会社の業績を管理するとき、多くの人が最初に見るのは売上や利益です。
今月の売上はいくらだったのか。
予算を達成したのか。
利益はいくら残ったのか。
もちろん、これらは重要な数字です。
しかし、売上が予算を下回ったことが分かるのは、基本的には営業活動を行った後です。
売上が落ちてから原因を調べるより、その前の段階で営業活動の変化に気づくことができれば、もっと早く対策を打てる可能性があります。
参考記事では、売上未達の原因を掘り下げた結果、主力製品の販売数量が減少し、その背景として主要得意先への訪問回数が半分に減っていたという例が示されています。
このように、売上という最終的な結果だけでなく、その結果につながる途中の活動を見ることが経営管理では重要です。
その際に使われる代表的な考え方がKPIです。
なお、参考記事ではKPIという用語そのものについて詳しく説明しているわけではありません。ここでは、記事にある訪問回数と販売数量の関係をもとに、KPIの一般的な考え方を整理します。
KPIの意味
KPIは、会社が目標を達成するまでの途中経過を確認するために設定する重要な指標です。
最終的な目標だけを見ていると、問題に気づくのが遅くなることがあります。
たとえば、ある営業部門が月間売上1000万円を目標としていたとします。
月末になって売上が800万円だったと分かれば、200万円の未達です。
しかし、月末になってから問題に気づいても、その月の売上を取り戻すことは難しくなります。
そこで、売上につながる途中の活動を数字で確認します。
顧客への訪問回数。
商談件数。
見積件数。
受注件数。
こうした数字を継続的に確認していれば、売上という最終結果が出る前に営業活動の変化を把握できる可能性があります。
売上と訪問回数の違い
参考記事では、売上未達について原因を掘り下げたところ、主力製品の販売数量減少が分かり、さらに主要得意先への訪問回数が半分になっていたことが判明しています。
ここで売上と訪問回数には大きな違いがあります。
売上は営業活動の結果として表れる数字です。
一方、訪問回数は営業担当者が実際に行う活動です。
売上を直接「100万円増やす」と決めても、担当者がその数字そのものを自由に動かせるわけではありません。
顧客が商品を購入するかどうかによっても売上は変わるからです。
しかし、顧客への訪問回数であれば、自社側で比較的管理しやすくなります。
参考記事でも、アクションは自分たちの手で動かせる要因に絞ることが重要だと説明されています。
結果だけではなく、その結果につながる行動を見ることがポイントになります。
売上が生まれるまでには途中の活動がある
法人営業を単純化して考えると、売上が発生するまでにはいくつもの段階があります。
顧客へアプローチします。
顧客と商談します。
商品やサービスを提案します。
見積もりを提出します。
顧客から注文を受けます。
そして商品を納品することで売上になります。
この流れのどこかに問題が発生すると、最終的な売上にも影響する可能性があります。
たとえば顧客へのアプローチが減れば、その後の商談件数が減る可能性があります。
商談が減れば見積件数が減り、最終的な受注件数も減る可能性があります。
売上だけを見ていると、こうした途中の変化が見えません。
そこで、途中の活動を数字として把握することが重要になります。
先行指標と遅行指標
経営管理では、将来の結果に先立って変化する指標と、活動の結果として後から表れる指標を分けて考えることがあります。
売上は、多くの場合、営業活動を行った結果として表れる数字です。
その意味では遅行的な指標として見ることができます。
一方、顧客への訪問件数や商談件数などは、売上より前の段階で発生します。
こうした数字を先行的な指標として使えば、将来の売上変化を早く察知する手掛かりになります。
たとえば、売上はまだ予算通りだったとしても、主要顧客への訪問件数が3カ月連続で減っているとします。
その状態が続けば、将来の商談や受注が減少する可能性があります。
売上が実際に減ってから対策するのではなく、その前に訪問活動を見直すことができます。
ただし、訪問回数を増やせば必ず売上が増えるとは限りません。
その指標が本当に結果と関係しているのかを継続的に検証することも必要です。
KPIは多ければよいわけではない
会社ではさまざまな数字を集めることができます。
訪問件数。
電話件数。
商談件数。
見積件数。
受注件数。
新規顧客数。
既存顧客の購入回数。
こうした数字をすべて管理しようとすると、数字を集計すること自体が仕事になってしまうことがあります。
重要なのは、最終的な目標につながる重要な数字を選ぶことです。
たとえば主要得意先との接触頻度が販売数量に大きく影響する会社であれば、主要得意先への訪問回数を確認する意味があります。
一方、訪問回数と売上にほとんど関係がないビジネスであれば、訪問回数をKPIとして管理しても効果は限定的です。
KPIは、測定できる数字を何でも並べればよいものではありません。
会社の目標と実際の業務とのつながりを考えて設定する必要があります。
予実管理にKPIを組み込む意味
KPIは予実管理と組み合わせることで、より具体的な原因分析に利用できます。
たとえば売上予算1000万円に対して、実績が900万円だったとします。
100万円の未達です。
ここから販売数量を確認すると、予定より少なくなっていました。
さらにKPIとして管理している訪問回数を見ると、主要顧客への訪問が予定より大幅に減っていたとします。
すると、
売上未達
販売数量減少
訪問回数減少
というつながりが見えてきます。
参考記事で示されている事例も、このように売上から販売数量、さらに訪問回数へと原因を掘り下げています。
売上だけを管理するよりも、途中の活動まで数字で把握しておくことで、原因を見つけやすくなります。
KPIを具体的なアクションにつなげる
問題となるKPIが見つかったら、次に具体的な行動を決めます。
参考記事では、主要得意先への訪問回数が減っていたという原因に対して、上位10社への訪問を月2回に戻すという行動が示されています。
さらに営業部長が担当し、今月中に訪問予定を組み直し、来月の予実会議で販売数量の推移を確認するというところまで具体化しています。
この例では、「営業を強化する」という曖昧な方針ではありません。
訪問回数という具体的な数字へ落とし込まれています。
そのため、翌月になれば実行できたのかを確認できます。
月2回訪問したのか。
していないのか。
数字で確認できるところが重要です。
KPIそのものを目的にしない
KPIを使うときに注意したいのは、その数字を達成すること自体が目的にならないようにすることです。
たとえば訪問回数を月2回と決めたとします。
営業担当者が形式的に訪問回数だけ増やしても、商談内容が伴わなければ販売数量が増えない可能性があります。
本来の目的は訪問回数を増やすことそのものではありません。
売上や利益など、会社が目指す結果につなげることです。
だからこそ、参考記事で示されているように、翌月には訪問回数だけでなく数量が回復したかも確認する必要があります。
訪問回数は戻った。
しかし数量は回復しなかった。
この場合、訪問回数だけが原因ではなかった可能性があります。
そこで別の原因を探します。
KPIは一度決めたら永久に正しい数字ではありません。
結果との関係を検証しながら使うことが重要なのです。
KPIによって早く行動できる
KPIを管理する大きな意味は、最終結果が悪化する前に異変を見つけられる可能性があることです。
売上が落ちてから、
なぜ落ちたのか
販売数量が減っていた
なぜ数量が減ったのか
訪問回数が減っていた
と調べることもできます。
しかし、普段から訪問回数を確認していれば、売上が大きく落ち込む前に「最近、主要顧客への訪問が減っている」と気づける可能性があります。
そこで営業活動を修正できれば、将来の売上減少を防げるかもしれません。
予実管理が過去の数字を見る仕組みだけでなく、未来の数字を変えるための仕組みになるためにも、結果につながる途中の活動を見ることが重要になります。
結論
KPIとは、会社が最終的な目標へ向かって進んでいるかを確認するために、途中の重要な活動や状態を数字で把握する考え方です。
売上や利益は非常に重要ですが、多くの場合、活動の結果として表れる数字です。
売上が悪化してから原因を探すのでは、対応が遅れることがあります。
そこで、顧客への訪問件数や商談件数、見積件数など、売上につながる途中の活動を確認します。
参考記事の事例でも、売上未達から販売数量の減少へ、さらに主要得意先への訪問回数の減少へと原因を掘り下げています。
そして訪問回数を具体的に増やし、翌月に販売数量が回復したのかを確認します。
重要なのは、KPIを達成すること自体を目的にしないことです。
KPIが改善した結果、本当に売上や利益などの最終的な成果が改善したのかまで検証する必要があります。
最終結果だけを見るのではなく、その結果が生まれる前の変化を見る。
それによって問題を早く発見し、早く行動することができるようになることが、KPIを予実管理に組み込む大きな意味なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 猫と学ぶ経理力の磨き方 第9話 頑張りますで終わらせたら予実管理ちゃうで