ふるさと納税の仲介サイト手数料に自治体の9割が不満 経費規制強化で問われる制度の持続可能性

税理士
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ふるさと納税制度を巡り、自治体と仲介サイト運営事業者の間で手数料負担に対する認識の違いが鮮明になっています。

日本経済新聞の調査によると、全国の市区の約9割が仲介サイト運営事業者による手数料引き下げの対応について、期待に沿ったものではなかったと回答しました。

背景には、総務省が進めるふるさと納税の募集経費規制の強化があります。

2026年10月から募集経費の上限が寄付額の50%から47.5%に引き下げられ、2029年にかけて40%まで段階的に引き下げる方針です。

自治体にとって、仲介サイトへの手数料負担を減らせなければ、返礼品の調達費用や配送費用などを削減せざるを得なくなります。

一方、仲介サイトは寄付者の獲得や自治体の情報発信に重要な役割を果たしており、単純な手数料規制だけでは解決できない問題もあります。

今回は、ふるさと納税の仲介サイト手数料を巡る問題について、制度の仕組み、自治体財政への影響、税制上の課題、今後の制度改革の方向性を解説します。

仲介サイト手数料は寄付額の11.5%

ふるさと納税は、寄付者が自分の選んだ自治体に寄付を行い、一定の限度額の範囲内で所得税や個人住民税の控除を受けられる制度です。

寄付者の自己負担額は原則として2,000円であり、控除上限額の範囲内で寄付すれば、寄付額から2,000円を差し引いた金額について税負担が軽減されます。

寄付者にとっては、税負担の軽減に加え、自治体から返礼品を受け取れることが大きな魅力となっています。

ただし、寄付金の全額が自治体の行政サービスに使われるわけではありません。

自治体は寄付を集めるために、返礼品の調達費用、配送費用、広告宣伝費、決済手数料、仲介サイト手数料などを負担しています。

総務省の調査によると、2025年度の仲介サイト手数料率は11.5%でした。

例えば、自治体が1億円の寄付を集めた場合、平均的な手数料率を単純に当てはめると、仲介サイトへの支払いは1,150万円となります。

10億円の寄付であれば1億1,500万円、100億円の寄付であれば11億5,000万円です。

もちろん、実際の手数料は契約条件やサービス内容によって異なります。

それでも、寄付額の1割以上が仲介サイト運営事業者に支払われる構造は、自治体財政の観点から無視できない問題です。

自治体の92%が手数料引き下げに不満

日本経済新聞は2026年9月、全国815市区を対象に仲介サイト運営事業者の手数料引き下げ対応について調査しました。

回答したのは595市区で、回答率は73%でした。

事業者の対応について、64%が期待に沿うものではなかったと回答し、28%がどちらかといえば期待に沿うものではなかったと回答しています。

合計すると92%に達します。

さらに、実際の手数料負担の軽減につながらないとの見方も86%に上りました。

総務省は2026年5月、仲介サイト運営事業者に手数料の引き下げを要請しました。

しかし、基本手数料の引き下げを具体的に表明した事業者は1社にとどまり、一部プランの引き下げを表明した事業者も5社でした。

自治体側からすれば、国が手数料削減を求めても、事業者の対応が十分でなければ実際の経費削減にはつながりません。

このため、自治体の間では自主的な引き下げ要請だけでは限界があるとの認識が広がっています。

募集経費の上限は2029年に40%へ

今回の問題を理解するうえで重要なのが、総務省による募集経費規制の強化です。

ふるさと納税制度では、自治体間の過度な返礼品競争を防ぐため、返礼品の調達費用や寄付募集に必要な経費に制限が設けられています。

従来、募集経費の上限は寄付額の50%でした。

これが2026年10月から47.5%に引き下げられ、2029年にかけて40%まで段階的に引き下げられる方針です。

例えば、寄付額が1億円の場合、従来は最大5,000万円まで募集経費を支出できました。

2026年10月以降は4,750万円となり、2029年に40%まで引き下げられれば4,000万円となります。

従来と比較すると、募集経費を1,000万円削減する必要があります。

一方、仲介サイト手数料が11.5%のままであれば、1億円の寄付に対する手数料は1,150万円です。

募集経費全体の上限が40%になると、仲介サイト手数料だけで募集経費枠の28.75%を占める計算になります。

自治体は残りの経費枠で返礼品の調達、配送、広告宣伝、事務処理などを賄わなければなりません。

なお、返礼品の調達費用には原則として寄付額の30%以下という別の基準もあります。

募集経費全体の上限が40%になった場合、返礼品の調達費用を30%、仲介サイト手数料を11.5%とすると、それだけで41.5%となり、配送費などを含める前に上限を超えてしまいます。

この構造こそ、自治体が手数料引き下げを強く求める理由です。

手数料規制を求める自治体は69%

日本経済新聞の調査では、国に求める対応として、手数料の上限設定などの規制を挙げた自治体が69%に達しました。

さらなる引き下げ要請を求める自治体は45%、手数料や契約条件などの透明化を求める自治体は25%でした。

これらの結果から、自治体側が単なる自主的な値下げ要請だけでなく、制度的な対応を求めていることが分かります。

例えば、仲介サイト手数料に一定の上限を設ける方法が考えられます。

仮に手数料率の上限を8%とすれば、1億円の寄付に対する手数料は800万円となり、11.5%の場合と比較して350万円削減できます。

寄付額が10億円であれば3,500万円、100億円であれば3億5,000万円の削減効果です。

ただし、これは手数料率を一律に引き下げた場合の単純計算であり、実際には契約内容やサービスの変更によって削減額が異なります。

また、上限規制によって仲介サイト運営事業者の収益が減少すれば、広告宣伝や寄付者向けサービスの縮小につながる可能性もあります。

自治体の負担軽減と民間事業者の健全な競争をどのように両立させるかが重要になります。

仲介サイトには寄付を集める重要な役割もある

仲介サイトの手数料を単なる無駄な経費と考えることには注意が必要です。

ふるさと納税では、多くの寄付者が仲介サイトを利用して寄付先を探しています。

仲介サイトには、返礼品の検索、自治体の紹介、寄付手続き、決済、寄付履歴の管理など、さまざまな機能があります。

自治体が独自に同様の仕組みを整備するには、システム開発費や維持管理費、人件費などが必要です。

また、大手仲介サイトには多くの利用者が集まるため、知名度の低い自治体でも全国の寄付者に情報を届けることができます。

今回の調査でも、仲介サイトの存在によって寄付を獲得できているとの意見がありました。

さらに、手数料の削減がサービスの低下につながることを懸念する自治体もあります。

重要なのは、手数料率の高さだけで判断するのではなく、支払った手数料に対してどれだけの寄付獲得効果があるかを検証することです。

例えば、手数料率が10%のサイトで1億円の寄付を集める場合と、手数料率が5%のサイトで5,000万円の寄付しか集められない場合では、自治体に残る寄付金の総額が異なります。

したがって、自治体は手数料率と寄付獲得額の両面から、仲介サイトの費用対効果を評価する必要があります。

国直営サイトの創設は解決策になるのか

自治体からは、国が直接運営するふるさと納税サイトの創設を求める声も上がっています。

国直営サイトが実現すれば、民間仲介サイトへの依存度を下げられる可能性があります。

また、全国共通の仕組みを整備することで、自治体ごとに異なる事務処理の標準化も期待できます。

ただし、国直営サイトにも課題があります。

システムの開発費用、運営費用、情報セキュリティー対策、問い合わせ対応などの負担が発生するためです。

仮に自治体が支払う手数料を低く抑えられたとしても、その費用を国の予算で賄うのであれば、最終的には税金による負担となります。

また、民間サイトが競争を通じて進めてきた利便性向上や新しいサービスの開発が停滞する可能性もあります。

国直営サイトを創設する場合には、民間サイトとの役割分担を明確にする必要があります。

例えば、国は共通の寄付受付基盤や制度情報の提供を担い、民間事業者は返礼品の紹介や利用者向けサービスで競争する仕組みも考えられます。

ふるさと納税は税収の再配分制度でもある

ふるさと納税の問題を考える際には、税制上の性格にも注目する必要があります。

ふるさと納税は、寄付者が選択した自治体に寄付を行う一方、居住自治体の個人住民税などが減少する仕組みです。

つまり、自治体間で税収が移転する性格を持っています。

例えば、東京都内の住民が地方自治体に10万円を寄付した場合、一定の条件を満たせば、自己負担額2,000円を除いた9万8,000円が所得税や個人住民税から控除されます。

寄付を受けた自治体には10万円が入りますが、その全額が自由に使える財源になるわけではありません。

返礼品や仲介サイト手数料などの募集経費が差し引かれるためです。

一方、寄付者が居住する自治体では住民税収が減少します。

このため、ふるさと納税制度全体で考えると、自治体間の税収移転に伴って、返礼品費用や仲介手数料などの経費が発生する構造となっています。

特に仲介サイト手数料は、自治体から民間事業者への資金移転です。

制度の本来の目的である地域活性化や自治体への財源移転と、寄付募集に必要な経費とのバランスが問われています。

寄付者にも制度の費用構造を理解する必要がある

ふるさと納税は、寄付者にとって魅力的な制度です。

しかし、返礼品の価値だけを基準に寄付先を選ぶことが、必ずしも地域への支援につながるとは限りません。

例えば、同じ1万円の寄付であっても、募集経費が5,000円か4,000円かによって、自治体に残る金額は異なります。

募集経費が5,000円であれば5,000円、4,000円であれば6,000円が残ります。

寄付者が地域の政策や行政サービスに関心を持ち、寄付金の使途を確認することも重要です。

自治体によっては、子育て支援、教育、医療、福祉、防災、地域産業の振興など、寄付金の活用目的を公表しています。

返礼品を受け取ることだけでなく、寄付によって地域にどのような効果が生まれるのかを考えることが、制度の健全な発展につながります。

2026年末の税制改正議論が転換点に

総務省は2026年末に向けて、仲介サイト手数料への対応を検討する方針です。

藤井比早之総務相は2026年9月末、年末の税制改正に向けて具体的な検討を進める考えを示しました。

今後の論点としては、手数料率の上限規制、契約条件の透明化、募集経費の算定方法、国直営サイトの可能性などが考えられます。

ただし、2026年10月時点で、仲介サイト手数料の法的な上限設定などが正式に決定したわけではありません。

今後の制度改正では、自治体の財政負担を軽減するだけでなく、寄付者の利便性、民間事業者の競争環境、地域産業への影響も考慮する必要があります。

特に、募集経費の上限が2029年に40%まで引き下げられる方針である以上、自治体には中長期的な対応が求められます。

返礼品の調達費用や配送費用の見直し、仲介サイトの選別、寄付者との直接的な関係構築など、寄付募集のあり方そのものを再検討する必要があります。

結論

ふるさと納税の仲介サイト手数料を巡る問題は、単なる自治体と民間事業者の価格交渉ではありません。

ふるさと納税制度を通じて集められた資金を、どれだけ効率的に地域の行政サービスや地域経済の振興に活用できるかという問題です。

2025年度の仲介サイト手数料率は11.5%であり、寄付額の1割以上が仲介サイト運営事業者に支払われています。

一方、募集経費の上限は2026年10月から47.5%に引き下げられ、2029年にかけて40%まで段階的に引き下げられる方針です。

このため、自治体の経費削減努力だけでは対応が難しくなる可能性があります。

もっとも、仲介サイトには寄付者の獲得や利便性向上という重要な役割があり、手数料の一律規制が必ずしも最適な解決策になるとは限りません。

今後は、手数料の透明化を進めるとともに、自治体がサービスの費用対効果を適切に比較できる環境を整備することが重要です。

また、寄付者も返礼品の魅力だけでなく、寄付金が地域でどのように活用されるのかに関心を持つ必要があります。

ふるさと納税は、本来、自分が応援したい地域を寄付によって支援する制度です。

制度の持続可能性を高めるためには、寄付を集める競争から、寄付金を地域のために有効活用する競争へと転換することが求められます。

2026年末の税制改正議論は、ふるさと納税制度のあり方を見直す重要な機会となりそうです。

参考

日本経済新聞 2026年10月10日付 ふるさと納税サイト手数料下げ、市区の9割が不満 日経調査

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