家族信託した自宅を売却すると3000万円特別控除は使えるのか 信託と譲渡所得編

税理士
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近年、認知症対策や円滑な財産承継の手段として家族信託を利用する人が増えています。

自宅を信託財産とし、子どもを受託者にして管理や売却を任せるケースも珍しくありません。

では、家族信託した自宅を売却した場合、居住用財産の3000万円特別控除は利用できるのでしょうか。

答えは「家族信託だから使えない」「家族信託なら必ず使える」という単純なものではありません。信託の仕組みと税法上の考え方を理解することが重要です。

家族信託とは何か

家族信託とは、自分の財産の管理や処分を信頼できる家族に任せる仕組みです。

例えば、高齢の親が委託者となり、子どもが受託者となって自宅を管理するケースがあります。

認知症によって判断能力が低下した場合でも、受託者が契約や売却などを行えるため、柔軟な財産管理が可能になります。

近年は相続対策だけでなく、認知症対策としても広く活用されています。

信託しただけでは税務上の取扱いは変わらない

家族信託を利用すると、自宅の名義は受託者へ移転します。

しかし、税務上は形式的な名義だけで判断するわけではありません。

一般的な家族信託では、委託者と受益者が同一人であることが多く、このような場合には経済的利益は引き続き受益者に帰属すると考えられます。

そのため、家族信託を設定しただけで譲渡所得税の考え方が大きく変わるわけではありません。

3000万円特別控除の判断基準

3000万円特別控除で重要なのは、自宅が居住用財産に該当するかどうかです。

つまり、

・誰が生活していたのか

・生活の本拠だったのか

・適用要件を満たしているのか

という点が判断の中心になります。

信託契約を締結したこと自体は、特例の適用を左右する決定的な要素ではありません。

税法は形式ではなく実態を重視します。

委託者と受益者の関係を理解する

家族信託では、

・委託者

・受託者

・受益者

という3つの立場があります。

委託者は財産を信託する人、受託者は管理や処分を行う人、受益者は信託財産から利益を受ける人です。

税務では、誰が経済的利益を受けるのかが重要になります。

そのため、契約内容によって税務上の取扱いが変わることもあり、信託契約書の内容を十分確認する必要があります。

実務で注意したいポイント

家族信託を利用している場合には、通常の不動産売却以上に注意すべき点があります。

例えば、

・信託契約書の内容

・信託登記の状況

・受託者の権限

・売却代金の帰属先

・居住実態

などです。

これらを十分確認しないまま売却を進めると、契約手続だけでなく税務上も問題が生じる可能性があります。

司法書士や税理士など、それぞれの専門家が連携して対応することが重要になります。

裁判例が示した重要な考え方

近年の裁判では、家族信託が設定されていた住宅についても、最終的な判断は居住実態に基づいて行われました。

裁判所は、水道や電気の使用状況、ATMの利用履歴などから生活の本拠を認定しています。

つまり、家族信託があったことよりも、その住宅が本当に居住用財産だったのかが最大の争点となりました。

この考え方は、今後の実務でも重要な判断基準になると考えられます。

結論

家族信託を利用した自宅であっても、一定の要件を満たせば3000万円特別控除を受けられる可能性があります。

一方で、家族信託を利用しているからという理由だけで特例が認められるわけではありません。

信託契約の内容だけでなく、居住実態や売却時期、受益者の状況などを総合的に判断することが重要です。

家族信託は資産管理の有効な手段ですが、その効果を十分に生かすためには、不動産法務と税務の双方を踏まえた準備が欠かせないといえるでしょう。

参考

税のしるべ(2026年7月27日)

居住用財産を譲渡した場合の特別控除の適用巡り判決、地裁も特別控除を適用した家屋を生活の拠点と認めず

国税庁

「マイホームを売ったときの特例(居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除)」

租税特別措置法

信託法

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