インド株が世界のディフェンシブ資産へ AI依存の低さと内需成長が生む新たな投資価値

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世界の株式市場で、インド株の存在感が変わり始めています。これまでインド株は、高い経済成長率を背景とする成長株市場として評価されてきました。しかし、人工知能(AI)関連株の値動きが激しくなるなか、AIへの依存度が相対的に低いことが新たな強みとして注目されています。

世界の投資資金がAI関連銘柄に集中する一方、インドには金融、消費、インフラ、製造業など、国内経済の成長を収益につなげる企業が数多く存在します。

今後、インド株は単なる新興国の成長投資先ではなく、世界の株式市場の変動を和らげる投資先として評価される可能性があります。

今回は、インド株が底堅さを見せる背景と、長期投資における可能性、そして注意すべきリスクについて考えます。

インド株が世界の株式市場で底堅さを見せる理由

2026年10月、世界の株式市場ではAI関連銘柄を中心に株価の調整が進みました。

特に半導体やAI向けクラウド関連企業では、巨額の設備投資に見合う収益を確保できるのかという懸念が広がっています。

こうしたなか、インド株は比較的堅調に推移しています。

代表的な株価指数であるSENSEXは、2026年9月末から10月21日までに1.7%上昇しました。

同じ期間に韓国や台湾などの株式市場が半導体関連株の下落に影響されたことと対照的です。

その理由の一つが、インド株の産業構成にあります。

インドの株式市場では、銀行などの金融機関、エネルギー、情報技術、消費関連企業が大きな比重を占めています。

米国や台湾などと比較すると、AI向け半導体やデータセンター設備への投資拡大に直接依存する企業の比率が相対的に低いという特徴があります。

AI関連投資が世界の株式市場を左右する局面では、この違いが株価の安定要因となる可能性があります。

ただし、インド株が常に下落しにくいという意味ではありません。世界的な金融危機や新興国からの資金流出が起きれば、インド株も大きく下落する可能性があります。

AIへの依存度の低さが投資上の強みに変わる

インドは世界有数のITサービス産業を持つ国です。

タタ・コンサルタンシー・サービシズやテック・マヒンドラなどの企業は、米国を中心にシステム開発や業務の外部委託サービスを提供しています。

これらの企業は、生成AIの普及によって従来の業務が代替されるとの懸念から、株価が低迷していました。

タタ・コンサルタンシー・サービシズの時価総額は、過去2年間で半減したと報じられています。

ところが2026年10月には、こうしたITサービス企業の株価が反発しました。

9月末からの上昇率は、タタ・コンサルタンシー・サービシズが23%、テック・マヒンドラが20%となっています。

AI関連株に集中していた投資資金が、相対的に割安となった企業へ移動した可能性があります。

もっとも、インドのITサービス企業もAIの影響を強く受けます。AIによる業務効率化が収益機会になる一方、従来型サービスの需要減少につながる可能性もあります。

重要なのは、インド株全体がAIと無関係なのではなく、AI投資の拡大だけに成長を依存していないことです。

世界最大の人口が生み出す国内需要

インド株の長期的な魅力を考えるうえで、最も重要なのは国内需要の拡大です。

インドは世界最大の人口を抱えています。

人口の多さに加えて、所得水準の上昇や都市化の進展によって、消費市場が拡大することが期待されています。

インド株投資信託を運用するUTIインターナショナルは、2026年から2030年にかけてインドの消費者が1億7,500万人増えると試算しています。

これはアフリカの7,000万人、西側諸国の800万人を大きく上回る規模です。

この試算が示しているのは、インド経済が海外市場だけに依存せず、国内の消費拡大によって成長できる可能性です。

例えば、所得が増えれば住宅を購入する家庭が増えます。

自動車や家電製品の購入も拡大します。

銀行口座やクレジットカードを利用する人が増え、住宅ローンや自動車ローンの需要も高まります。

さらに、道路、鉄道、電力、通信などの社会インフラ整備も進むことが期待されます。

こうした需要は、AI関連投資の好不調とは異なる要因によって生み出されます。

この点が、インド株の長期的な投資価値を支える重要な要素です。

金融機関がインド経済の成長を取り込む

インドの経済成長を考える際、特に注目したいのが銀行を中心とする金融業です。

経済発展の初期段階では、現金決済が中心だった人々が銀行口座を開設し、預金や融資などの金融サービスを利用するようになります。

所得が増加すると、住宅ローンや自動車ローン、クレジットカードなどの需要が拡大します。

企業側でも設備投資や事業拡大に伴う資金需要が増えます。

つまり、金融機関は国内経済の成長を幅広く取り込むことができます。

特に自己資本が厚く、貸出先の審査能力に優れた銀行は、長期的な成長の恩恵を受ける可能性があります。

一方で、融資の急拡大には注意が必要です。

景気が悪化すれば不良債権が増加する可能性があります。

また、競争激化による利ざやの縮小や金融規制の変更も収益に影響します。

金融株への投資では、融資残高の伸びだけでなく、不良債権比率、自己資本比率、収益性などを総合的に確認することが重要です。

インド株の割高感は後退している

インド株には、長年にわたり株価が割高だという指摘がありました。

高い経済成長率が期待されるため、投資家が将来の利益を先取りして株式を購入してきたからです。

2020年以降、インド株の予想PERは20倍を超えることが珍しくありませんでした。

PERは株価を1株当たり利益で割った指標で、企業の利益に対して株価が何倍まで評価されているかを示します。

ところが、英HSBCによると、2026年のインド株の予想PERは16倍前後まで低下しています。

2013年以降の平均である18倍を下回る水準です。

株価が以前よりも割安に評価されるようになったことは、新たな投資資金を呼び込む要因となります。

ただし、PERが低下したからといって、必ずしも割安とは限りません。

将来の利益成長率が低下すれば、適正なPERも下がる可能性があります。

重要なのは、企業業績の成長と株価評価を組み合わせて判断することです。

企業利益は2027年に再加速する見通し

インド株の将来性を考えるうえでは、企業利益の動向が重要です。

JPモルガンの試算によると、MSCIインド指数の構成企業の純利益成長率は、2025年の13.1%から2026年には10.4%へ鈍化する見通しです。

しかし、2027年には17.7%へ再加速すると予想されています。

この予測が実現すれば、株価の上昇を企業業績の拡大が支えることになります。

特に注目されるのが中小型株です。

インドでは設備投資や製造業など、高い成長が期待される産業に中小型企業が数多く存在します。

大企業だけでなく、成長過程にある企業へ投資機会が広がっていることは、インド市場の特徴といえます。

もっとも、中小型株には流動性の低さや株価変動の大きさなどのリスクがあります。

成長率の高さだけでなく、財務基盤や企業統治の状況を確認する必要があります。

大型IPOが示すインド市場の資金吸収力

インドの株式市場では、大型の新規株式公開も注目されています。

財閥リライアンス・インダストリーズ傘下のジオ・プラットフォームズは、2026年10月28日の上場に向けた株式購入の受け付けで、募集株数約1億9,800万株に対する応募が約100分で埋まったと報じられています。

資金調達規模は約3,000億ルピー、日本円で約5,000億円に達する見通しです。

インド史上最大規模のIPOとして注目されています。

大型IPOに十分な投資需要が集まることは、国内外の投資家がインド市場に関心を持っていることを示しています。

ただし、IPOの人気が高いことと、上場後の株価が上昇することは別問題です。

募集価格が割高であれば、上場後に株価が下落する可能性もあります。

IPOの成功を市場全体の強さの一つの材料として捉えながら、個別企業の収益力を冷静に評価する姿勢が必要です。

インド株を長期投資に組み入れる際の注意点

インド株には高い成長期待がありますが、日本の個人投資家が投資する際には複数のリスクを考慮する必要があります。

第一に為替リスクです。

インド株が現地通貨建てで上昇しても、インドルピーが円に対して下落すれば、日本円で評価した運用成績は悪化します。

第二に株価変動リスクです。

インドは新興国市場であり、外国人投資家による資金流出や政策変更によって株価が大きく変動することがあります。

第三に投資対象の集中リスクです。

インド株だけに資産を集中させると、インド固有の政治、経済、金融政策などの影響を強く受けます。

第四に投資信託のコストです。

インド株に投資する投資信託には、信託報酬が比較的高い商品もあります。

長期投資では、毎年発生する運用コストが最終的な資産形成に大きく影響します。

また、NISAを利用する場合でも、すべてのインド株投資信託が対象になるわけではありません。

対象商品の条件や投資枠を確認する必要があります。

長期分散投資のなかでインド株をどう位置づけるか

日本の個人投資家にとって、インド株は長期分散投資の一部として検討する価値があります。

例えば、全世界株式インデックスファンドを中心に運用する場合でも、インド株は新興国株式の一部として組み入れられています。

そのため、全世界株式への投資に加えてインド株投資信託を購入することは、インドへの投資比率を意図的に高めることを意味します。

重要なのは、インドの成長期待だけを理由に投資比率を大きくしすぎないことです。

米国株、日本株、先進国株、新興国株、債券などとのバランスを考える必要があります。

また、インド株をディフェンシブな投資先として評価する場合でも、預金や高格付け債券のような安全資産と同一視することは適切ではありません。

インド株はあくまで株式です。

世界の株式市場との値動きの違いによって分散効果が期待できるという意味であり、元本の安全性が高いという意味ではありません。

長期的な成長期待と短期的な価格変動を区別することが重要です。

結論

インド株の投資価値は、新たな段階に入りつつあります。

これまでは人口増加と高い経済成長率が主な投資理由でした。

しかし、世界の株式市場でAI関連銘柄への投資集中が進んだ結果、AI投資への依存度が相対的に低いことが、新たな魅力として注目されるようになりました。

インドには、金融、消費、製造業、インフラなど、国内需要を基盤として成長する産業が数多くあります。

企業利益の成長が続き、株価の割高感が抑えられれば、世界の長期投資資金を引き付ける可能性があります。

一方で、為替変動、企業業績の下振れ、外国人投資家の資金流出などのリスクは残ります。

インド株を世界のディフェンシブ資産と評価する動きは、まだ始まったばかりです。

今後の焦点は、AI関連株が再び上昇する局面でも、インド株が独自の成長力によって投資資金を引き付けられるかどうかです。

長期投資で大切なのは、短期的な人気ではなく、企業利益の持続的な成長を見極めることです。

インド株は、世界の株式市場における成長と分散の両面から、今後も注目したい投資対象といえるでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年10月23日朝刊「インド株『世界のディフェンシブ』に 強みは非AI、長期マネーも支え」

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