リモートワーク制度を導入している会社と聞くと、社員の多くが毎日のように自宅で働いている姿を想像するかもしれません。
しかし、リモートワークができる制度があることと、実際に社員がどの程度リモートワークをしているかは別の問題です。
カオナビでは、出社勤務に加えて、自宅または許可された就業スペースでリモート勤務を選択できるハイブリッド勤務を導入しています。
元記事では、全社員のリモートワーク率は78.7%で、5人に4人近くがリモートワークを行っていると紹介されています。
一方で、同社はリモートワークだけを理想的な働き方としているわけではありません。
対面だからこそ得られる価値も考えながら、出社とリモートワークを組み合わせています。
リモートワーク率とは何か
リモートワーク率を考えるときに重要なのは、制度の有無と実際の利用状況を分けることです。
会社がリモートワーク制度を導入していても、社員全員が毎日在宅勤務をするとは限りません。
ある日は自宅で働き、別の日は会社へ出社する社員もいます。
カオナビでは、ハイブリッド勤務として、出社勤務に加えて自宅または許可された就業スペースでのリモート勤務を選択できる仕組みを設けています。
つまり、出社とリモートのどちらか一方に固定するのではなく、働き方を選択できるようにしています。
元記事で示されている78.7%という数字も、こうした柔軟な働き方が実際に広く利用されていることを示す数字として紹介されています。
ただし、元記事では、このリモートワーク率の具体的な算出方法までは説明されていません。
そのため、78.7%という数字について、出勤日数に占めるリモート勤務日の割合などと決めつけて考えるのではなく、元記事の表現どおり、同社におけるリモートワークの利用状況を示す数字として捉えるのが適切です。
利用者割合とは何が違うのか
リモートワークを考えるときには、何を基準にした数字なのかを確認する必要があります。
たとえば、リモートワークを一度でも利用したことがある社員の割合と、実際の勤務に占めるリモートワークの割合では意味が違います。
100人の社員がいる会社を考えてみます。
80人が月に一度だけリモートワークを利用している会社と、80人がほぼ毎日リモートワークをしている会社では、職場の実態は大きく異なります。
どちらもリモートワークを利用している社員は80人ですが、リモートワークへの依存度は同じではありません。
そのため、リモートワークに関する数字を見る場合には、単純に何%という数字だけを見るのではなく、その数字が何を表しているのかを確認する必要があります。
特に企業同士を比較する場合には、算出方法が違えば数字だけを単純に比較することはできません。
制度があっても毎日在宅勤務する必要はない
リモートワーク制度というと、出社しないための制度と考えがちです。
しかし、ハイブリッド勤務では考え方が異なります。
出社かリモートかを固定するのではなく、必要に応じて選択します。
一人で集中して行う仕事であれば、自宅の方が効率的なことがあります。
通勤時間をなくすことで、その時間を生活や仕事に利用することもできます。
一方、同僚と直接話し合いたい場合には、出社することにも意味があります。
重要なのは、リモートワーク制度があるからリモートワークをするという発想ではありません。
仕事や社員の状況に合わせて、働く場所を選ぶという考え方です。
出社とリモートを使い分ける
元記事では、カオナビの社員間のコミュニケーションについて、主にチャットアプリでのやり取りが中心になっていると紹介されています。
社員は、自分が現在仕事を抜けていることや、休暇の取得予定日などについても自発的に発信しています。
社員が同じ場所で同じ時間に働かなくなると、こうした情報共有が重要になります。
隣の席を見れば相手がいるという働き方ではないからです。
一方、すべてのコミュニケーションをオンラインに置き換えればよいわけでもありません。
元記事では、オフラインだからこそ共有できる熱量や対面の価値も重視していることが紹介されています。
リモートワークにはリモートワークの強みがあり、出社には出社の強みがあります。
両者を競わせるのではなく、使い分けることがハイブリッド勤務のポイントになります。
出社率との関係を考える
リモートワークを増やせば、当然ながら会社へ出社する機会は少なくなります。
そこで問題になるのが、どの程度の出社が適切なのかということです。
元記事では、カオナビにとっての課題の一つとして出社率が取り上げられています。
しかし、出社率を単純に引き上げればよい、あるいは引き下げればよいという考え方ではありません。
同社では、リモートワークはパフォーマンス最大化のための手段に過ぎないと考えています。
ここが重要です。
リモートワークそのものが目的になってしまうと、リモートワーク率が高いほどよいという考え方になりかねません。
反対に、対面コミュニケーションを重視するあまり、出社率を高めること自体が目的になる可能性もあります。
どちらも本来の目的とは違います。
適正な出社率を考える意味
会社にとって本当に重要なのは、社員がどこで働いているかではなく、組織として高いパフォーマンスを発揮できているかどうかです。
元記事では、カオナビがオフラインで共有できる熱量や対面の価値を重視しながら、現在の出社率が組織にとって最適なのかを常に問い直していきたいとしています。
つまり、最適な出社率について固定した答えを持っているわけではありません。
会社の状況が変われば、適切な働き方も変わる可能性があります。
同社は急成長段階にあり、元記事では、この1年間で社員数が約100人増加したことも紹介されています。
組織の人数や仕事の進め方が変化すれば、社員同士に必要なコミュニケーションも変わります。
過去に最適だった出社とリモートの割合が、現在も最適とは限りません。
制度を導入した後も働き方を見直していくことが必要になります。
リモートワークは目的ではなく手段
リモートワークについて議論するときには、どうしても出社と在宅勤務のどちらが優れているのかという話になりがちです。
しかし、元記事で示されている考え方は、どちらか一方を正解にするものではありません。
リモートワークは社員のパフォーマンスを最大化するための手段です。
出社も同じです。
一人で集中して仕事をするときにはリモートワークが適しているかもしれません。
直接顔を合わせることに意味がある場面では出社が適しているかもしれません。
働く場所を先に決めるのではなく、仕事の目的から働く場所を考えることが重要になります。
その意味では、リモートワーク率は高ければ高いほどよいという数字ではありません。
会社がどのような働き方をしているのかを考える材料の一つとして見る必要があります。
柔軟な働き方は採用にも影響する
元記事では、My Work Styleによる働き方の環境整備は、生産性向上だけでなく、人材確保という採用面にも恩恵をもたらしていると考えられています。
毎日の出社を前提にすると、働ける人の範囲は限定されます。
一方、リモートワークという選択肢があれば、生活との両立がしやすくなる人もいます。
働く場所を選択できること自体が、社員にとって会社を選ぶ条件の一つになるわけです。
ただし、ここでも完全リモートにすることが目的ではありません。
出社とリモートの双方を選択できる環境を整え、社員が自分に合った働き方を選べるようにすることに意味があります。
結論
リモートワーク率を考えるときには、会社にリモートワーク制度があることと、実際に社員がどの程度利用しているかを分けて考える必要があります。
また、リモートワークを利用している社員の割合と、勤務全体に占めるリモートワークの割合も同じ意味ではありません。
元記事では、カオナビの全社員のリモートワーク率は78.7%で、5人に4人近くがリモートワークを行っていると紹介されています。
一方、同社はリモートワーク率を高くすること自体を目的にはしていません。
リモートワークはパフォーマンスを最大化するための手段であり、オフラインだからこそ共有できる熱量や対面の価値もあります。
だからこそ重要なのは、出社とリモートのどちらが正しいかを決めることではありません。
会社の状況や仕事の内容に合わせて、両者をどのように組み合わせれば組織として最も高いパフォーマンスを発揮できるのかを考えることです。
リモートワーク率は、その最適な働き方を考えるための一つの材料だといえるでしょう。
参考
企業実務 2026年9月号 場所と時間に縛られない働き方で生産性向上を目指す