サイバー対策への数百万円はコストなのか投資なのか 受注維持まで含めて考える編

経営

2027年3月ごろから始まる予定のSCS評価制度では、多くの企業にとって星3個への対応が重要になります。

中小企業にとって悩ましいのが、そのための費用です。

記事では、現在ほとんど対策していない企業がゼロから星3個の要求事項を網羅する場合、年間で数百万円、場合によってはそれ以上の費用がかかるとの見方が紹介されています。

数百万円という金額だけを見れば、大きな負担です。

しかし、SCS評価制度が企業間取引の基準として利用されるようになれば、サイバー対策の意味は変わります。

単なるコストではなく、受注や取引を維持するための投資という面も持つようになるからです。

サイバー対策は売上が見えにくい

企業が設備へ投資するときには、効果を比較的イメージしやすい場合があります。

新しい機械を導入して生産量を増やす。

新店舗を出して売上を増やす。

営業社員を増やして新規顧客を獲得する。

こうした投資は売上との関係を考えやすくなります。

一方、セキュリティーソフトを導入しても、それだけで商品が売れるわけではありません。

そのため、サイバー対策は売上を生まない費用と見られやすい特徴があります。

事故を防ぐ効果は数字に表れにくい

サイバー対策には、事故による損失を防ぐという役割があります。

情報流出を防ぐ。

システム停止を防ぐ。

ランサムウエアによる被害を防ぐ。

取引先への被害拡大を防ぐ。

しかし、攻撃を防ぐことができれば事故そのものが起こりません。

何も起きなかったことの価値は数字に表れにくいため、経営側から見ると投資効果が分かりにくくなります。

保険や防災設備と似た性格を持っていると考えることもできます。

サイバー事故には直接的な損失がある

実際にサイバー攻撃を受ければ、さまざまな費用が発生する可能性があります。

システムの復旧。

専門会社による原因調査。

停止した業務への対応。

顧客や取引先への説明。

必要なシステムの再構築。

通常業務が止まれば、売上そのものが失われることもあります。

サイバー対策にかかる費用を考えるときには、対策しなかった場合に発生する可能性がある損失と比較する視点が必要です。

信用を失うことも大きな損失になる

サイバー事故による損失は、復旧費用だけではありません。

顧客情報が流出した。

取引先の情報を漏らした。

サイバー攻撃によって長期間業務が停止した。

こうした事態が起これば、会社への信用に影響する可能性があります。

信用は貸借対照表にそのまま金額として表示されるものではありません。

しかし、企業間取引では非常に重要な資産です。

特に長期間の取引関係によって事業が成り立っている中小企業では、信用低下の影響を軽視できません。

星3個が受注条件になれば意味が変わる

SCS評価制度で特に重要なのが、星の数が取引先選びに利用される可能性です。

記事では、統一基準が企業や自治体の委託先選定の条件になる可能性が高いとされています。

もし星3個以上が入札や取引の条件になれば、サイバー対策と売上の関係が見えやすくなります。

星3個を持っていなければ参加できない案件がある。

既存取引先から星3個の取得を求められる。

こうなれば、認定取得に必要な費用は受注機会を確保するための費用という意味も持ちます。

新規受注だけでなく既存取引も重要

投資効果を考えるとき、新しい売上だけを見る必要はありません。

現在の売上を守ることにも価値があります。

たとえば年間1億円の取引がある企業から、今後は一定のセキュリティー水準を満たすことを求められたとします。

その取引を維持するために対策が必要なら、数百万円の費用を単独で見るだけでは十分ではありません。

どの程度の取引を守るための支出なのかという視点が必要になります。

サイバー対策は、新しい売上を作る投資だけではなく、既存売上を守る投資にもなり得ます。

取引先へ安全性を説明できる

星3個などの共通基準が普及すれば、自社のセキュリティー水準を取引先へ説明しやすくなります。

これまでは、十分に対策していますと説明しても、その水準が分かりにくいという問題がありました。

SCS評価制度では、共通の物差しによって対策状況を示せます。

新規取引の際にも、一定の対策を行っていることを説明する材料になります。

セキュリティーが企業信用の一部になれば、認定取得そのものが営業基盤としての意味を持つ可能性があります。

ただし高額な対策ほどよいわけではない

サイバー対策を投資と考えるからといって、費用をかければかけるほどよいわけではありません。

会社によって必要な水準は異なります。

一般的な中小企業が、最初から星5個を想定した高度な対策を導入する必要があるとは限りません。

重要なのは、自社のリスクや取引先から求められる水準に合わせることです。

星3個で十分なのか。

星4個が必要なのか。

どの業務を優先して守るのか。

必要な水準を決めたうえで投資額を考える必要があります。

費用ではなく総額で考える

サイバー対策の経済性を見るときには、導入費用だけで判断しないことが重要です。

最初に必要な機器の購入費。

毎年発生するソフトウエア利用料。

外部専門家への支払い。

社員教育の費用。

社内担当者が使う時間。

こうした支出を含めて考えます。

その一方で、事故による損失を減らす効果、既存取引を守る効果、新規受注への参加機会なども考えます。

単純に数百万円は高いと判断するのではなく、会社全体への影響を見る必要があります。

何もしないことにもコストがある

企業の投資判断では、対策する場合の費用は目に見えます。

一方、何もしない場合の費用は見えにくいものです。

サイバー事故が起きる可能性。

取引先から改善を求められる可能性。

入札へ参加できなくなる可能性。

取引先から選ばれなくなる可能性。

こうした機会損失まで考えると、何もしないことが必ずしも最も安い選択とは限りません。

サイバー対策では、対策費用と無対策のリスクを比較することが重要になります。

結論

中小企業にとって年間数百万円のサイバー対策費は決して小さな金額ではありません。

特に直接売上を生む設備ではないため、単なるコストに見えやすい支出です。

しかし、SCS評価制度が企業や自治体の取引先選びに利用されるようになれば、その意味は変わります。

サイバー事故による損失を防ぐ。

会社の信用を守る。

既存取引を維持する。

新しい案件への参加資格を確保する。

こうした効果まで考えれば、サイバー対策は事業を続けるための投資という側面を持ちます。

もちろん、必要以上に高額な対策を導入する必要はありません。

重要なのは、自社のリスクと取引先から求められる水準を確認し、それに見合った費用を使うことです。

これからの中小企業経営では、サイバー対策費をいくら削るかではなく、会社の信用と売上を守るためにいくら投資するのかという視点が重要になりそうです。

参考

日本経済新聞 2026年9月17日 朝刊 サイバー対策、試される中小

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