住宅ローンの実質金利がプラス化 ― 変動金利時代の住宅ローン減税

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住宅ローンを利用して住宅を購入した人の多くが利用している制度が、住宅ローン減税です。
この制度は長年、住宅取得を支援する税制として機能してきました。

ところが、最近は住宅ローンをめぐる環境が大きく変化しています。
日本銀行の金融政策の転換により、長く続いた「超低金利の時代」が終わり、住宅ローン金利も徐々に上昇し始めました。

その結果、これまで見られた「実質的なマイナス金利」の状態が崩れ、住宅ローンの実質金利がプラスになるケースが広がりつつあります。

本稿では、住宅ローン減税と金利の関係を整理しながら、住宅ローンの実質金利がプラス化する意味について解説します。


住宅ローンの金利の仕組み

住宅ローンの金利には、いくつかの種類があります。

銀行の住宅ローンでは、まず「基準金利」が設定され、その金利から顧客ごとの条件に応じた優遇幅を差し引いた金利が実際の適用金利になります。

つまり、住宅ローンの金利は一般に次のように決まります。

基準金利
- 優遇幅
= 適用金利

住宅ローンを検討する際、利用者は通常この適用金利を見て判断します。しかし、実際の負担を考える場合には、もう一つ重要な要素があります。それが住宅ローン減税です。


住宅ローン減税の基本構造

住宅ローン減税は、住宅取得を促すために設けられた税制です。

現在の制度では、年末の住宅ローン残高の一定割合が所得税などから控除されます。
現在の控除率は 0.7% で、控除期間は最大13年です。

例えば、年末の住宅ローン残高が3,000万円の場合、次のような控除が受けられます。

3,000万円 × 0.7% = 21万円

この21万円が所得税などから控除されるため、住宅ローンの利息負担を実質的に軽減する効果があります。


実質金利という考え方

住宅ローンの負担を考える際には、単純な金利ではなく「実質金利」という考え方が重要になります。

実質金利とは、住宅ローンの適用金利から住宅ローン減税の控除効果を差し引いたものです。

例えば、

住宅ローン金利
- 住宅ローン減税控除率

という形で考えると理解しやすくなります。

仮に、

住宅ローン金利:0.6%
控除率:0.7%

であれば、

実質金利
= 0.6% − 0.7%
▲0.1%

となり、実質的にはマイナス金利となります。

つまり、支払う利息よりも減税額の方が大きくなるケースが存在していたのです。


マイナス実質金利の時代

日本では長らく超低金利が続いてきました。

そのため、住宅ローン金利が0.5%前後というケースも珍しくありませんでした。
一方で住宅ローン減税の控除率は、かつて 1% でした。

この状況では、

住宅ローン金利 < 控除率

という関係が成立するため、実質的にマイナス金利となるケースが多くありました。

住宅ローンを借りることで税負担が減り、結果的に金利以上のメリットが生じるという状態です。

これは低金利政策と住宅取得支援税制が重なったことで生まれた、特殊な状況でした。


実質金利プラス化の背景

しかし、この状況は徐々に変化しています。

主な理由は二つあります。

第一に、住宅ローン減税の控除率が引き下げられたことです。
2022年度税制改正により、控除率は 1%から0.7%へ 引き下げられました。

第二に、住宅ローン金利が上昇していることです。

2025年以降、日本銀行は金融政策を転換し、政策金利を引き上げました。
これに伴い、銀行の住宅ローン金利も上昇しています。

住宅ローン比較サービスの調査によると、2026年2月時点のメガバンクの変動型ローン金利は 平均0.79% 程度でした。

さらに2026年春には 0.96%前後 まで上昇しています。

この水準になると、

住宅ローン金利
> 控除率0.7%

という関係になり、実質金利はプラスになります。


変動金利ローンの注意点

変動金利ローンには、もう一つ重要な仕組みがあります。

それが「5年ルール」です。

多くの住宅ローンでは、金利が変わっても毎月の返済額はすぐに変わらず、5年ごとに見直される仕組みになっています。

そのため、金利が上昇しても、直ちに毎月の返済額が増えるとは限りません。

ただし、その間は返済額の中で利息の割合が増えます。
結果として元本の返済が進みにくくなり、長期的には負担が増える可能性があります。


住宅ローン環境の転換点

日本の住宅ローン市場は、長く「金利のない世界」を前提にしてきました。

しかし、金融政策の転換により、住宅ローン金利は徐々に上昇しています。
それに伴い、住宅ローン減税を考慮しても実質金利がプラスになるケースが増えています。

住宅ローンは数十年にわたる長期契約です。
金利環境が変化すれば、家計への影響も小さくありません。

住宅ローンを利用している人にとっては、金利動向や制度の変化を踏まえた長期的な資金計画がこれまで以上に重要になるといえるでしょう。


結論

住宅ローン減税は、住宅取得を支援する重要な税制です。
しかし、金利上昇と控除率の引き下げにより、その恩恵は以前より小さくなっています。

超低金利の時代には、住宅ローンの実質金利がマイナスとなるケースもありました。
しかし現在は、住宅ローン金利が控除率を上回り、実質金利がプラスになる状況が広がりつつあります。

日本の住宅ローン環境は、低金利を前提とした時代から、「金利のある世界」へと移行しています。
今後は金利上昇リスクを踏まえた住宅ローン管理が、家計にとって重要なテーマとなるでしょう。


参考

日本経済新聞
変動型住宅ローン金利、実質プラス化一段と 薄れる減税の恩恵、負担増
2026年3月13日 朝刊

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