二地域居住の費用と家計管理 住宅を2つ持つ暮らしは本当に実現できるのか

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都市部と地方の双方に生活拠点を持つ二地域居住が、新しい暮らし方として注目されています。

平日は都市部で働き、週末は地方で自然に囲まれた生活を楽しむ。定年退職後は都市部の自宅を残しながら、地方で農業や趣味、地域活動に取り組む。こうした生活に魅力を感じる人は少なくないでしょう。

しかし、二地域居住を実現するためには、経済的な負担を慎重に検討する必要があります。

住宅を2つ持つということは、住居費だけでなく、光熱費、通信費、交通費、固定資産税、修繕費なども二重に発生する可能性があるからです。

特に、定年退職後に給与収入が減少する場合には、現役時代と同じ感覚で支出を続けることは難しくなります。

一方、住宅を購入せずに賃貸や短期滞在を活用すれば、比較的少ない費用で二地域居住を始めることも可能です。

今回は、二地域居住に必要な費用を具体的なモデルケースで試算しながら、住宅購入と賃貸の比較、年金生活との関係、老後資金への影響、無理のない家計管理の方法について考えます。

二地域居住では生活費がどのように増えるのか

二地域居住の費用を考える際には、通常の生活費と追加的に発生する費用を分けて考える必要があります。

例えば、東京に自宅を所有している会社員が、地方にも住宅を持つ場合です。

東京の住宅では、固定資産税、管理費、修繕費、光熱費などが引き続き発生します。

地方の住宅でも、同様の費用が必要になります。

さらに、都市部と地方を往復する交通費が発生します。

自家用車を利用する場合には、高速道路料金、ガソリン代、駐車場代などが必要です。

新幹線や航空機を利用する場合には、運賃が大きな負担になることもあります。

また、地方の住宅を長期間利用しない場合でも、基本料金を含む光熱費や通信費が発生する場合があります。

つまり、二地域居住の費用は、単純に住宅費が2倍になるというものではありません。

従来の生活費に、地方の住宅を維持するための固定費と移動費が追加される構造になります。

家計管理では、この追加費用を正確に把握することが重要です。

二地域居住の年間費用を具体的に試算する

ここで、都市部に自宅を所有する夫婦が、地方に月額6万円の住宅を借りて二地域居住を行うケースを考えます。

地方には月に2回程度訪れ、年間を通じて利用するものとします。

以下は制度上の標準額ではなく、家計への影響を考えるための仮定に基づく試算です。

地方の住宅の家賃は月額6万円で、年間72万円です。

光熱費を月額8,000円とすると、年間9万6,000円になります。

インターネットなどの通信費を月額5,000円とすれば、年間6万円です。

交通費は夫婦2人で1往復2万円、年間24往復と仮定すると48万円になります。

さらに、生活用品の購入や住宅管理に年間10万円、その他の予備費として年間10万円を見込みます。

これらを合計すると、年間の追加支出は155万6,000円になります。

月額に換算すると約13万円です。

なお、実際には賃貸契約時の敷金や礼金、家具・家電の購入費用など、初年度に追加費用が発生する可能性があります。

また、地方で食事をする費用の一部は、都市部で生活していても発生する支出です。

そのため、家計全体への影響を正確に把握するには、二地域居住によって新たに増える支出と、従来の支出から置き換わる部分を区別する必要があります。

それでも、年間150万円程度の追加支出が生じる可能性があることは、二地域居住を検討するうえで重要な判断材料になります。

住宅を購入すると費用は安くなるのか

二地域居住では、地方の住宅を購入するという選択肢もあります。

例えば、地方の中古住宅を500万円で購入し、改修費用として300万円を支出するケースを考えます。

購入と改修の合計は800万円です。

さらに、不動産取得税、登記費用、仲介手数料などの諸費用として50万円を見込みます。

初期費用は合計850万円になります。

購入後の年間維持費として、固定資産税、保険料、修繕費、光熱費、通信費などを合計30万円と仮定します。

交通費が年間48万円、その他の追加費用が年間20万円であれば、年間支出は98万円になります。

この場合、10年間の単純な現金支出は、初期費用850万円と年間98万円の10年分を合わせて1,830万円です。

一方、先ほどの賃貸モデルでは、年間155万6,000円の10年分で1,556万円になります。

賃貸の初期費用を除いた単純比較では、購入の方が274万円多くなります。

ただし、購入した住宅には10年後も資産価値が残る可能性があります。

仮に10年後に住宅を500万円で売却でき、売却費用を考慮しないとすれば、購入による実質的な現金負担は1,330万円となります。

この場合は購入の方が有利になります。

しかし、地方の住宅が必ず500万円で売却できる保証はありません。

人口減少が進む地域では、売却までに長期間かかることや、買い手が見つからない可能性もあります。

購入と賃貸の比較では、住宅の残存価値と売却可能性が重要な判断要素になるのです。

二地域居住の最大の負担は交通費になることもある

二地域居住では、住宅費だけでなく交通費にも注意が必要です。

例えば、都市部から地方まで自家用車で往復する場合を考えます。

1往復の高速道路料金とガソリン代が合計1万5,000円かかると仮定します。

月2回往復すれば年間24往復となり、交通費は36万円です。

月4回往復すれば年間48往復となり、72万円になります。

移動頻度が2倍になれば、交通費もおおむね2倍になります。

さらに、自動車の維持費や車両の減価償却に相当する負担も考慮する必要があります。

一方、新幹線や航空機を利用する場合には、移動時間を短縮できるものの、家族の人数によって交通費が大きく増加する可能性があります。

例えば、夫婦2人の往復交通費が3万円で、月2回移動する場合には年間72万円になります。

10年間では720万円です。

二地域居住を長期間続ける場合、交通費の累積額は無視できません。

住宅価格が安い地域であっても、都市部から遠ければ、移動費用によって総支出が大きくなる場合があります。

二地域居住の候補地を選ぶ際には、住宅価格だけでなく、移動時間と交通費を合わせて比較することが重要です。

二地域居住の費用は滞在日数によって変わる

二地域居住では、地方での滞在日数も費用に影響します。

例えば、月に2泊3日だけ地方で過ごす場合と、月の半分を地方で過ごす場合では、住宅の利用効率が大きく異なります。

地方の住宅の家賃が月額6万円であれば、年間72万円です。

年間24泊しか利用しなければ、家賃だけで1泊当たり3万円になります。

一方、年間120泊利用すれば、家賃の1泊当たり負担は6,000円です。

この計算には光熱費や交通費などを含めていませんが、住宅の利用頻度によって費用効率が大きく変わることが分かります。

短期間の滞在が中心であれば、ホテルや民泊、短期賃貸住宅を利用する方が経済的な場合があります。

反対に、年間の滞在日数が多くなれば、専用の住宅を確保するメリットが高まる可能性があります。

ただし、ホテルには清掃や設備管理を自分で行う必要がないという利点があります。

住宅を所有または賃借する場合には、利用していない期間の管理負担も発生します。

単純な宿泊単価だけでなく、利便性や管理負担も含めて判断する必要があります。

年金生活で二地域居住は実現できるのか

定年退職後に二地域居住を始めたいと考える人もいるでしょう。

しかし、年金生活では現役時代よりも収入が減少するケースが一般的です。

例えば、夫婦の公的年金収入が年間300万円であるケースを考えます。

税金や社会保険料を差し引いた可処分所得は、年齢や世帯構成などによって異なりますが、ここでは仮に年間270万円とします。

都市部での基本生活費が年間240万円であれば、残る資金は30万円です。

この状態で二地域居住に年間150万円の追加費用が発生すれば、年間120万円の資金不足になります。

不足分を預貯金から取り崩す場合、10年間では1,200万円になります。

20年間では2,400万円です。

もちろん、実際には物価上昇、医療費、介護費、住宅修繕費なども考慮する必要があります。

年金生活で二地域居住を実現するためには、年金収入だけで生活費を賄えるかどうかではなく、老後資金をどの程度取り崩すことになるのかを把握することが重要です。

老後資金の取り崩し額を考える

二地域居住の費用を老後資金との関係で考えてみます。

例えば、65歳時点で金融資産が3,000万円ある夫婦を想定します。

二地域居住を行わない場合には、年金収入と生活費がおおむね均衡し、金融資産を大きく取り崩さずに生活できると仮定します。

一方、二地域居住によって年間120万円の追加的な資金不足が発生する場合です。

単純計算では、10年間で1,200万円、15年間で1,800万円、20年間で2,400万円を取り崩すことになります。

65歳から85歳まで続ければ、当初の金融資産3,000万円のうち、2,400万円を二地域居住に充てる計算です。

ただし、この試算は運用収益、物価上昇、税負担の変化などを考慮していません。

また、高齢になるほど医療費や介護費が増える可能性があります。

そのため、老後資金のすべてを二地域居住に充てることは適切ではありません。

生活費の予備資金、住宅修繕費、医療費、介護費などを別途確保したうえで、二地域居住に使える金額を決めることが重要です。

二地域居住は生活を豊かにするための手段であり、老後の生活基盤を不安定にしてまで実現するものではありません。

60代と70代では費用の考え方が変わる

二地域居住の費用は、年齢によっても考え方が変わります。

60代では、仕事を続けながら二地域居住を楽しむ人もいるでしょう。

給与収入がある場合には、住宅費や交通費を比較的負担しやすい可能性があります。

また、健康状態が良好であれば、自家用車を利用して頻繁に移動することもできます。

しかし、70代になると、働き方や健康状態が変化する可能性があります。

給与収入が減少し、年金中心の生活に移行する場合には、固定費の負担が重くなります。

さらに、運転への不安が生じれば、公共交通機関を利用しやすい地域への変更が必要になるかもしれません。

80代以降では、医療や介護の必要性が高まる可能性があります。

地方の住宅を利用する頻度が減少しても、所有している限り固定資産税や管理費などの支出は続きます。

したがって、二地域居住を始める際には、現在の収入や健康状態だけでなく、10年後、20年後の生活も想定する必要があります。

二地域居住と医療費や介護費の関係

二地域居住では、医療や介護に関する費用も考慮する必要があります。

公的医療保険は、原則として全国の保険医療機関で利用できます。

そのため、住民票のある自治体とは異なる地域で医療機関を受診することも可能です。

ただし、かかりつけ医との関係や診療情報の共有、継続的な治療が必要な場合の対応などには注意が必要です。

また、介護保険制度では、原則として住民票のある市区町村が保険者となります。

二地域居住を行っている場合、滞在先で介護サービスを利用する際の手続きやサービス提供体制を確認する必要があります。

特に高齢期には、地方の住宅が医療機関や介護サービス事業所から遠い場合、移動費用や家族の負担が増える可能性があります。

住宅価格や自然環境だけでなく、医療と介護の利便性を考慮することが重要です。

二地域居住を無理なく続けるための家計管理

二地域居住を長期間続けるためには、家計管理の仕組みを整えることが欠かせません。

まず、都市部の生活費と地方の生活費を分けて把握することが重要です。

地方の住宅に関する家賃、固定資産税、光熱費、通信費、交通費などを独立した項目として管理します。

次に、年間の利用日数を記録します。

年間費用を滞在日数で割れば、1泊当たりの費用を把握できます。

また、当初の予算と実際の支出を比較し、費用が想定を上回っていないか確認することも必要です。

例えば、年間予算を120万円と設定したにもかかわらず、実際には160万円かかった場合には、移動頻度や住宅費などを見直します。

さらに、住宅を購入する場合には、将来の大規模修繕費用を見込んで資金を積み立てることが望ましいでしょう。

二地域居住を特別な支出として扱うのではなく、家計全体の中で継続的に管理することが重要です。

最初から住宅を購入しない選択肢

二地域居住を始める際には、最初から住宅を購入する必要はありません。

むしろ、生活環境が自分に合うかどうかを確認するため、段階的に始める方法が合理的です。

例えば、最初の1年間は月に1回程度、ホテルや短期滞在施設を利用します。

その後、地域との相性が良ければ、月単位の賃貸住宅などを利用して滞在期間を延ばします。

さらに、数年間の生活経験を踏まえ、長期的に利用したいと判断した場合に住宅購入を検討します。

この方法であれば、初期費用を抑えながら、地域の気候、交通、買い物、医療、住民との関係などを確認できます。

特に地方では、夏は快適でも冬の寒さが厳しい地域があります。

観光で訪れたときには気づかなかった生活上の不便が、長期間滞在することで明らかになる場合もあります。

住宅購入は大きな資金負担を伴うため、生活環境を十分に確認してから判断することが重要です。

二地域居住の費用を生活の価値と比較する

二地域居住の判断では、費用だけでなく、得られる価値も考える必要があります。

例えば、地方で自然に触れる時間が増えれば、趣味や健康づくりの機会が広がる可能性があります。

地域住民との交流を通じて、新しい人間関係が生まれることもあります。

また、都市部では経験できない農業や地域活動に参加することで、退職後の生きがいにつながる場合もあります。

一方、移動による疲労や住宅管理の負担が大きくなれば、期待したほど生活の満足度が高まらない可能性もあります。

重要なのは、支出額の大きさだけで二地域居住の価値を判断しないことです。

例えば、年間150万円を二地域居住に使う場合、その資金を旅行、趣味、健康づくりなどに使う選択肢もあります。

どの使い方が最も生活の満足度を高めるかは、個人の価値観によって異なります。

二地域居住は、住宅を2つ持つこと自体が目的ではありません。

自分にとって望ましい生活を実現するための手段として考えることが重要です。

結論

二地域居住は、都市部と地方の双方の魅力を享受できる新しい暮らし方です。

しかし、住宅を2つ持つ生活には、想像以上の費用がかかる可能性があります。

住宅費、光熱費、通信費、交通費、固定資産税、修繕費などを合計すると、年間100万円を超える追加支出が発生するケースも考えられます。

特に交通費は、移動頻度や距離によって大きく変動します。

また、住宅を購入する場合には、取得費用だけでなく、将来の修繕費や売却可能性も考慮する必要があります。

定年退職後に二地域居住を始める場合には、年金収入と生活費のバランスが重要になります。

現役時代には無理なく負担できた費用でも、年金生活に移行すると老後資金の取り崩しにつながる可能性があります。

そのため、二地域居住を始める前には、年間費用と長期的な資金計画を具体的に試算することが必要です。

さらに、60代、70代、80代と年齢を重ねるなかで、生活拠点の使い方が変わることも想定しておくべきでしょう。

二地域居住を無理なく実現するためには、最初から住宅を購入するのではなく、短期滞在や賃貸住宅を活用して段階的に始める方法が有効です。

人生100年時代において、二地域居住は生活の選択肢を広げる可能性を持っています。

しかし、重要なのは住宅を2つ所有することではなく、経済的な安心を維持しながら、自分らしい暮らしを実現することです。

二地域居住を一時的な憧れで終わらせず、長期間続けられる生活スタイルにするためには、家計管理と老後資金計画の両面から慎重に検討することが求められます。

参考

日本経済新聞 2026年10月掲載 データで読む地域再生「二地域居住」気軽に地方体験、推進自治体は3割増 担い手不足も解消

日本経済新聞 2026年10月掲載 データで読む地域再生 関東・山梨「関東・山梨の二地域居住、都市との近さ武器 山村留学やお試し滞在」

国土交通省 二地域居住等の促進に関する制度資料

総務省 2024年4月30日公表 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計結果

総務省統計局 家計調査年報

厚生労働省 公的年金制度の概要

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