仕事を任せるとき、会社はどうしても「その人にできるか」を重視します。
知識がある。経験がある。過去に成果を上げている。
もちろん、能力を確認することは重要です。しかし、能力と特性が仕事に合っているだけでは、長期的な活躍につながらない場合があります。
もう一つ確認したいのが、本人の「意欲」です。
参考記事では、適材適所を考える基本的な視点として、能力、特性と並んで意欲が挙げられています。
意欲とは何か
人材配置における意欲とは、単純に「やる気があるか」という話ではありません。
参考記事では、本人がどのような仕事に関心を持っているのか、どのような役割にやりがいを感じるのか、今後どのような方向へ成長したいと考えているのかという視点で説明されています。
つまり、
何をやりたいのか
何に価値を感じるのか
どの方向へ成長したいのか
を見ることです。
上司から見て一生懸命働いているかどうかだけで判断するものではありません。
能力があっても意欲がなければ続きにくい
ある仕事を十分にこなせる能力を持っている人がいるとします。
会社から見れば、その仕事を引き続き任せることが合理的に思えます。
しかし、本人がその仕事に関心を失っていたらどうでしょうか。
短期間であれば、能力によって一定の成果を出せるかもしれません。
ところが、それを何年も続けるとなれば話は変わります。
参考記事でも、能力や特性が職務に合っていても、意欲が伴わなければ長期的な活躍にはつながりにくいとされています。
「できる仕事」と「続けたい仕事」は必ずしも同じではないのです。
得意だから任せ続けることにも注意する
会社では、ある仕事が得意な人に同じ仕事が集まりやすくなります。
資料作成が上手な人には資料作成。
顧客対応が上手な人には顧客対応。
トラブル処理が得意な人には難しい案件。
本人が成果を出せば、さらに仕事が集まります。
会社にとっては効率的です。
しかし、本人がその仕事を今後も続けたいとは限りません。
本人は新しい仕事に挑戦したいと考えているかもしれませんし、別の専門性を身につけたいと考えているかもしれません。
能力だけを見て配置すると、「できるから任せる」が繰り返され、本人の将来の希望とのずれが大きくなる可能性があります。
やりたい仕事と向いている仕事も同じではない
反対に、意欲だけで配置を決めればよいわけでもありません。
本人がやりたい仕事と、実際に力を発揮できる仕事が一致するとは限らないからです。
参考記事では、本人が営業を希望していても、実際には顧客対応より資料作成や業務改善で力を発揮する場合があると説明されています。
反対に、自信がないため本人は希望していないものの、実際には高い適性を持っている仕事もあります。
したがって、
やりたいから任せる
という判断だけでも適材適所にはなりません。
能力と特性と意欲を組み合わせる
そこで重要になるのが、能力、特性、意欲を組み合わせて考えることです。
能力は「何ができるか」です。
特性は「どのように力を発揮するか」です。
意欲は「どのような仕事や役割に関心を持ち、どの方向へ成長したいか」です。
例えば、営業能力が高く、人との関係を築くことも得意な従業員がいたとします。
能力と特性だけを見れば、営業を続けてもらうことが最適に見えます。
しかし本人が、将来は営業経験を生かして後輩の育成をしたいと考えているかもしれません。
そうであれば、いきなり仕事を変える必要はなくても、後輩指導を少しずつ任せるという育成方法が考えられます。
意欲を見ることで、現在の配置だけでなく将来の配置まで考えられるようになります。
意欲は本人との対話で確認する
意欲は外から見ただけでは分かりにくいものです。
仕事を黙々とこなしているからといって、その仕事を続けたいとは限りません。
反対に、不慣れな仕事で現在は成果が出ていなくても、本人には強い成長意欲があるかもしれません。
参考記事では、人材配置を考える際、管理職の評価だけでなく本人の自己認識も確認することが重要だとされています。
本人が自分の強みをどう考えているのか。
どの仕事に負担を感じているのか。
今後どの方向へ成長したいのか。
こうしたことを面談などで確認する必要があります。
意欲は変化する
さらに注意したいのは、意欲は固定されたものではないことです。
入社したときにやりたかった仕事と、十年後にやりたい仕事が同じとは限りません。
経験を積めば、新しい分野に興味を持つこともあります。
家庭環境や働き方が変われば、仕事に求めるものも変化します。
会社側の事業や組織も変わります。
そのため、一度本人の希望を聞いて終わりにするのではなく、定期的な対話によって確認することが重要です。
意欲を育成につなげる
意欲を見る最大の意味は、本人の希望をそのまま受け入れることではありません。
育成につなげることです。
参考記事では、意欲は高いものの経験が不足している場合、教育担当者の支援を受けながら段階的に挑戦させる方法が示されています。
これは重要な考え方です。
今はできない。
しかし、やってみたい。
そのような人に対して、「経験がないから任せられない」で終われば、いつまでも経験を積むことはできません。
小さな仕事から任せる。
上司や先輩が支援する。
経験を積ませる。
成果を確認する。
そして、少しずつ役割を広げる。
意欲を育成と結びつけることで、将来の適材適所をつくることができます。
結論
人材配置では、能力だけを見てはいけません。
どれだけ能力が高く、その仕事に適した特性を持っていても、本人の意欲が伴わなければ長期的な活躍につながりにくいからです。
一方で、本人が希望する仕事をそのまま任せればよいわけでもありません。
大切なのは、能力、特性、意欲を組み合わせて考えることです。
何ができるのか。
どのように力を発揮するのか。
そして、これから何をしたいのか。
この三つを確認し、会社が必要としている役割とすり合わせていく。
適材適所とは現在できる仕事を割り振るだけではありません。
本人の意欲を育成につなげ、将来さらに力を発揮できる場所をつくっていくことまで含めて考えることが重要なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 中小企業の適材適所の測り方