オルカンの大きな魅力は、一本の投資信託を購入するだけで世界中の株式へ分散投資できることです。
日本株だけ、米国株だけといった投資と比べれば、国や地域を幅広く分散できるため、長期の資産形成に適した商品として人気があります。
ところが、オルカンの中身を詳しく見ると意外な事実があります。
全世界株式と呼ばれているにもかかわらず、米国株が全体の6割を超えているのです。
世界中に投資しているのに、なぜこれほど米国の割合が大きくなるのでしょうか。
その理由を理解するには、オルカンの国別構成比率がどのように決められているのかを知る必要があります。
全世界株式とは何か
全世界株式とは、特定の国だけではなく、世界各国の株式市場へ幅広く投資する考え方です。
代表的な指数の一つがMSCIオールカントリーワールドインデックスです。
MSCI ACWIと呼ばれます。
MSCIによると、この指数は先進国と新興国の大型株と中型株で構成され、世界の投資可能な株式市場のおよそ85%をカバーしています。
日本や米国だけでなく、英国、カナダ、台湾、中国など、さまざまな国や地域の企業が含まれます。
したがって、日本の投資家が個別に各国の株式を購入しなくても、このような指数に連動する投資信託を保有することで世界の株式市場へまとめて投資できます。
これが全世界株式投資の基本的な仕組みです。
ただし、ここで注意したいのが、各国へ同じ割合で投資しているわけではないことです。
世界を100等分して投資しているわけではない
仮に世界に50カ国の株式市場があるとして、それぞれへ2%ずつ投資すれば国別の均等分散になります。
しかし、MSCI ACWIはこのような仕組みではありません。
基本となっているのは、企業の市場規模を反映した時価総額です。
さらに実際には、創業者や政府などが保有していて市場で自由に売買されにくい株式を調整した浮動株調整後時価総額などが使われます。
簡単に考えれば、世界の株式市場で大きな価値を持つ企業には多く投資し、小さな企業には少なく投資する仕組みです。
その結果、大企業を数多く抱える国ほど指数に占める割合も大きくなります。
つまり、オルカンの国別構成比率は国の人口や国土面積、国内総生産などに応じて決められているわけではありません。
株式市場に上場している企業の市場価値が大きな基準になっています。
米国株が6割を超える理由
現在の世界株式市場では米国企業が圧倒的な存在感を持っています。
MSCIの2026年5月末時点の資料では、MSCI ACWIに占める米国の割合は63.5%でした。
日本は5.0%、台湾は3.26%、英国は3.07%、カナダは2.96%となっています。
つまり100万円をMSCI ACWIと同じ割合で投資すると単純化して考えれば、およそ63万円が米国株に相当することになります。
日本株はおよそ5万円です。
なぜこれほど差が生まれるのでしょうか。
大きな理由は、世界最大級の企業が米国市場に集中しているからです。
エヌビディア、アップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット、メタなど、巨大な時価総額を持つ企業が多数あります。
こうした企業の株価が上昇して時価総額が大きくなるほど、世界株式市場全体に占める米国の割合も大きくなります。
その結果、指数に占める米国株の比率も高くなります。
米国を意図的に多くしているわけではない
ここはオルカンを理解するうえで重要なポイントです。
MSCI ACWIが米国の成長性を予測して、米国株を6割以上にしているわけではありません。
米国株が今後上昇すると予想しているからでもありません。
世界の株式市場の現在の姿を反映した結果として米国の割合が大きくなっているのです。
仮に今後、日本企業や欧州企業、新興国企業などの時価総額が米国企業を上回るペースで成長すれば、それらの国の構成比率は自然に高くなります。
反対に米国企業の時価総額が相対的に縮小すれば、米国の構成比率は低下します。
投資家自身がどの国が将来成長するのかを予想して配分を変更しなくても、市場の変化に応じて指数の構成も変わっていくことになります。
これが時価総額を基準とする世界株指数の特徴です。
日本経済が世界3位でも日本株は5%程度になる理由
国別構成比率を考えるとき、経済規模と株式市場の規模を混同しないことも重要です。
ある国の国内総生産が大きいからといって、その国の株式が同じ割合で指数へ組み入れられるわけではありません。
株式指数で重要なのは、上場企業の市場価値です。
さらに市場で実際に売買可能な株式の割合なども考慮されます。
そのため世界経済に占める各国の割合と、世界株式指数に占める各国の割合は一致しません。
オルカンは世界経済そのものを買う商品というより、世界の株式市場を買う商品と考えた方が分かりやすいでしょう。
米国株が下落するとオルカンも大きな影響を受ける
米国株が6割を超えているということは、当然ながら米国市場の値動きがオルカン全体へ大きく影響することを意味します。
極端に単純化して考えてみます。
資産の60%が米国株、残り40%がその他の国だとします。
米国株だけが20%下落し、その他の国の株価がまったく動かなければ、資産全体には約12%の下落要因となります。
60%に20%を掛けると12%になるからです。
実際には為替変動や各国市場の連動などがあるため、これほど単純ではありません。
それでも米国株の値動きが全世界株式の運用成績を大きく左右することは理解できます。
オルカンを持っているから米国株の動向を気にする必要がないというわけではありません。
むしろ米国市場は非常に重要です。
それでも米国株だけに投資するのとは違う
では、オルカンの6割以上が米国株なら、米国株だけに投資するのと同じなのでしょうか。
これは違います。
残りの部分には日本、欧州、カナダ、台湾、中国など多くの国や地域の企業が含まれています。
仮に将来米国株の成長が鈍化し、別の地域の企業が大きく成長すれば、その企業の時価総額が増えて指数に占める割合も高くなります。
米国株だけに投資していれば、投資家自身が売却して別の国へ投資先を変更しなければなりません。
一方、全世界株式では世界の株式市場の構造が変化すれば、それに伴って構成も変わっていきます。
現在米国の割合が大きいことと、永久に米国を6割以上保有し続けることは同じではありません。
世界分散と米国集中は矛盾するのか
ここで疑問になるのが、米国株が6割を超えているのに世界分散と呼んでよいのかという点です。
これは必ずしも矛盾しません。
世界分散とは、すべての国へ均等に投資することを意味するわけではないからです。
MSCI ACWIの場合、世界の株式市場を時価総額に応じて保有することによって世界分散を実現しています。
世界の株式市場そのものが米国へ集中しているため、指数も米国中心になります。
したがってオルカンの米国比率が高いのは、オルカンだけの問題というより、現在の世界株式市場の構造を映した結果と考えることができます。
ただし、投資家の立場から見れば別の問題があります。
自分では世界へ広く分散しているつもりでも、実際の資産価格は米国株の動向にかなり左右されるということです。
この点は理解しておく必要があります。
分散は国の数だけでは判断できない
投資の分散を考えるとき、何カ国へ投資しているかだけを見るのは十分ではありません。
どの国へどれだけ投資しているのかを見る必要があります。
さらに国だけでなく、企業、業種、通貨などの集中度も確認する必要があります。
例えば世界中の企業へ投資していても、巨大テクノロジー企業の割合が非常に大きければ、それらの企業の株価変動が資産全体を大きく左右します。
オルカンには非常に多くの企業が組み入れられています。
しかし、銘柄数が多いことと、すべての企業へ均等に分散されていることは同じではありません。
この仕組みを理解するために重要になるのが時価総額加重です。
結論
オルカンは、世界の株式市場へ幅広く投資できる優れた金融商品です。
しかし、全世界株式という名称から、世界各国へ均等に投資していると考えるのは正確ではありません。
MSCI ACWIでは企業の市場価値を反映した仕組みによって構成比率が決まるため、巨大企業を多数抱える米国の割合が非常に高くなっています。
2026年5月末時点では米国株が63.5%を占めていました。
これはMSCIが米国株の将来性を予測して意図的に米国へ集中投資しているからではありません。
現在の世界株式市場における米国企業の時価総額が大きいためです。
したがって、世界分散と米国株6割超は必ずしも矛盾しません。
ただし、オルカンを保有していても資産全体が米国株の値動きから大きな影響を受けることは理解しておく必要があります。
大切なのは、オルカンという名前ではなく、その中身を見ることです。
そして、その中身を理解するための次の重要なキーワードが時価総額加重です。
参考
MSCI 2026年5月29日 MSCI ACWI Index
日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 「オルカン一択」再検討の時