インドでは近年、現金を使わずにスマートフォンで支払いを済ませる光景が日常となっています。その中心にあるのが「UPI(Unified Payments Interface)」です。
UPIはインド政府などが整備したリアルタイム決済システムであり、銀行口座同士を瞬時につなぐことができます。現在では世界最大級のデジタル決済基盤へ成長し、多くの国がその仕組みに注目しています。
今回は、UPIの仕組みや普及の背景、インド経済への影響について解説します。
UPIとは
UPIは「Unified Payments Interface」の略で、日本語では「統合決済インターフェース」と訳されています。
インドでは、銀行口座とスマートフォンを連携させることで、24時間365日、リアルタイムに送金や決済ができます。
専用アプリを利用すれば、相手の口座番号を知らなくても送金できます。
個人間送金だけでなく、
・店舗での買い物
・公共料金の支払い
・ネット通販
・給与の受け取り
・飲食店での支払い
など幅広い場面で利用されています。
現金を持ち歩かなくても生活できる環境が急速に整っています。
普及した背景
UPIが急速に普及した背景には、政府によるデジタル化政策があります。
インドでは2016年、高額紙幣の廃止(いわゆる「高額紙幣の廃貨」)を契機として、キャッシュレス決済の利用が一気に広がりました。
さらに、
・スマートフォンの普及
・低価格なモバイル通信
・銀行口座の普及
・QRコード決済の拡大
などが重なり、多くの人がデジタル決済を利用するようになりました。
現在では都市部だけでなく地方でも利用が広がり、小規模な商店や屋台でもQRコードによる支払いが一般的になっています。
どのような仕組みなのか
UPIは銀行口座同士を直接結ぶ決済システムです。
一般的なクレジットカード決済では、カード会社など複数の事業者を経由します。
一方、UPIでは銀行口座から銀行口座へ直接資金が移動します。
利用者はスマートフォンのアプリからQRコードを読み取るだけで支払いが完了します。
送金も数秒程度で終了するため、現金よりも便利な場面が増えています。
また、利用手数料が低いことも普及を後押ししました。
小規模店舗でも導入しやすく、多くの事業者がUPI決済に対応しています。
インド経済への効果
UPIはインド経済にも大きな変化をもたらしました。
現金取引が減少することで、お金の流れが可視化され、税務行政の効率化にもつながっています。
また、中小企業や個人事業主も簡単にキャッシュレス決済を導入できるようになり、取引の利便性が向上しました。
さらに、銀行口座を持つ人が増えたことで金融サービスへのアクセスも改善しています。
預金や融資、保険、投資など金融サービスの利用拡大は、経済全体の活性化にも寄与しています。
UPIは単なる決済サービスではなく、金融インフラとして重要な役割を果たしています。
世界から注目される理由
UPIは世界でも先進的なデジタル決済システムとして評価されています。
最大の特徴は、リアルタイムで低コストの送金を実現していることです。
これまで銀行振込には時間や手数料がかかることが一般的でしたが、UPIではその課題を大きく改善しました。
そのため、アジアや中東、アフリカなどでは、インドの仕組みを参考にデジタル決済基盤を整備する動きも広がっています。
国際送金への活用も進められており、インド国外との決済ネットワーク拡大も期待されています。
課題もある
UPIの利用拡大には課題もあります。
利用者が増えるほど、サイバー攻撃や不正送金への対策が重要になります。
また、個人情報の保護やシステム障害への対応も欠かせません。
さらに、高齢者やデジタル機器に不慣れな人へのサポートも必要です。
デジタル化が進む一方で、誰もが安心して利用できる環境づくりが求められています。
結論
UPIは、銀行口座同士をリアルタイムで結ぶインドのデジタル決済基盤であり、世界最大級のキャッシュレス決済システムへ成長しました。
スマートフォンの普及や政府のデジタル化政策を背景に急速に利用が広がり、経済の効率化や金融包摂の推進にも大きく貢献しています。
今後は国際決済への活用も期待されており、UPIはインドだけでなく、世界のデジタル決済の発展を考えるうえでも注目すべき仕組みといえるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年8月6日 朝刊「インド株、海外マネー回帰 業績改善、5カ月ぶり買い越し 巨額IPOも呼び水に」