日本では、まだ食べられる食品が大量に廃棄される一方で、生活に困窮し十分な食料を確保できない人もいます。この二つの社会課題を同時に解決するため、国は食品ロス削減を重要な政策として位置付けています。
その中心となる法律が「食品ロス削減推進法」です。2019年に施行されたこの法律は、食品ロスを減らすために国や自治体、事業者、消費者がそれぞれの役割を果たすことを定めています。近年ではフードバンク認証制度の創設など、法律の理念を具体化する取り組みも進められています。
食品ロス削減推進法とは
正式名称は「食品ロスの削減の推進に関する法律」です。
食品ロスを「まだ食べられるにもかかわらず廃棄される食品」と定義し、その削減を国民運動として推進することを目的としています。
食品ロスは環境問題であると同時に、資源の有効活用や生活困窮者支援にも関わる課題です。
この法律は、食品ロスを社会全体で解決すべき問題として位置付けた点に大きな特徴があります。
なぜ法律が必要だったのか
日本では長年にわたり、多くの食品が廃棄されてきました。
背景には、家庭での食べ残しや買い過ぎだけでなく、流通段階での商慣行や外食産業での食べ残しなど、さまざまな要因があります。
一方で、世界では飢餓や食料不足に苦しむ地域も多く存在します。
こうした状況を踏まえ、食品を大切に使う社会を実現するため、法律による継続的な取り組みが必要と判断されました。
それぞれの役割
法律では、食品ロス削減は一部の事業者だけの責任ではないと考えています。
国は基本方針を策定し、必要な施策や情報提供を行います。
地方自治体は地域の実情に応じた普及啓発や関係団体との連携を進めます。
食品メーカーや流通事業者、小売業、外食産業などは、商慣行の見直しや食品寄付の推進などに取り組むことが期待されています。
消費者にも、必要以上に買い過ぎないことや、賞味期限を正しく理解すること、「てまえどり」を実践することなどが求められています。
フードバンクとの関係
食品ロス削減推進法は、食品寄付の促進も重要な施策として位置付けています。
企業から提供される食品を安全に管理し、必要とする人へ届けるフードバンクは、その実現を支える重要な存在です。
2026年には消費者庁によるフードバンク認証制度が始まり、一定の基準を満たした団体が認証されるようになりました。
認証制度によって企業は安心して食品を寄付しやすくなり、法律が目指す食品ロス削減の取り組みがさらに進むことが期待されています。
SDGsとのつながり
食品ロス削減推進法は、国際社会が掲げるSDGsとも深く関係しています。
特に目標12「つくる責任 つかう責任」では、食品廃棄物の削減が重要な目標として掲げられています。
食品ロスを減らすことは、温室効果ガスの排出削減や資源の有効活用にもつながります。
国内の政策であると同時に、国際的な持続可能性への取り組みでもあるのです。
今後の課題
食品ロス削減は着実に進んでいますが、依然として多くの食品が廃棄されています。
企業による食品寄付をさらに拡大するには、フードバンクの保管設備や物流体制、人材の確保など受け入れ側の体制整備も欠かせません。
また、家庭で発生する食品ロスを減らすためには、消費者一人ひとりの意識改革も重要です。
法律の理念を実効性あるものにするためには、社会全体が継続して取り組むことが求められています。
結論
食品ロス削減推進法は、まだ食べられる食品を無駄にせず、有効活用する社会を目指すための基本法です。国や自治体、企業、消費者がそれぞれの役割を果たすことで、食品ロス削減と生活困窮者支援の両立を図ることを目的としています。
近年はフードバンク認証制度など具体的な施策も始まり、食品寄付を後押しする環境が整いつつあります。食品を大切にすることは、環境保全だけでなく、持続可能な社会づくりにもつながります。一人ひとりの行動が、食品ロスのない社会の実現に向けた大きな力となるでしょう。
参考
日本経済新聞「フードバンク4団体、国が初認証 『適切に管理』で寄付しやすく 企業の懸念解消めざす」2026年8月3日朝刊
食品ロスの削減の推進に関する法律
消費者庁「食品ロス削減推進」
農林水産省「食品ロスの現状と削減に向けた取組」
環境省「食品ロス削減に関する施策」
国際連合「持続可能な開発目標(SDGs)目標12」