日本では少子高齢化が急速に進み、人口の半数以上が50歳を超える「50歳真ん中社会」が現実となりました。このような人口構造の変化のなかで注目されている考え方が「エイジフレンドリー社会」です。
高齢者を単に支援の対象として考えるのではなく、年齢に関係なく誰もが安心して暮らし、働き、社会に参加できる環境を整えることが重要視されています。
今回は、エイジフレンドリー社会の意味や世界的な取り組み、日本が目指すべき方向について解説します。
エイジフレンドリー社会とは何か
エイジフレンドリー社会とは、高齢者を含め、あらゆる世代が能力を発揮しながら安心して暮らせる社会を指します。
「エイジフレンドリー(Age-friendly)」とは、「年齢にやさしい」「年齢を問わず暮らしやすい」という意味です。
高齢者だけを特別扱いするのではなく、年齢を重ねても社会とのつながりを持ち続けられる環境を整えることが基本的な考え方です。
この考え方は、高齢化が進む世界各国で重要な政策課題となっています。
WHOが提唱するエイジフレンドリー
エイジフレンドリーという考え方を世界に広めたのが、世界保健機関(WHO)です。
WHOは、高齢化が進む都市や地域が目指すべき姿として「エイジフレンドリーシティ」の考え方を提唱しています。
その中では、
- 屋外空間や建物の利用しやすさ
- 公共交通機関の充実
- 住まいの安全性
- 社会参加の機会
- 尊厳と包摂
- 就労や社会貢献の機会
- 情報へのアクセス
- 医療・介護サービス
など、多面的な環境整備が重要とされています。
つまり、高齢者福祉だけではなく、まちづくり全体を見直す考え方なのです。
働きやすい環境づくりが重要になる
人生100年時代では、60代、70代でも働き続ける人が増えています。
そのため企業には、年齢を理由に能力を判断するのではなく、多様な働き方を受け入れる姿勢が求められます。
例えば、
- 定年延長や継続雇用
- 短時間勤務
- テレワーク
- 職務内容に応じた配置
- リスキリングの機会提供
などが重要になります。
また、若い世代だけでなく、中高年層も継続的に学び、新しい技術を身に付けられる環境づくりが欠かせません。
年齢を重ねても活躍できる職場は、人手不足への対応という面でも大きな意味があります。
地域社会の役割も大きい
エイジフレンドリー社会は、企業だけで実現できるものではありません。
自治体や地域社会の役割も重要です。
高齢者が外出しやすい道路や公共交通の整備、買い物や医療へのアクセス向上、地域コミュニティとの交流機会の充実などが求められます。
さらに、ボランティア活動や地域活動への参加機会を広げることで、高齢者の社会的孤立を防ぐことにもつながります。
地域全体で支え合う仕組みを構築することが、安心して暮らせる社会づくりの基盤になります。
エイジフレンドリー社会は全世代にメリットがある
エイジフレンドリーという言葉から、高齢者だけのための取り組みと思われることがあります。
しかし実際には、誰にとっても暮らしやすい社会を目指す考え方です。
段差の少ない道路や駅は、子育て世帯や車いす利用者にも便利です。
柔軟な働き方は、育児や介護を担う現役世代にも役立ちます。
誰もが年齢を重ねることを考えれば、高齢者に配慮した社会は、将来の自分自身にとっても暮らしやすい社会といえます。
人口減少時代の成長戦略にもなる
日本では生産年齢人口の減少が続いています。
この状況で経済や社会を維持するためには、高齢者を支えるだけではなく、意欲と能力のある人が年齢に関係なく活躍できる環境を整えることが重要です。
経験や知識を持つシニア人材が活躍し続けることは、人手不足の緩和や技術継承にもつながります。
エイジフレンドリー社会は福祉政策であると同時に、人口減少時代の重要な成長戦略でもあるのです。
結論
エイジフレンドリー社会とは、高齢者だけでなく、すべての世代が安心して暮らし、働き、社会に参加できる環境を整える考え方です。WHOが提唱するこの理念は、高齢化が進む日本にとってますます重要になっています。
働きやすい職場づくりや地域社会の環境整備を進めることは、高齢者のためだけではなく、子育て世代や現役世代を含めたすべての人の暮らしやすさにつながります。人口減少社会に対応するためにも、年齢にとらわれない社会設計がこれからの日本には求められるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年8月5日 朝刊
「50歳真ん中社会」の設計図は(中外時評)
World Health Organization(WHO)「Age-friendly Cities and Communities」