AIでコンサルは不要になるのか 生き残るコンサルタントに求められる価値とは

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生成AIの急速な普及によって、コンサルティング業界の将来が注目されています。

市場調査、データ分析、資料作成、議事録作成、提案書のたたき台作成など、これまで若手コンサルタントが多くの時間を費やしてきた仕事をAIが短時間で処理できるようになってきたからです。

それでは、AIがさらに賢くなれば、コンサルタントは不要になるのでしょうか。

PwCコンサルティング、KPMGコンサルティング、ボストン・コンサルティング・グループのトップの発言を読み比べると、興味深い共通点が見えてきます。

AIによってコンサルティングそのものが消えるというより、コンサルタントが提供してきた価値の中身が大きく変わろうとしているのです。

AIが最初に代替するのは調べる仕事

コンサルティングの仕事というと、企業の経営戦略を考える華やかな仕事を想像するかもしれません。

しかし実際には、その前段階に膨大な作業があります。

市場規模を調べる。

競合企業を分析する。

資料を読み込む。

データを整理する。

会議の議事録を作る。

PowerPointで提案資料を作る。

こうした仕事です。

KPMGコンサルティングの関穣代表は、コンサルティングの仕事を、調べる、考える、書く、伝える、動かすという5つの段階に整理しています。

生成AIの影響を最も強く受けるのは、このうち前半部分でしょう。

特に調べる、書くという仕事はAIとの相性が非常に良いからです。

さらにAIの性能が高まれば、考える仕事の一部にも代替が広がっていく可能性があります。

これまで人間が何時間もかけていた情報収集や資料作成が、数分で終わる時代になりつつあります。

2日かかった資料が数分で作れる衝撃

PwCコンサルティングでは、生成AIを使った提案資料作成のプラットフォームを社内で構築しているといいます。

コンサルタントが持つ暗黙知を学習させることで、従来2日程度かかっていた資料作成を数分程度まで短縮できるようになったとされています。

これは単なる業務効率化ではありません。

コンサルティング会社のビジネスモデルそのものに影響する可能性があります。

従来のコンサルティング業界では、多くの人をプロジェクトに投入し、その人数と期間に応じて料金を受け取る人月型の契約が広く利用されてきました。

例えば10人のコンサルタントが3カ月働く仕事であれば、その投入人数と期間が売上につながります。

ところがAIによって同じ仕事を3人で処理できるようになればどうでしょうか。

顧客からすれば、従来と同じ料金を支払う理由は薄くなります。

AIによる生産性向上は、コンサル会社の利益を増やす可能性がある一方で、人月型ビジネスを壊す力も持っているのです。

これから重要になるのは人を動かす力

では、AI時代にも残るコンサルティングの価値とは何でしょうか。

3社のトップの発言には共通点があります。

それが、人や組織を動かす能力です。

企業改革では、正しい答えを提示すれば改革が実現するわけではありません。

経営陣を説得する必要があります。

現場社員の理解を得る必要があります。

場合によっては改革に反対する人とも交渉しなければなりません。

部門間の利害を調整することもあります。

M&A後の統合であれば、異なる企業文化を持つ社員同士をまとめなければなりません。

つまり企業経営では、正解を見つけることと、その正解を実行することは別問題なのです。

AIは正解らしいものを提示する能力を急速に高めています。

しかし、その答えを企業の中で実行させる仕事は依然として人間に大きく依存しています。

ここにAI時代のコンサルタントの価値があります。

インサイトだけでは価値にならなくなる

BCGはコンサルタントの価値について、インサイト、インパクト、トラストという考え方を示しています。

インサイトとは企業にとって意味のある洞察です。

インパクトとは、その洞察を実際の企業変革につなげることです。

そしてトラストとは顧客との信頼関係です。

生成AI以前は、優れた分析や洞察そのものに大きな価値がありました。

情報を集め、分析し、経営者が知らない事実を提示するだけでもコンサルタントの存在価値があったからです。

ところが生成AIによって情報収集や分析のコストは急速に下がっています。

企業自身がAIを使って分析できるようになれば、単に情報を整理して説明するだけのコンサルタントは必要なくなる可能性があります。

重要になるのは、その分析を企業の行動につなげられるかです。

これからは知っていることより、変えられることの価値が高くなるでしょう。

成果報酬型コンサルティングが増える可能性

この変化はコンサルティング会社の料金体系にも影響する可能性があります。

従来の人月型では、極端にいえば、多くの人が長く働くほど売上が大きくなります。

しかしAIによって仕事が効率化すると、この仕組みと顧客側の利益が一致しなくなる可能性があります。

そこで注目されるのが成果報酬型です。

例えば企業のコスト削減プロジェクトなら、削減できた金額に応じて報酬を受け取る。

売上拡大のプロジェクトなら、実際に生まれた成果と報酬を連動させる。

このような契約です。

コンサル会社にとってはリスクが高くなりますが、本当に成果を出せる会社にとっては大きなビジネスチャンスになります。

AI時代には、何人働いたかではなく、何を実現したかが問われる方向へ進む可能性があります。

最大の問題は若手をどう育てるか

一方で、AIにはコンサルティング業界にとって深刻な問題もあります。

若手の育成です。

従来のコンサルタントは、最初から経営者に高度な提案をしていたわけではありません。

資料を調べる。

データを集める。

議事録を書く。

先輩の資料を修正する。

会議に同席する。

こうした仕事を繰り返しながら、優秀な先輩の思考方法や顧客との接し方を学んできました。

いわば下積み仕事がコンサルタントの訓練になっていたのです。

ところが、その下積み仕事をAIが担当するようになります。

効率化という意味では歓迎すべきことですが、人材育成という意味では大きな問題です。

新人が経験を積むための階段そのものがなくなる可能性があるからです。

これはコンサル業界だけの問題ではありません。

会計、税務、法務、金融、システム開発など、多くの専門職で同じ問題が起こる可能性があります。

AI時代の専門職教育では、下積みに代わる新しい育成方法を設計する必要があります。

中堅中小コンサルには厳しい時代になる

さらに大きな変化が起こりそうなのがコンサル会社の淘汰です。

これまで企業が外部コンサルタントに依頼していた仕事の中には、情報収集や資料作成を中心としたものも少なくありません。

しかし企業側でも生成AIを利用できるようになっています。

社内の担当者がAIを使えばできる仕事に、高額なコンサルティング料金を支払う必要があるのか。

企業側は当然そう考えるでしょう。

特に、調査して、分析して、報告書を提出して終わるタイプのコンサルティングは厳しくなる可能性があります。

逆に強くなるのは、企業固有の事情を理解し、経営陣と信頼関係を築き、組織を実際に変革できる会社です。

コンサル会社の競争は、知識量の競争から実行力と信頼の競争へ移っていくと考えられます。

AIはコンサルをなくすのではなくコンサルの境界線を変える

興味深いのは、AIによってコンサル市場そのものが必ず縮小するとは限らないことです。

AI導入には、新しい経営課題が次々に生まれるからです。

どの業務にAIを導入するのか。

社員の仕事をどう再設計するのか。

AIによって削減できる業務は何か。

情報管理やガバナンスをどうするのか。

AI投資を売上や利益につなげるにはどうするのか。

こうした問題に企業は直面します。

つまりAIは既存のコンサル業務を奪う一方、新しいコンサル需要を生み出します。

ERPの普及によって業務改革やシステム導入コンサルティングが巨大市場になったように、AIも新しいコンサル市場を作る可能性があります。

問題は、その新市場を誰が取るかです。

コンサルタント自身も二極化する

今後は会社だけでなく、個々のコンサルタントも二極化していくでしょう。

AIに指示される仕事をする人と、AIを使って仕事を設計する人です。

資料を作ること自体が得意でも、それだけでは差別化が難しくなります。

情報を集める能力だけでも同様です。

必要になるのは、何を調べるべきかを決める力です。

どの問題を解くべきかを見抜く力です。

AIの回答が本当に正しいのかを判断する力です。

そして最終的には、人を説得して行動させる力です。

AIが優秀になるほど、人間にはより高度な判断が要求されるという逆説が生まれます。

専門家の価値も同じ方向へ向かう

この変化はコンサルタントに限った話ではありません。

税理士、会計士、弁護士、金融機関など知識を扱う専門職にも共通する問題です。

制度を調べる。

過去の事例を探す。

資料を要約する。

一般的な選択肢を提示する。

こうした仕事は生成AIが急速に得意になっています。

そのため、単に知識を持っていることの経済価値は相対的に低下していくでしょう。

一方で、顧客固有の事情を理解し、複数の選択肢から何を選ぶべきかを判断し、その判断に責任を持つ仕事の重要性は高まります。

専門家の価値は、答えを知っていることから、答えを使って意思決定を支援することへ移っていくのではないでしょうか。

結論

AIによってコンサルタントがすべて不要になるとは考えにくいでしょう。

しかし、従来型のコンサルタントの仕事がそのまま残るとも考えにくい状況です。

調べる、整理する、書くという仕事はAIによる代替が進みます。

考える仕事についても一部はAIが担うでしょう。

その結果、人間のコンサルタントに残る価値は、問題を設定し、判断し、伝え、そして人や組織を動かすことへ集中していきます。

同時に、人月型から成果重視型への転換や、若手育成方法の再設計、コンサル会社の淘汰も進む可能性があります。

AIがコンサルタントをなくすというより、AIによってコンサルタントと呼べる仕事の基準が上がると考えた方が実態に近いでしょう。

これまでなら専門知識を持っているだけで価値になった仕事でも、AI時代には、その知識を使って顧客を実際に動かせるかまで問われます。

AI時代に問われるのは、AIより多くのことを知っているかではありません。

AIを使った上で、人間にしかできない価値をどこまで生み出せるかです。

参考

日本経済新聞 2026年8月 AIでコンサルもう不要?(下)代替される危機感ない

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