会社の業績を確認するとき、売上や利益は非常に重要な数字です。
しかし、売上が減ったことを確認できるのは、営業活動の結果が数字として表れた後です。
月末になって売上が予算を大きく下回っていることが分かり、そこから原因を調べ始めても、すでにその月は終わっています。
では、売上が実際に落ちる前に、何らかの異変を見つけることはできないのでしょうか。
そこで重要になるのが、訪問件数や商談件数など、売上より前に動く数字を見ることです。
こうした将来の結果に先立って変化する数字を、先行指標として利用することがあります。
なお、参考記事では先行指標という用語そのものについて詳しく説明しているわけではありません。ここでは、記事で紹介されている売上未達、販売数量の減少、主要得意先への訪問回数の減少という関係をもとに、先行指標の一般的な考え方を整理します。
先行指標の意味
先行指標とは、将来起こる結果よりも先に変化し、その結果を予測する手掛かりとして利用できる指標です。
たとえば営業活動を考えてみます。
営業担当者が顧客を訪問します。
その中から商談が生まれます。
見積もりを提出します。
顧客から注文を受けます。
商品を納品します。
そして最終的に売上が計上されます。
この流れで考えると、売上が発生するよりも前に、訪問や商談といった活動が行われています。
そのため、訪問件数や商談件数が大きく減少していれば、少し遅れて受注や売上にも影響が出る可能性があります。
売上が減ってから異変に気づくのではなく、その前の段階にある数字を見る。
これが先行指標を利用する基本的な考え方です。
売上が遅行指標になる理由
売上は会社にとって重要な成果ですが、多くの場合、さまざまな活動を行った結果として表れます。
今日、顧客を訪問したからといって、その日のうちに売上になるとは限りません。
訪問後に提案を行い、見積もりを提出し、顧客が社内で検討し、その後に注文が出ることがあります。
実際に売上として計上されるまでに数週間や数カ月かかることもあります。
つまり、売上は営業活動の結果として後から表れる数字です。
このような指標は、先行指標との対比では遅行指標として考えることができます。
売上を確認することはもちろん必要です。
ただし、売上だけを見ていると、問題が数字として表面化してから気づくことになります。
そこで、売上が生まれる前の活動にも目を向けます。
訪問件数から異変を見つける
参考記事では、売上が予算を40万円下回った事例が紹介されています。
原因を調べると、主力製品の販売数量が減少していました。
さらに原因を掘り下げると、主要得意先への訪問回数が繁忙を理由に半分になっていたことが分かりました。
この例では、売上が減った後に訪問回数の減少が判明しています。
しかし、もし主要得意先への訪問回数を普段から確認していたらどうでしょうか。
訪問回数が半分になった段階で、
最近、主要顧客への営業活動が減っている
この状態が続けば販売数量にも影響するのではないか
と考えることができます。
まだ売上が大きく落ちていない段階で営業活動を修正できる可能性があります。
訪問件数が先行指標として機能すれば、売上という結果が悪化する前の警報として使えるわけです。
商談件数も先行指標になる
訪問件数だけでなく、商談件数も売上より前に動く数字の一つです。
たとえば、通常は毎月100件の商談があり、その後一定割合が受注につながっている会社があるとします。
ところが今月の商談件数が60件まで減ったとします。
現在の売上には、前月以前に受注した案件が含まれているため、まだ大きな変化が出ていないかもしれません。
それでも商談件数が40件減っているのであれば、将来の受注や売上が減少する可能性があります。
そこで、
なぜ商談が減ったのか
訪問件数が減っているのか
問い合わせが減っているのか
営業担当者が既存業務に追われているのか
といった原因を調べます。
早い段階で原因が分かれば、売上が落ちる前に対策を打てる可能性があります。
見積件数や受注件数にも注目する
営業活動では、売上に至るまで複数の段階があります。
そのため、どの数字を先行指標として使うべきかは会社によって異なります。
訪問件数が重要な会社もあります。
商談件数が重要な会社もあります。
見積件数や受注件数を見る方が適している会社もあります。
たとえば、
訪問件数は十分ある
商談件数も減っていない
しかし見積件数が減っている
という状況なら、訪問不足ではなく、商談から具体的な提案へ進めていないことが問題かもしれません。
反対に、
見積件数は変わらない
受注件数だけが減っている
という場合には、価格や商品競争力など別の原因を考える必要があります。
売上より前の数字を段階ごとに見ることで、どこで問題が起きているのかを発見しやすくなります。
先行指標なら何でもよいわけではない
売上より前に発生する数字であれば、何でも先行指標として役立つわけではありません。
重要なのは、その数字が最終的な成果と関係していることです。
たとえば営業担当者の訪問件数を増やしても、販売数量がまったく変わらない会社があるかもしれません。
その場合、訪問件数を重要な先行指標として管理する意味は小さくなります。
逆に、主要得意先への定期的な訪問が受注量に大きく影響する会社であれば、訪問回数は重要な指標になります。
自社ではどの活動が売上や利益につながっているのか。
その関係を考えて指標を選ぶ必要があります。
単に測りやすい数字を選ぶのではなく、結果とのつながりを見ることが重要です。
先行指標が悪化した原因も調べる
先行指標を設定しただけでは十分ではありません。
その数字が悪化した場合には、さらに原因を掘り下げる必要があります。
参考記事では、訪問回数が減少した理由について、繁忙が原因だったことまで確認しています。
訪問件数が減った。
それだけで分析を止めるのではありません。
なぜ訪問できなかったのか。
事務作業が増えたのか。
人員が不足しているのか。
訪問先の優先順位が明確でなかったのか。
原因によって必要な対策は変わります。
これは売上差異を分析するときと同じ考え方です。
数字の変化を発見するだけでなく、行動を変えられるところまで原因を掘り下げる必要があります。
早期に対策を打てる理由
先行指標を利用する大きなメリットは、時間を確保できることです。
たとえば、訪問件数が減ってから売上に影響が出るまで2カ月かかる会社があるとします。
訪問件数を毎月確認していれば、売上が落ちる2カ月前に異変へ気づける可能性があります。
そこで訪問予定を見直します。
営業担当者の業務負担を調整します。
重要顧客への訪問を優先します。
こうした対応によって、将来の売上減少を小さくできるかもしれません。
一方、売上だけを見ていれば、売上が実際に減少した後で初めて問題を認識することになります。
経営管理では、問題が発生してから正確に説明することだけでなく、問題が大きくなる前に行動することも重要です。
翌月に結果まで確認する
先行指標を改善したら、それで終わりではありません。
参考記事では、主要得意先への訪問を月2回に戻し、翌月の予実会議で販売数量の推移を見るという流れが示されています。
ここには重要なポイントがあります。
訪問回数を戻すこと自体が最終目的ではありません。
訪問回数を戻した結果、販売数量がどうなったのかを確認しています。
もし訪問回数が回復し、販売数量も回復したのであれば、訪問回数と販売数量には一定の関係があったと考えられます。
一方、訪問回数を増やしても販売数量が戻らなければ、別の原因があるかもしれません。
商品の競争力が落ちている可能性もあります。
価格が合わなくなっている可能性もあります。
先行指標は設定して終わりではなく、最終的な成果との関係を検証し続けることが重要なのです。
結論
先行指標とは、売上や利益などの最終的な結果が表れる前に変化し、将来の異変を見つける手掛かりとなる指標です。
営業活動であれば、訪問件数や商談件数、見積件数などが先行指標として利用できる場合があります。
一方、売上は営業活動の結果として後から表れるため、先行指標との対比では遅行指標として考えることができます。
参考記事では、売上未達の原因を掘り下げた結果、販売数量が減少し、その背景に主要得意先への訪問回数の減少があったことが示されています。
もし訪問回数の減少を早い段階で把握できれば、売上が大きく落ちる前に対策を打てる可能性があります。
ただし、先行指標を増やせばよいわけではありません。
その数字が本当に売上や利益につながっているのかを確認する必要があります。
異変を早く見つける。
原因を掘り下げる。
具体的な行動を決める。
そして、その行動によって最終的な成果が改善したのかを確認する。
売上が落ちた理由を後から説明するだけでなく、売上が落ちる前に異変を発見して未来の数字を変えていくことが、先行指標を予実管理に取り入れる大きな意味なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 猫と学ぶ経理力の磨き方 第9話 頑張りますで終わらせたら予実管理ちゃうで