電気自動車(EV)の普及が進むにつれて、銅の需要が急速に増えています。
「EVにはガソリン車の3〜4倍の銅が使われる」といわれることがありますが、なぜこれほど多くの銅が必要なのでしょうか。
その理由は、EVが電気によって走る自動車であり、大量の電力を効率よく制御・供給するために、優れた導電性を持つ銅が欠かせないからです。
今回は、EVで銅の使用量が増える理由や、電動化が資源市場へ与える影響について解説します。
EVにはなぜ多くの銅が必要なのか
ガソリン車では、エンジンが燃料を燃焼させて動力を生み出します。
一方、EVではモーターが電気によって車を走らせます。
電気を効率よく流すためには、多くの配線や電気部品が必要になります。
銅は、
- 電気を流しやすい
- 熱を逃がしやすい
- 加工しやすい
- 耐久性が高い
という優れた特性を持っているため、EVには欠かせない金属となっています。
モーターに使われる銅
EVの心臓部ともいえるのがモーターです。
モーター内部には大量の銅線が巻かれており、電流を流すことで磁力を発生させ、車輪を回転させています。
モーターの性能が高くなるほど、高品質な銅が必要になります。
高効率なモーターは航続距離の延長にもつながるため、自動車メーカーは性能向上を目指して開発を続けています。
その結果、モーター用銅の需要も拡大しています。
配線が大幅に増える
EVでは車全体に張り巡らされる配線も大きく増えます。
例えば、
- バッテリーとモーター
- 急速充電装置
- インバーター
- エアコン
- 電子制御装置
など、多くの機器を接続するために大量の電力ケーブルが必要になります。
ガソリン車でも配線は使用されていますが、高電圧・大電流を扱うEVでは、より多くの銅が必要になります。
そのため、一台当たりの銅使用量はガソリン車を大きく上回ります。
充電インフラでも銅需要が増える
EVの普及には充電設備の整備も欠かせません。
充電スタンドには、
- 電力ケーブル
- 変圧設備
- 配電設備
- 制御装置
など、多くの電気設備が設置されます。
さらに、高速道路の急速充電設備や商業施設の充電器、家庭用充電設備なども増えており、これらすべてに銅が使用されています。
つまり、EVそのものだけでなく、周辺インフラの整備によっても銅需要は拡大しているのです。
世界の銅需要への影響
世界各国で脱炭素政策が進み、EVの普及が加速しています。
そのため、自動車向けの銅需要は今後も増加すると予想されています。
一方で、新しい銅鉱山を開発するには10年以上かかることもあり、供給を短期間で増やすことは困難です。
AI向けデータセンターでも大量の銅が必要とされているため、
- AI
- EV
- 再生可能エネルギー
という三つの成長分野が同時に銅需要を押し上げています。
このことが、近年の銅価格上昇を支える大きな要因となっています。
日本企業への影響
日本の自動車産業や部品メーカーにとっても、銅は重要な原材料です。
銅価格が上昇すると、
- モーター
- ワイヤーハーネス
- コネクター
- 充電設備
などの製造コストに影響が及びます。
そのため企業は、
- 銅使用量の削減
- リサイクルの推進
- 代替材料の研究
- 安定調達体制の構築
などを進めています。
資源調達は、自動車産業の競争力を左右する重要な経営課題となっています。
結論
EVはモーターや高電圧配線、充電設備などに大量の銅を使用するため、ガソリン車よりもはるかに多くの銅を必要とします。さらに、充電インフラの整備も銅需要を押し上げています。
AI向けデータセンターとEVという二つの成長分野が同時に銅需要を拡大させている現在、銅は「新時代の石油」とも呼ばれる戦略資源となっています。EVの普及は、自動車市場だけでなく、世界の資源市場にも大きな変化をもたらしているのです。
参考
日本経済新聞 2026年8月4日 朝刊「銅、AI需要で最高値迫る」