AI時代にコンサルタントは不要になるのか 調査と資料作成から実行と人間力へ変わるコンサル業界

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生成AIの急速な普及によって、コンサルタントという仕事の存在意義が問われ始めています。情報を集め、分析し、分かりやすい資料にまとめる。これまでコンサルタントの重要な仕事とされてきた業務の多くを、生成AIが短時間でこなせるようになったためです。

しかし、AIによってコンサルタントそのものが不要になると考えるのは早計でしょう。むしろ起きているのは、コンサルタントの消滅ではなく、顧客がお金を払う価値の大きな変化です。

調査して資料を作るだけでは価値を出しにくくなる

従来のコンサルティングでは、情報収集や市場調査、データ分析、資料作成などに多くの時間が費やされてきました。

若手コンサルタントが大量の資料を読み込み、情報を整理し、表やグラフを作り、プレゼンテーション資料にまとめるという仕事です。

ところが生成AIは、この領域を急速に侵食しています。

企業自身がAIを使って情報を整理し、論点を抽出し、資料のたたき台まで作れるようになれば、単純な情報収集や資料作成だけを外部のコンサル会社へ高額で依頼する合理性は小さくなります。

アクセンチュアの浜岡大社長が指摘するように、調査だけを行う従来型のコンサルティングは、すでに時代遅れになりつつあると考える必要があります。

コンサル市場は拡大している

興味深いのは、生成AIが普及しているにもかかわらず、日本のコンサルティング市場そのものは現在も拡大していることです。

IDCジャパンの推計では、2025年の国内コンサルティング市場は前年比約1割増の8880億円に達しました。

背景にはDX、ESG、生成AI導入など企業が対応しなければならない経営課題の増加があります。

つまりAIはコンサルタントの仕事を奪う一方で、新しいコンサル需要も生み出しています。

問題は市場全体が成長するかどうかだけではありません。

その市場の中で、どの仕事に価値が残るのかが重要になります。

2030年ごろが一つの転換点になる可能性

デロイトトーマツグループの長川知太郎CEOは、コンサル市場が2030年ごろにピークアウトするとの見方を示しています。

特に厳しくなる可能性があるのが、専門知識そのものを販売するビジネスです。

かつては専門家しか入手できなかった情報や知識に大きな価値がありました。

しかし生成AIによって、一定水準の専門知識へ誰でも簡単にアクセスできるようになります。

すると、

知っていること

調べられること

まとめられること

だけでは高い報酬を得にくくなります。

これから重要になるのは、その知識を使って何を変えられるのかです。

AI時代の価値は実行へ移る

今後のコンサルティングでは、提案書を提出して終わる仕事から、顧客と一緒に実行する仕事への移行がさらに進むでしょう。

経営改革を考えるだけではなく、組織を変える。

新しいシステムを提案するだけではなく、実際に導入する。

新規事業の戦略を描くだけではなく、立ち上げまで伴走する。

こうした実行能力が重要になります。

アクセンチュアがシステム開発などへ事業領域を広げてきたことも、この流れの一つと考えられます。

コンサルティングとシステム開発、業務改革、運用支援などの境界線は、今後さらに薄くなっていくでしょう。

現場経験の価値が高まる

もう一つ重要になるのが現場経験です。

生成AIは大量の知識を扱えますが、特定企業の組織文化や人間関係、過去の経緯まで完全に理解しているわけではありません。

例えば改革案として正しくても、その会社では実行できないことがあります。

誰に最初に話を通すべきなのか。

どの部署が反対する可能性があるのか。

誰をプロジェクトに巻き込めば前へ進むのか。

こうした判断には、現場で培った経験が必要です。

デロイトトーマツグループが、顧客企業に技術者が常駐するFDEという仕組みなどを活用し、顧客のビジネスに深く入り込む経験を重視しているのも象徴的です。

机上で得られる知識より、実際の現場から得られる知識の価値が相対的に高まっているのです。

人を動かす能力はAI時代ほど重要になる

経営改革では、正しい答えを示せば人が動くわけではありません。

経営者、社員、取引先、株主など、それぞれ立場や利害が異なります。

改革によって仕事が変わる人もいれば、権限を失う人もいます。

そこで必要になるのが、相手の話を聞き、信頼関係を築き、利害を調整しながら合意形成する能力です。

AIが優れた改革案を作ったとしても、実際に組織を動かすためには人間同士のコミュニケーションが必要になります。

これまでソフトスキルと呼ばれていた能力が、AI時代にはむしろコンサルタントの中核的な能力になる可能性があります。

コンサル会社の選別が始まる

生成AIの普及は、コンサル会社の競争環境も変えるでしょう。

EYストラテジー・アンド・コンサルティングの近藤聡社長は、日本でコンサル市場が一気に崩壊する可能性は低いものの、企業の選別や再編が進むとの見方を示しています。

これまでは市場そのものが拡大していたため、多くの会社が成長できました。

しかし市場の成長が鈍化すれば状況は変わります。

AIでもできる仕事を高い料金で提供する会社と、AIを活用しながら顧客企業の変革まで実行できる会社との差が広がります。

コンサル会社の数が増え続ける時代から、淘汰と再編の時代へ移る可能性があります。

コンサルタントの人数も増え続けるとは限らない

コンサル会社の売上が増えても、それと同じ割合で社員数が増えるとは限りません。

AIによって一人当たりの生産性が上がるためです。

さらに海外拠点への業務移管や外部企業との提携も進んでいます。

これまで100人必要だった仕事を、AIを使った50人で行えるようになれば、売上が増えても社員数は増えません。

その結果、コンサル業界にも少数精鋭化が進む可能性があります。

特に影響を受けやすいのは、情報収集、データ整理、資料作成などを中心に担当してきた若手層でしょう。

下積みをAIが担う時代の人材育成は難しい

ここには大きな問題があります。

従来のコンサルタントは、情報収集や資料作成といった仕事を大量に経験することで能力を磨いてきました。

ところが、その下積み仕事をAIが担当するようになります。

すると若手は、どのように経験を積めばよいのでしょうか。

単純作業が減ること自体は歓迎すべきことですが、同時に人材育成の仕組みを作り直す必要があります。

顧客との対話、現場への常駐、プロジェクトへの参加などを通じて、従来より早い段階から実践経験を積ませる必要が出てくるでしょう。

AI時代のコンサル会社では、人材育成力そのものが競争力になる可能性があります。

専門知識より専門経験が重要になる

生成AI時代には、専門性の意味も変わります。

単に税務を知っている。

会計を知っている。

製造業を知っている。

金融を知っている。

それだけでは差別化しにくくなります。

AIも大量の専門情報を扱えるからです。

一方、

このような案件を実際に担当したことがある

この業界ではこの方法ではうまくいかなかった

このケースではこの関係者との調整が重要だった

という経験は簡単には代替できません。

知識そのものから、経験を伴った知識へ価値の中心が移っていくと考えられます。

AIを使わないコンサルタントの方が危険になる

AIとコンサルタントを対立関係として考える必要もありません。

これから競争力を失う可能性が高いのは、AIに仕事を奪われるコンサルタントというより、AIを使わないコンサルタントでしょう。

情報収集や分析、資料作成などはAIに任せ、人間は顧客との対話、課題設定、意思決定支援、利害調整、実行支援に時間を使う。

この役割分担が進めば、コンサルタント一人当たりの生産性は大幅に上がります。

AIによってコンサルタントが不要になるのではなく、AIを使うコンサルタントが、使わないコンサルタントを置き換えていく可能性があります。

結論

生成AIによって、コンサルティング業界は大きな転換点を迎えています。

特に情報収集、分析、資料作成といった従来型の業務は、AIによる代替が急速に進むでしょう。

その一方で、企業の課題そのものがなくなるわけではありません。

むしろ人手不足、デジタル化、AI導入、事業構造改革など、企業が対応しなければならない変化は増えています。

これから価値を持つのは、情報を持っている人ではなく、その情報を使って顧客を動かせる人です。

専門知識だけではなく現場経験。

分析だけではなく意思決定。

提案だけではなく実行。

そして最後に必要になるのが、人と人との信頼関係です。

AI時代に不要になるのはコンサルタントそのものではありません。

調べて、まとめて、説明するだけのコンサルティングです。

生成AIの普及は、コンサルタントという職業を消滅させるというより、その仕事を本来の課題解決へ戻していくのかもしれません。

参考

日本経済新聞 2026年8月11日朝刊
AIでコンサルもう不要?(上)調査だけなら時代遅れ

日本経済新聞 2026年8月11日朝刊
30年ごろピークアウト

日本経済新聞 2026年8月11日朝刊
選別進み再編起こる

日本経済新聞 2026年8月11日朝刊
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