SDGsと地方企業の採用とは何か 若者の地元就職につなげる仕組み編

人生100年時代
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人口減少が進む地方では、人手不足が企業経営の大きな問題になっています。

特に若者が進学や就職をきっかけに都市部へ移動し、そのまま戻らない地域では、企業が事業を続けるための人材を確保すること自体が難しくなっています。

そこで注目されるのが、企業のSDGsへの取り組みを採用活動に活用する方法です。

環境問題への対応、地域社会への貢献、多様な人材が働ける職場づくりなどを学生に伝えることで、給与や企業規模だけでは分からない企業の魅力を知ってもらいます。

兵庫県では、学生を登録企業へ派遣してSDGsの取り組みを紹介する動画を作成するなど、若者と地域企業を結び付ける取り組みを進めています。

SDGsは環境や社会問題への対応だけではなく、地方企業の採用力を高め、若者の地元定着につなげる手段にもなり得ます。

地方企業ではなぜ人手不足が深刻なのか

地方企業の人手不足には複数の要因があります。

まず地域全体の若年人口が減っています。

さらに高校卒業後や大学進学時に若者が都市部へ移動します。

大学卒業後も都市部の企業へ就職すれば、地域へ戻る人は限られます。

企業側から見ると、採用したい人数に対して応募する若者そのものが少なくなります。

人材を採用できなければ、事業を拡大できないだけでなく、現在の事業を維持することさえ難しくなる場合があります。

人手不足は企業だけの問題ではなく、地域経済の持続可能性に直結する問題です。

地方には知られていない企業が多い

地方企業の採用では、知名度の低さも課題になります。

地域には高い技術力を持つ製造業や、全国的な取引を行っている企業があっても、一般消費者向けの商品を扱っていなければ学生には知られていないことがあります。

企業名を知らなければ、就職先の候補にも入りません。

特に企業間取引を中心とする中小企業では、優れた技術や安定した経営基盤があっても学生へ伝わりにくい場合があります。

まず企業の存在を知ってもらうことが採用の出発点になります。

若者は企業の何を見るのか

就職先を選ぶ際には、給与、勤務地、休日、福利厚生など様々な条件が判断材料になります。

それに加えて、その企業がどのような仕事をしているのか、社会にどのような価値を提供しているのかも企業を理解する材料になります。

自分の仕事が社会とどうつながっているのか。

地域のどのような課題を解決しているのか。

環境問題へどのように対応しているのか。

どのような人が働いているのか。

SDGsは、こうした企業の取り組みを学生へ説明する際の共通言語として利用できます。

SDGsを企業の仕事内容と結び付ける

単に自社はSDGsに取り組んでいると宣言するだけでは、採用活動にはつながりにくいでしょう。

重要なのは本業との関係を示すことです。

例えば繊維企業なら、製造工程で発生する廃材を再生素材として利用している。

食品企業なら、食品ロスを減らしている。

建設会社なら、省エネルギー住宅や地域防災に取り組んでいる。

金融機関なら、地域企業への融資を通じて地域経済を支えている。

こうした具体的な仕事内容とSDGsを結び付けることで、学生は企業が社会で果たしている役割を理解しやすくなります。

兵庫県では学生が企業を取材する

日本経済新聞の記事では、兵庫県が若者の県内就職や定着を促すため、登録企業へ学生を派遣してSDGsの取り組みを紹介する動画を作成していることが紹介されています。

この方法には、単なる企業広告とは異なる意味があります。

企業自身が自社の魅力を説明するだけでなく、学生が実際に企業を訪問します。

仕事内容を見る。

社員の話を聞く。

SDGsへの取り組みを調べる。

そのうえで学生の視点から情報を発信します。

学生が企業を知る機会そのものをつくっているわけです。

企業と学生の接点を早くつくる

採用活動では、学生が就職活動を始めてから企業を知ってもらおうとしても、大企業との競争になりやすくなります。

その前から接点をつくることが重要です。

企業見学。

インターンシップ。

地域課題をテーマにした授業。

企業との共同研究。

SDGs活動への参加。

こうした機会を通じて学生が地域企業を知れば、就職先として考える可能性が生まれます。

採用活動を就職説明会だけで考えるのではなく、学生と企業が継続的に接点を持つ仕組みとして考える必要があります。

SDGs登録制度が企業を見つける入口になる

自治体のSDGs登録制度には、地域企業を見える化する役割があります。

学生から見ると、地域にどのような企業があるのかを一社ずつ調べることは簡単ではありません。

登録企業の一覧があれば、環境、福祉、地域活性化など、自分が関心を持つテーマから企業を探すことができます。

大学や高校にとっても、授業やインターンシップで連携する企業を探しやすくなります。

SDGs登録制度を企業の認証だけで終わらせず、人材とのマッチングに利用することができます。

奨学金返済支援も採用策になる

兵庫県では、社員の奨学金返済を支援する企業への補助も行っています。

若者にとって奨学金返済は長期間続く負担になることがあります。

企業が返済を支援すれば、実質的な待遇改善になります。

企業側にとっても採用時の魅力を高めることができます。

自治体が企業の負担を支援すれば、企業単独では導入しにくい制度を広げられる可能性があります。

若者の県内就職と企業の人材確保という双方の課題を同時に解決する施策と考えることができます。

採用だけでなく定着が重要

若者を採用できても、短期間で退職して地域外へ移れば、人手不足の解決にはなりません。

そのため採用人数だけでなく定着率を見る必要があります。

仕事にやりがいがある。

成長できる。

適切な評価を受けられる。

働きやすい。

地域で生活を続けられる。

こうした条件がそろって初めて長期的な定着につながります。

SDGsを掲げていても、実際の職場環境が伴っていなければ逆効果になる可能性があります。

SDGsを採用広告だけに使わない

SDGsという言葉を採用パンフレットへ掲載するだけでは十分ではありません。

環境に配慮していると説明しながら大量の廃棄物を出している。

働きがいを掲げながら長時間労働が常態化している。

多様性を掲げながら実際には働き方の選択肢がない。

こうした状態では、企業の発信と実態の差が生まれます。

情報を調べやすい時代では、学生も企業の実態を確認します。

SDGsを採用活動に利用するなら、実際の経営や職場づくりと一致させることが重要です。

中小企業には強みもある

地方の中小企業は、大企業と給与や知名度だけで競争すると不利になる場合があります。

一方、中小企業だからこその魅力もあります。

若いうちから幅広い仕事を担当できる。

経営者との距離が近い。

自分の提案が事業に反映されやすい。

地域への貢献を実感しやすい。

こうした特徴をSDGsの取り組みと結び付ければ、企業独自の魅力として発信できます。

大企業と同じ採用競争をするのではなく、自社で働く意味を明確にすることが重要です。

若者の地元就職は地域経済を循環させる

若者が地域企業へ就職すれば、企業の人手不足を補うだけではありません。

地域で給与を受け取り、地域で生活します。

住宅を借りる。

買い物をする。

飲食店を利用する。

子育てをする。

こうした消費が地域企業の売上になります。

さらに将来的に地域で起業する人が出る可能性もあります。

若者の定着は人口政策であると同時に、地域内経済循環を維持するための経済政策でもあります。

採用人数以外の成果も測る

SDGsを採用へ活用する場合、その成果を確認することも重要です。

登録企業への学生の認知度は上がったのか。

企業への応募者は増えたのか。

県内就職率は上昇したのか。

採用された若者は地域に定着しているのか。

企業側の人手不足は改善したのか。

動画の作成本数やイベント参加人数だけでは、本当の成果は分かりません。

活動量ではなく、その結果として若者の行動がどう変わったのかを見る必要があります。

結論

SDGsと地方企業の採用を結び付ける取り組みとは、地域企業が環境、福祉、地域社会などにどのような価値を生み出しているのかを見える化し、若者に企業を知ってもらうことで地元就職につなげる仕組みです。

地方企業には優れた技術や事業があっても、学生に知られていない企業が少なくありません。

SDGs登録制度や学生による企業取材、インターンシップなどは、企業と若者が出会う入口になります。

ただし、SDGsという看板を掲げるだけでは採用力は高まりません。

本業そのものがどのような地域課題を解決しているのかを具体的に示し、実際の職場環境や働き方も伴わせる必要があります。

そして重要なのは採用することだけではなく、若者がその企業と地域に長く定着することです。

若者が地域企業で働き、地域で所得を得て、地域で消費するようになれば、その効果は一企業の人材確保にとどまりません。

SDGsを企業の社会貢献の説明だけで終わらせず、企業の存在意義を若者へ伝える共通言語として活用する。

それが地方企業の採用力を高め、人口減少時代の地域経済を支える一つの方法になるでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 自治体SDGs、企業が相棒

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 SDGsパートナー 甲府の登山用品店、天然素材の衣類提案

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