家賃高騰時代の住まい戦略 ― 注目される「ずらし駅」という選択

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都市部の賃貸住宅の家賃が上昇しています。建築費の高騰、管理コストの増加、コロナ禍後の都心回帰などが重なり、都市部の住宅費は確実に上昇局面に入りました。

こうした状況のなかで、新しい住まいの探し方として注目されているのが「ずらし駅」という考え方です。主要なターミナル駅ではなく、その隣駅や数駅離れた駅に住むことで、生活の利便性を大きく損なわずに家賃を抑えるという選択です。

近年は、この「ずらし駅」を選ぶ人が増えており、住宅市場にも新しい動きが生まれています。本稿では、家賃上昇の背景と、なぜ「ずらし駅」が注目されているのかを整理します。


都市部で続く家賃上昇

東京都区部の民営家賃は近年上昇が続いています。消費者物価指数でも、東京都区部の家賃は前年同月比で2%以上の上昇が続く状況となっています。

家賃上昇の背景には、いくつかの要因があります。

第一に、建築コストの上昇です。資材価格や人件費の上昇によって、新築住宅の供給コストが高まっています。

第二に、管理コストの上昇です。マンションや賃貸住宅の管理費や修繕費も上昇傾向にあり、家賃に反映されやすくなっています。

第三に、都心回帰の動きです。コロナ禍では郊外志向も見られましたが、経済活動の正常化に伴い、再び都市部の住宅需要が強まっています。

こうした要因が重なり、都市部では家賃を引き上げることへの抵抗感が以前より小さくなっています。結果として、住宅費の負担は確実に増加しています。


注目される「ずらし駅」という考え方

こうした家賃上昇のなかで注目されているのが「ずらし駅」です。

これは、人気のターミナル駅ではなく、その隣駅や数駅離れた駅に住むことで、家賃を抑えつつ利便性を維持するという住まいの戦略です。

例えば、池袋駅から数分の場所にある大山駅では、賃貸物件への問い合わせが大きく増加しています。池袋という巨大ターミナルに近く、通勤利便性が高い一方で、家賃は中心部より抑えられるためです。

また、同じエリアでは千川駅や東長崎駅でも同様の傾向が見られます。いずれも池袋へのアクセスが良好でありながら、中心駅より住宅費を抑えることができます。

こうした駅は生活の利便性も比較的高いことが特徴です。商店街やスーパー、公園などが整備されているケースも多く、日常生活に困ることは少ありません。

つまり、「都心に近いが家賃は抑えられる」というバランスが評価されているのです。


首都圏で広がる住宅需要の波及

この動きは東京だけにとどまりません。

埼玉県南部では、大宮駅周辺の人気が周辺駅へ波及しています。例えば指扇駅や与野駅などは、大宮へのアクセスが良好でありながら家賃が比較的抑えられるため、住宅需要が高まっています。

さいたま新都心駅周辺も注目される地域の一つです。大型商業施設が整備され、生活環境が向上していることが住宅需要を押し上げています。

また、千葉県では本八幡駅、神奈川県では元住吉駅など、主要駅の隣駅が人気を集めています。

このように、住宅需要はターミナル駅だけでなく、その周辺へと広がりつつあります。

都市の住宅市場は「一点集中」から「周辺分散」へと変化しているともいえます。


ずらし駅を選ぶ際のポイント

「ずらし駅」を検討する際には、いくつかの視点があります。

まず重要なのは、主要駅とのアクセスです。通勤時間が大きく増えると生活の負担が大きくなるため、主要駅まで数分程度の距離であることが望ましいでしょう。

次に、生活環境です。スーパー、医療機関、飲食店など、日常生活に必要な施設が整っているかどうかも重要な要素です。

さらに、街の雰囲気も重要です。実際に歩いてみると、治安や街並み、商店街の活気などが分かります。

不動産サイトで条件を絞り込むだけではなく、実際に街を歩いてみることで、その地域の生活イメージが具体的になります。

住宅選びは生活そのものを選ぶ行為でもあります。数字だけでなく、街の空気を感じることが重要です。


住宅費の時代における生活防衛

住宅費は家計支出の中でも大きな割合を占めます。

家賃が上昇する環境では、住まいの選び方そのものが家計戦略になります。

「ずらし駅」は、生活の利便性を大きく損なわずに住宅費を抑える一つの方法です。

都市の住宅市場が変化するなかで、こうした柔軟な住まいの選択が広がっていく可能性があります。


結論

都市部の家賃上昇は、建築費や管理コストの増加、都心回帰など複数の要因によって進んでいます。

そのなかで、主要駅から少し離れた「ずらし駅」を選ぶ住まい方が注目されています。

通勤利便性を保ちながら住宅費を抑えられることが、多くの人にとって現実的な選択肢になりつつあります。

住宅市場の変化は、都市の生活スタイルにも影響を与えます。今後は「どこに住むか」だけでなく、「どの駅を選ぶか」という視点が、住まい選びの重要な要素になっていくでしょう。


参考

日本経済新聞
「賃貸物件、コスパで選ぶ 家賃高騰、『ずらし駅』に需要」
2026年3月12日 朝刊

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