機関の予約型代理人サービスなどを利用できる場合があります。

将来の財産管理や生活上の法律行為を任せたい人を自分で決めるなら、任意後見を検討できます。

不動産などの財産管理を家族へ任せたい場合には、家族信託が選択肢になることがあります。

重要なのは、どの制度が最も優れているかを決めることではありません。

自分が将来何に困る可能性があるのかを考え、それに合った仕組みを選ぶことです。

預金中心なら複雑な仕組みが必要とは限らない

すべての人が家族信託や任意後見を準備する必要があるわけではありません。

例えば財産の大部分が銀行預金で、自宅を将来売却する予定もなく、家族関係も良好であれば、比較的シンプルな準備で対応できる場合があります。

金融機関の代理人制度を確認する。

銀行口座を整理する。

財産一覧を作る。

家族へ自分の希望を伝える。

こうした準備でも大きな意味があります。

制度を利用すること自体を目的にしてはいけません。

必要以上に複雑な仕組みを作らないことも財産管理では重要です。

不動産がある人は早めに考える

一方、不動産を所有している人は早めの準備が必要です。

特に賃貸不動産を持っている場合、本人が認知症になっても賃貸経営は続きます。

入居者との契約。

修繕。

管理会社とのやり取り。

家賃の管理。

税金の支払い。

将来の売却。

さまざまな判断が必要になります。

自宅についても、介護施設へ入居した後に売却して介護費用へ充てる可能性があります。

不動産は銀行預金のように簡単に動かせないため、本人が元気なうちに将来の管理方法を考えておく意味が大きくなります。

財産一覧がすべての出発点になる

どの制度を利用するか考える前に、自分の財産を把握する必要があります。

銀行口座。

証券口座。

不動産。

生命保険。

借入金。

クレジットカード。

デジタル資産。

毎月の収入と支出。

これらを一覧にします。

本人しか知らない財産を減らすことも重要です。

特にネット銀行やネット証券では紙の通帳や郵便物がないため、家族が口座の存在そのものに気づかない可能性があります。

財産を見えるようにすることが認知症対策の第一歩です。

財産を整理することも重要になる

財産管理対策は、新しい契約を増やすことだけではありません。

むしろ高齢期には減らすことも重要です。

使っていない銀行口座を解約する。

利用していない証券口座を整理する。

不要なクレジットカードを減らす。

定額制サービスを見直す。

重要書類の保管場所をまとめる。

財産管理が複雑であるほど、本人が管理できなくなった後の負担は大きくなります。

資産を増やしてきた現役時代から、資産を管理しやすくする高齢期へ発想を切り替える必要があります。

生命保険も使える状態にしておく

生命保険も同じです。

保険に加入しているだけでは十分ではありません。

本人が認知症になり、自分で給付金を請求できなくなった場合にどうするのかを確認しておく必要があります。

指定代理請求人は誰なのか。

家族は保険の存在を知っているのか。

保険会社や契約内容を確認できる資料はどこにあるのか。

保障を持つことと、必要なときに保障を利用できることは別問題です。

財産管理では、保険についても出口まで考えておく必要があります。

相続税より先に自分の生活費を確保する

高齢になると相続対策への関心も高まります。

生前贈与をする。

不動産を子どもへ移す。

相続税を減らす。

こうした対策が有効な場合もあります。

しかし認知症になってから10年、20年と生活する可能性を考えれば、本人の生活資金を十分に残すことが先です。

介護費用が必要になります。

医療費も必要です。

住居費もかかります。

自分の生活を豊かにするためのお金も必要です。

財産は相続人へ残すためだけのものではありません。

本人が最後まで自分らしく暮らすためのものです。

家族に残す金額より本人が使える金額を見る

相続対策では、亡くなった時点の財産額を考えます。

しかし人生100年時代の財産管理では、その前の長い期間を見る必要があります。

80歳から90歳まで。

90歳から100歳まで。

その間にいくら必要なのか。

誰が管理するのか。

どの財産から使うのか。

自宅をいつ売却するのか。

こうしたことを考えた結果として残った財産が相続財産になります。

相続は財産管理の終着点です。

出発点ではありません。

おひとりさまでは仕組みがさらに重要になる

子どもや配偶者がいない人では、より早い準備が重要になります。

家族がいれば、本人の変化に気づいて制度を調べてくれる可能性があります。

おひとりさまでは、それを当然には期待できません。

誰に相談するのか。

誰に財産管理を任せるのか。

認知症の兆候に誰が気づくのか。

介護施設へ入るとき誰が支援するのか。

元気なうちに支援の仕組みを作っておく必要があります。

頼れる家族がいなくても、頼れる仕組みを準備することはできます。

元気なうちだから自分で決められる

認知症対策には決定的な時間があります。

本人が自分で判断できる期間です。

この時期なら、自分で代理人を選ぶことができます。

任意後見人を決めることもできます。

家族信託の内容を考えることもできます。

自宅を将来どうしたいのか家族へ伝えることもできます。

どの財産を残し、どの財産を自分の生活に使いたいのかも決められます。

判断能力が低下してからでは、家族や家庭裁判所などが本人の利益を考えながら対応することになります。

自分で選択できること自体が、元気な時期にしか持てない大きな権利なのです。

2028年を待つ必要はない

改正された法定後見制度は2028年12月までに施行される予定です。

新制度では、現在より柔軟な支援が期待されています。

しかし認知症への準備を2028年まで待つ必要はありません。

制度の施行時期は分かっていても、自分の判断能力がいつ低下するかは分からないからです。

現在すでに支援が必要なら、現在利用できる制度を検討する。

まだ元気なら、今だからできる準備を進める。

制度改正を待つことと、自分の準備を先送りすることは分けて考える必要があります。

人生100年時代では財産管理も設計する

これまでの老後設計では、老後資金を準備することが中心でした。

これからは、それだけでは足りません。

財産を準備する。

財産を整理する。

自分で管理できなくなった場合の管理者を決める。

必要なときに財産を使える仕組みを作る。

本人の希望を家族や支援者へ伝える。

そして最後に残った財産を次の世代へ承継する。

ここまでを一つの流れとして考える必要があります。

財産形成から財産管理、そして財産承継までを設計する時代になっているのです。

結論

人生100年時代の財産管理で最も重要なのは、財産をたくさん持つことだけではありません。

自分で管理できなくなった後も、その財産を自分のために使える状態を作っておくことです。

銀行預金。

証券。

不動産。

生命保険。

どれだけ財産があっても、必要なときに適切に管理できなければ本人の生活を十分に支えることができません。

法定後見。

任意後見。

家族信託。

金融機関の代理人制度。

それぞれに役割があります。

重要なのは、制度から考え始めないことです。

自分はどこで暮らしたいのか。

誰に支援してもらいたいのか。

自宅をどうしたいのか。

財産を何のために使いたいのか。

まず自分の人生を考え、その実現に必要な仕組みを選びます。

認知症になってから財産管理を考えるのではありません。

元気なうちに、認知症になった後の財産管理まで設計しておく。

人生100年時代に必要なのは、老後資金の準備からもう一歩進んだ、自分の人生を最後まで支える財産管理なのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 2026年9月30日夕刊 マネー相談 黄金堂パーラー 認知症と財産管理 上 変わる法定後見 必要なとき利用 解任も可能

日本経済新聞 2026年9月30日夕刊 改正法待たず早めに準備を

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