EC(電子商取引)の拡大によって、買い物の形は大きく変わりました。
スマートフォン一つで、
- 商品検索
- 価格比較
- レビュー確認
- 注文
- 決済
まで完結できる時代です。
しかも翌日配送、場合によっては当日配送まで可能になっています。
こうした環境を見ると、
「もうリアル店舗はいらないのではないか」
という議論も出てきます。
実際、
- 書店
- 家電量販店
- 衣料品店
- 地域商店
などでは閉店も増えています。
一方で、
- 高級ブランド店
- 体験型店舗
- カフェ併設店
- ショールーム型店舗
など、新しいリアル店舗も増えています。
では、EC時代にリアル店舗は本当に不要になるのでしょうか。
今回は、「体験価値」という視点から考えてみます。
ECは「効率的な買い物」を実現した
EC最大の強みは、「効率性」です。
以前は、
- 店へ行く
- 営業時間に合わせる
- 在庫確認する
- 店員に聞く
必要がありました。
しかしECでは、
- 24時間購入可能
- 在庫比較可能
- 最安値検索可能
- レビュー確認可能
です。
つまりECは、
「買い物の情報コスト」
を劇的に下げたのです。
これは消費者にとって極めて大きなメリットでした。
リアル店舗は「価格競争」で不利になった
EC時代になると、リアル店舗は価格競争で苦しくなりました。
なぜならリアル店舗には、
- 家賃
- 人件費
- 光熱費
- 店舗維持費
などが発生するからです。
一方、EC企業は、
- 巨大物流
- 集中在庫
- データ分析
- 自動化
によって効率化を進めています。
さらに消費者側も、
- 店頭で商品確認
- ネットで最安値購入
という「ショールーミング」を行うようになりました。
つまりリアル店舗は、
「体験だけ提供して、利益はECに流れる」
構造にも直面しているのです。
それでも人は「リアル」を求める
しかし、リアル店舗が完全になくなるわけではありません。
なぜなら、人間の消費行動は、
「合理性だけ」
では決まらないからです。
例えば、
- 試着したい
- 実物を触りたい
- 店員に相談したい
- 空間を楽しみたい
- 偶然の出会いを楽しみたい
という欲求があります。
つまりリアル店舗には、
「情報取得」
だけではない価値があるのです。
ECは「目的買い」に強い
ECは、
- 欲しい商品が決まっている
- 型番が決まっている
- 最安値を探したい
場合に極めて強力です。
つまりECは、
「目的消費」
に最適化されています。
一方リアル店舗では、
- たまたま見つける
- 偶然手に取る
- 店員に勧められる
など、「予定外の消費」が起こります。
これはECでは再現しにくい部分です。
つまりリアル店舗は、
「偶然性の場」
としての価値を持っているのです。
リアル店舗は「体験産業」へ変わり始めた
近年のリアル店舗では、
- カフェ併設
- イベント開催
- 体験型展示
- コミュニティ空間化
などが増えています。
これは、
「商品を売るだけ」
ではECに勝てないからです。
つまり現在のリアル店舗は、
「販売の場」
から、
「体験の場」
へ変わり始めています。
例えば高級ブランド店では、
- 空間演出
- 接客体験
- 世界観共有
が重要になります。
これは単なる物販ではありません。
「ブランド体験提供」
なのです。
書店が苦しい理由
リアル店舗の象徴的な例が書店です。
本はECとの相性が極めて良く、
- 内容が規格化されている
- 持ち運び不要
- 検索しやすい
からです。
そのため価格競争では厳しくなりました。
しかし一方で、
- 独自選書
- 地域文化
- イベント
- 作家交流
などを強みにする書店もあります。
つまり書店も、
「本を並べる場所」
ではなく、
「知的体験空間」
へ変化し始めているのです。
「買い物」は娯楽でもある
人は単に「必要だから」だけで買い物をするわけではありません。
- 気分転換
- 発見
- 散歩
- 会話
- 空間体験
なども重要です。
特に百貨店や商業施設では、
- 季節感
- 演出
- 接客
- 高揚感
が消費体験になります。
つまりリアル店舗は、
「モノ販売」
だけではなく、
「感情体験」
も提供しているのです。
ECは「孤独な消費」を増やしたのか
ECでは、
- 一人で検索
- 一人で比較
- 一人で購入
が基本です。
これは効率的ですが、一方で、
「人との接点」
を減らす側面もあります。
以前の商店街には、
- 世間話
- 地域交流
- 顔なじみ関係
がありました。
つまりリアル店舗は、
「地域コミュニティ」
としての役割も持っていたのです。
EC時代には、この機能が弱まりやすくなります。
これからのリアル店舗に必要なもの
今後のリアル店舗は、
「ECに勝とうとする」
のではなく、
「ECではできない価値」
を提供する必要があります。
例えば、
- 相談
- 提案
- 体験
- 空間
- コミュニティ
- 学び
- 修理
- カスタマイズ
などです。
つまりリアル店舗は、
「物販業」
から、
「体験価値業」
へ変わる必要があるのです。
結論
ECは、
- 安さ
- 便利さ
- 即時性
- 効率性
を大きく進化させました。
その結果、リアル店舗は価格競争で厳しくなっています。
しかし一方で、人間は、
- 体験
- 空間
- 偶然性
- 会話
- 感情共有
も求めています。
つまりリアル店舗は、
「商品を売る場所」
としての役割は縮小しても、
「人間体験を提供する場所」
としての価値はむしろ重要になる可能性があります。
EC時代に問われているのは、
「リアル店舗は必要か」
ではなく、
「リアル店舗は何を提供する場所になるのか」
なのかもしれません。
参考
・経済産業省「電子商取引に関する市場調査」
・総務省「情報通信白書」
・中小企業白書
・各種小売・流通業界資料・報道資料