パスワードの使い回しが危ない 多要素認証でも残る落とし穴

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企業や行政機関へのサイバー攻撃が相次ぐなかで、個人情報の漏洩による被害が広がっています。

2026年10月21日、警視庁は個人情報漏洩を悪用した犯罪への注意を呼びかけました。特に重要な対策として挙げられたのが、パスワードの変更と多要素認証の利用です。

情報漏洩に関連して警視庁に寄せられた個人からの相談は、10月前半だけで約450件に達しました。

インターネット上では、銀行、証券会社、クレジットカード、通販サイト、行政サービスなど、多くのサービスでIDとパスワードが利用されています。

しかし、複数のサービスで同じパスワードを使用していると、一つのサービスから認証情報が流出しただけで、別のサービスにも不正ログインされる危険性があります。

さらに、多要素認証を設定していても、巧妙なフィッシング詐欺などによって認証情報が盗まれる可能性は残ります。

今回は、パスワードの使い回しが危険な理由と、多要素認証の仕組み、金融資産を守るために必要な対策について考えます。

パスワードの使い回しが危険な理由

私たちは日常生活の中で、多くのインターネットサービスを利用しています。

銀行口座、証券口座、クレジットカード、通販サイト、動画配信サービス、行政手続きなど、IDとパスワードが必要な場面は少なくありません。

こうしたサービスごとに異なるパスワードを設定することは、管理の負担が大きくなります。

そのため、覚えやすいパスワードを複数のサービスで使い回している人もいるでしょう。

しかし、パスワードの使い回しには大きな危険性があります。

例えば、通販サイトとインターネット銀行で同じメールアドレスとパスワードを利用している場合を考えてみます。

通販サイトへの不正アクセスによって認証情報が流出すると、その組み合わせが銀行への不正ログインに利用される可能性があります。

銀行自体がサイバー攻撃を受けていなくても、別のサービスから流出した情報によって被害が発生するおそれがあるのです。

このように、パスワードの使い回しは、一つの情報漏洩を複数のサービスの危険につなげてしまいます。

パスワードリスト攻撃の仕組み

流出したIDとパスワードを別のサービスへのログインに利用する手口は、一般にパスワードリスト攻撃と呼ばれています。

犯罪者は、何らかの方法で取得した認証情報の組み合わせを利用し、複数のサービスへのログインを試みます。

同じパスワードを使い回している利用者がいれば、不正ログインが成立する可能性があります。

特に、メールアドレスをIDとして利用するサービスでは、同じ認証情報が複数のサービスで使われている場合があります。

また、犯罪者が自動化されたプログラムを利用すれば、大量のログインを短時間で試みることも可能です。

こうした攻撃では、利用者本人が不審なメールを開いたり、偽サイトに情報を入力したりしていなくても、被害を受ける可能性があります。

対策として重要なのは、サービスごとに異なるパスワードを設定することです。

一つのサービスから認証情報が流出しても、別のサービスへの被害拡大を防ぎやすくなります。

安全なパスワードをどう管理するか

パスワードの安全性を高めるためには、推測されにくい文字列を利用することが重要です。

氏名、生年月日、電話番号など、本人に関係する情報をそのまま利用することは避けるべきです。

また、短い文字列や単純な数字の組み合わせも、推測される危険性があります。

十分な長さがあり、他のサービスでは使用していないパスワードを設定することが基本になります。

ただし、多数のサービスについて複雑なパスワードをすべて記憶することは現実的ではありません。

そこで役立つのが、パスワード管理ツールです。

パスワード管理ツールを利用すれば、サービスごとに異なる長いパスワードを生成し、安全に保存することができます。

利用者は、管理ツールへのアクセスを適切に保護することで、多数のパスワードを個別に記憶する負担を軽減できます。

ただし、管理ツール自体への不正アクセスを防ぐため、強固な認証方法を設定することが重要です。

多要素認証とは何か

パスワードだけに依存しない本人確認方法として普及しているのが、多要素認証です。

多要素認証とは、異なる種類の認証要素を組み合わせて本人確認を行う仕組みです。

認証要素は、大きく分けると、本人が知っている情報、本人が所有しているもの、本人の身体的な特徴などに分類されます。

例えば、パスワードとスマートフォンの認証アプリを組み合わせる方法があります。

また、パスワードと指紋認証などを組み合わせる方法もあります。

パスワードが第三者に知られても、追加の認証要素がなければログインできないため、不正アクセスの危険性を低減できます。

ただし、パスワードを2回入力するだけでは、多要素認証にはなりません。

重要なのは、異なる種類の認証要素を組み合わせることです。

金融機関などでは、不正送金を防止するため、多要素認証の導入が進められています。

多要素認証でも被害が発生する理由

多要素認証は有効な安全対策ですが、すべての不正アクセスを防止できるわけではありません。

例えば、犯罪者が実在する金融機関を装った偽サイトを用意し、利用者を誘導する場合があります。

利用者が偽サイトにIDとパスワードを入力すると、その情報が犯罪者に取得されます。

さらに、認証アプリなどに表示された確認コードを偽サイトに入力してしまうと、その情報も盗まれる可能性があります。

また、犯罪者が利用者に認証操作を承認させようとする手口もあります。

このような攻撃では、多要素認証を利用していても、利用者自身が不正な認証操作に応じてしまう危険性があります。

したがって、多要素認証を設定しただけで安心することはできません。

身に覚えのない認証要求には応じないことが重要です。

また、金融機関などのサービスを利用する際には、メールやSMSのリンクからアクセスするのではなく、公式アプリや正規のホームページを利用することが基本になります。

フィッシングに強い認証方法への移行

近年、パスワードに依存しない認証方法として、パスキーが注目されています。

パスキーは、公開鍵暗号方式などを利用して本人確認を行う仕組みです。

利用者は、端末の生体認証や画面ロックなどを利用して認証できます。

従来のパスワード認証とは異なり、サービスごとに対応する認証情報を利用するため、偽サイトでパスワードを盗み取られるような攻撃に強い特徴があります。

また、利用者が複雑なパスワードを記憶する必要がないというメリットもあります。

ただし、パスキーを利用していても、端末自体の管理やアカウントの復旧手続きには注意が必要です。

例えば、スマートフォンを紛失した場合に、どのような方法でアカウントへ再びアクセスできるのかを確認しておく必要があります。

さらに、すべてのサービスがパスキーに対応しているわけではありません。

今後は、サービスの対応状況に応じて、パスキーなどのフィッシングに強い認証方法を活用することが重要になるでしょう。

金融機関の認証情報は特に慎重に管理する

銀行や証券会社の認証情報は、金融資産に直接関係するため、特に慎重な管理が必要です。

例えば、インターネット銀行では、ログイン後に振込先の登録や送金などの操作ができる場合があります。

証券会社では、保有商品の売買や出金先口座に関する手続きなどが行われます。

そのため、認証情報が不正に利用されると、金銭的な被害につながる可能性があります。

金融機関では、不正取引を防止するため、取引内容に応じた追加認証や利用状況の監視などを実施しています。

しかし、利用者側でも基本的な対策を講じる必要があります。

特に、金融機関のパスワードを通販サイトやSNSなどで使い回さないことが重要です。

また、金融機関が提供する多要素認証や取引通知機能を利用することも有効です。

身に覚えのないログイン通知や取引通知が届いた場合には、速やかに金融機関へ確認する必要があります。

スマートフォンの紛失にも備える

多要素認証が普及することで、スマートフォンは本人確認の重要な手段になっています。

銀行や証券会社の認証アプリ、SMSによる確認コード、パスキーなど、多くの認証機能がスマートフォンに集約されています。

そのため、スマートフォンを紛失した場合には、単に端末を失うだけでなく、複数のサービスへのアクセスに影響する可能性があります。

対策として、端末の画面ロックを設定し、OSやアプリを適切に更新しておくことが重要です。

また、紛失した端末を遠隔でロックする機能などについても、事前に確認しておく必要があります。

認証アプリを利用している場合には、端末を交換した際の移行方法や復旧手順を把握しておくことも大切です。

スマートフォンは便利な認証手段ですが、それ自体が重要な情報資産になっていることを理解する必要があります。

企業にも求められる認証管理の強化

パスワード管理の問題は、個人だけでなく企業にも共通します。

企業では、従業員が業務システム、クラウドサービス、電子メールなど、多くのサービスを利用しています。

もし従業員が業務用パスワードを私的なサービスでも使い回していれば、外部サービスから流出した情報が企業への不正アクセスに利用される可能性があります。

そのため、企業には、従業員の認証情報を適切に管理する仕組みが必要です。

例えば、業務システムへの多要素認証の導入や、不要なアクセス権限の削除などが考えられます。

また、退職者や異動した従業員のアクセス権限を速やかに変更することも重要です。

さらに、不審なログインを検知する仕組みを整備し、異常が確認された場合には迅速に対応する必要があります。

こうした取り組みは、企業の内部統制や情報セキュリティー管理の重要な要素です。

認証情報の管理は、単なる個人の注意事項ではなく、組織全体で取り組むべき課題なのです。

結論

パスワードの使い回しは、個人情報漏洩による被害を拡大させる大きな要因です。

一つのサービスから認証情報が流出すると、同じパスワードを利用している別のサービスにも不正ログインされる可能性があります。

そのため、サービスごとに異なるパスワードを設定することが基本になります。

また、多要素認証を利用すれば、パスワードだけによる不正ログインの危険性を低減できます。

ただし、多要素認証も万能ではありません。

偽サイトへの誘導や不正な認証要求など、利用者の行動を悪用する攻撃には引き続き注意が必要です。

今後は、パスキーなどのフィッシングに強い認証方法の活用も重要になるでしょう。

特に銀行や証券会社など、金融資産に関わるサービスでは、認証情報の管理が資産保全に直結します。

企業においても、従業員の認証情報を適切に管理し、不正アクセスを防ぐ内部統制の整備が必要です。

デジタル社会では、パスワードは単なるログインのための文字列ではありません。

個人情報や金融資産を守るための重要な鍵です。

便利さを優先して同じパスワードを使い回す習慣を見直し、安全な認証方法を活用することが、これからの情報社会における基本的な自己防衛といえるでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年10月22日 個人情報漏洩したら…パスワード変更や多要素認証を 警視庁が対策公表

日本経済新聞 2026年10月 自治体DX、半数が委託先監査せず 不正アクセス問題で管理に重み

警視庁 2026年10月21日 個人情報漏洩を悪用した犯罪への注意喚起

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