一般的に、金利上昇はビットコインにとって逆風と考えられます。
ビットコインそのものから利息が発生するわけではありません。国債などから高い利回りを得られるようになれば、金利を生まない資産を保有する機会費用は大きくなります。
さらに、金利上昇は金融市場から投機的な資金を減少させる方向にも働きます。
ところが足元では、米国の長期金利が高止まりするなかでもビットコイン価格が大きく上昇しました。
なぜ逆風の中でも価格が上昇するのでしょうか。
高金利は基本的には逆風
まず基本的な仕組みを確認しておきます。
金利が低いときには、預金や国債から得られる利回りも低くなります。
投資家はより高い収益を求めて、株式や暗号資産など値動きの大きな資産へ資金を振り向けやすくなります。
一方、国債で高い利回りを得られるようになると状況は変わります。
価格変動リスクを取らなくても一定の利回りを期待できるため、リスク資産の相対的な魅力は低下します。
この意味で、金利上昇はビットコインにとって基本的には逆風です。
金利だけで価格は決まらない
それでもビットコインが上昇するのは、価格を決める要因が金利だけではないからです。
金融市場では複数の材料が同時に存在します。
金利上昇という売り材料があっても、それ以上に強い買い材料があれば価格は上昇します。
反対に金利が低下しても、規制強化や大規模な資金流出などが起こればビットコイン価格が下落することがあります。
重要なのは、金利が上がったか下がったかだけではありません。
その時点でどの材料が市場を最も強く動かしているかを見る必要があります。
売られ過ぎからの反発
今回のビットコイン上昇を考えるうえで重要なのが、それ以前の価格水準です。
元の記事によると、ビットコインは6月から8月中旬ごろまで6万ドル台で推移していました。
2025年10月につけた12万6,000ドル台の最高値のおよそ半値です。
市場では売られ過ぎとの見方もありました。
つまり、金利上昇という悪材料が存在していても、それが既に価格へ相当程度織り込まれていた可能性があります。
そこへ新しい買い材料が加われば、価格は大きく反発することがあります。
相場では材料そのものだけでなく、その材料がどこまで現在の価格に反映されているかが重要なのです。
ETFへの資金流入という新しい需要
今回の上昇を支えた大きな要因がETFです。
元の記事では、ビットコイン関連ETFへの週間純流入額が9月27日までの1週間で約24億ドルに達しました。
ETFを通じて機関投資家などの資金が流入すれば、ビットコインへの新しい需要が生まれます。
一方、ビットコインは需要が増えたからといって供給量を自由に増やせる資産ではありません。
供給に制約があるところへ大きな資金が入れば、価格に上昇圧力がかかります。
高金利という逆風より、ETFを通じた資金流入という追い風の方が強ければ、ビットコイン価格は上昇することになります。
規制整備が買い材料になる理由
暗号資産にとって規制は必ずしも悪材料ではありません。
規制強化と聞けば、投資家にとってマイナスに思えるかもしれません。
しかし、金融機関や機関投資家にとっては、ルールが曖昧な市場に大規模な資金を投入することが難しいという問題があります。
どのような規制が適用されるのか。
誰が監督するのか。
どの資産がどの法律の対象になるのか。
こうした点が明確になれば、参入しやすくなる金融機関もあります。
そのため規制整備への期待が、機関投資家の参入期待を通じてビットコイン価格の追い風になることがあります。
ディベースメント取引も影響する
高金利の背景によってもビットコインへの影響は変わります。
例えば景気が強く、経済成長を背景として金利が上昇しているのであれば、ビットコインには純粋な逆風になりやすいでしょう。
しかし、政府債務の増加や国債供給への懸念によって長期金利が上昇している場合には、別の動きが起こる可能性があります。
財政への不安から法定通貨の長期的な価値を警戒する投資家が、金やビットコインへ資金を移すことがあるからです。
これがディベースメント取引です。
金利上昇がビットコインに逆風となる一方、その金利上昇の背景にある財政不安がビットコインへの買い材料になるという複雑な状況も起こり得ます。
金との違いが鮮明になった
今回の相場では金とビットコインの違いも表れました。
どちらも金利を生まない資産です。
そのため、本来であれば高金利は双方に逆風になります。
ところが金は高金利の影響を強く受けて下落した一方、ビットコインは上昇しました。
ビットコインには売られ過ぎからの反発、ETFへの資金流入、規制整備への期待など、金にはない固有の材料があったからです。
この違いは、ビットコインを単純にデジタル版の金として考えることの難しさを示しています。
流動性も重要になる
ビットコインを見るうえでは、金利そのものだけでなく金融市場全体の流動性も重要です。
中央銀行が金融引き締めを進め、市場から資金を吸収する局面では、投資家がリスクを取りにくくなることがあります。
反対に金融環境が緩和方向へ向かえば、リスク資産へ資金が流れやすくなる可能性があります。
そのため、政策金利だけを見てビットコイン相場を判断するのでは不十分です。
中央銀行の金融政策、市場に存在する資金量、投資家のリスク選好などを合わせて見る必要があります。
金利上昇に強くなったとは限らない
今回ビットコインが高金利下で上昇したからといって、ビットコインが金利上昇に強い資産になったと判断するのは早計です。
ETFへの資金流入が止まる可能性があります。
規制への期待が後退することもあります。
金利がさらに上昇すれば、国債などとの利回り差が一段と意識される可能性もあります。
元の記事でも、FRBによる年内の追加利上げ観測が投資家心理の重荷として指摘されています。
現在の上昇は、高金利の影響がなくなったということではありません。
他の買い材料が高金利という逆風を上回っていると考える方が分かりやすいでしょう。
相場は材料の綱引きで決まる
金融市場を理解するときに重要なのが、1つの材料だけで価格を説明しようとしないことです。
ビットコインの場合、高金利は売り材料です。
ETFへの資金流入は買い材料です。
規制整備への期待も買い材料になり得ます。
追加利上げ観測は売り材料です。
売られ過ぎからの反発は買い材料になります。
こうした複数の力が同時に働き、その時点でどちらが強いかによって価格が決まります。
ビットコインが金利上昇下でも上がることがあるのは、この綱引きの結果なのです。
結論
金利上昇は、基本的にはビットコインにとって逆風です。
国債などの利回りが高くなれば、金利を生まないビットコインを保有する機会費用が大きくなるからです。
しかし、相場は金利だけで決まりません。
売られ過ぎからの反発。
ETFへの大規模な資金流入。
規制整備への期待。
機関投資家の参入。
ディベースメント取引。
こうした買い材料が金利上昇の逆風を上回れば、ビットコインは高金利下でも上昇することがあります。
今回の相場が示しているのは、ビットコインが金利の影響を受けなくなったということではありません。
むしろビットコイン市場が成長し、価格を動かす要因が増えてきたということです。
これからビットコインを見るときには、金利が上がったから下がる、金利が下がったから上がるという単純な見方ではなく、その時点でどの資金がどの理由で動いているのかを見ることが重要になっているのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月30日 夕刊 明暗分ける金と仮想通貨