奨学金の金利3%時代が到来 借入額300万円と500万円で返済負担はどう変わるか

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日本経済が本格的な金利のある世界に移行するなか、大学生や専門学校生が利用する奨学金にも大きな変化が生じています。

日本学生支援機構の有利子奨学金である第2種奨学金では、2026年夏に利率固定方式の利率が上限の3%に達しました。約30年ぶりの高い水準です。

これまで奨学金は、住宅ローンなどと比較して金利負担が小さい借入制度と考えられてきました。しかし、金利が上昇すれば、借入額が同じでも返還総額は大きく変わります。

特に、大学卒業時点で300万円から500万円の奨学金を抱える若者にとって、利息負担の増加は無視できません。

今回は、奨学金の利率が0.5%、1%、2%、3%の場合に返還総額がどの程度変わるのかを具体的に試算し、金利上昇が若者の家計や資産形成に与える影響を考えます。

有利子奨学金の金利が上昇している

日本学生支援機構の奨学金には、返済不要の給付型奨学金、無利子の第1種奨学金、有利子の第2種奨学金があります。

このうち、金利上昇の影響を直接受けるのが第2種奨学金です。

第2種奨学金には、利率固定方式と利率見直し方式があります。

利率固定方式は、貸与終了時に決定された利率が原則として返還終了まで適用されます。

一方、利率見直し方式は、おおむね5年ごとに利率が見直される仕組みです。

いずれも利率の上限は3%とされています。

重要なのは、奨学金の申込時点では、最終的に適用される利率が確定していないことです。

例えば、2027年4月に大学へ入学して奨学金を借り始める学生の場合、通常の4年制大学を卒業する2031年3月の貸与終了時点の利率が重要になります。

入学時の金利が低くても、卒業時に金利が上昇していれば、想定していた返還額より負担が大きくなる可能性があります。

奨学金を借りる際には、現在の利率だけでなく、上限の3%になった場合でも返済できるかを確認する必要があります。

借入額300万円の場合の返還総額

まず、奨学金を300万円借りた場合を考えます。

返還期間を20年間、毎月の返還額が一定となる元利均等方式と仮定して、利率ごとの返還額を試算します。

実際の日本学生支援機構の返還額は、貸与総額に応じた返還回数や端数処理などによって異なりますが、金利負担を比較するための参考になります。

利率0.5%の場合、毎月の返還額は約13,100円、返還総額は約315万円です。

利率1%の場合、毎月の返還額は約13,800円、返還総額は約331万円です。

利率2%の場合、毎月の返還額は約15,200円、返還総額は約364万円です。

利率3%の場合、毎月の返還額は約16,600円、返還総額は約399万円です。

つまり、利率0.5%と3%を比較すると、返還総額には約84万円の差が生じます。

毎月の返還額の差は約3,500円ですが、20年間にわたって積み重なることで大きな負担になります。

借入元金は同じ300万円でも、金利によって最終的に支払う金額が大きく変わるのです。

借入額500万円では金利負担がさらに拡大

次に、奨学金を500万円借りた場合を考えます。

私立大学への進学や自宅外通学などでは、授業料に加えて生活費が必要となり、借入額が大きくなることがあります。

同じく20年間の元利均等返還を仮定します。

利率0.5%の場合、毎月の返還額は約21,900円、返還総額は約526万円です。

利率1%の場合、毎月の返還額は約23,000円、返還総額は約552万円です。

利率2%の場合、毎月の返還額は約25,300円、返還総額は約607万円です。

利率3%の場合、毎月の返還額は約27,700円、返還総額は約666万円です。

利率0.5%と3%では、返還総額に約140万円の差が生じます。

利率3%の場合、500万円を借りて約666万円を返すことになり、利息負担は約166万円です。

この金額は、社会人になってからの貯蓄や住宅購入資金にも影響を与える可能性があります。

なお、これらは金利差を分かりやすく示すための一定期間の試算です。実際の第2種奨学金では、貸与額に応じた返還期間や返還方式などを確認する必要があります。

金利上昇の影響は借入額が大きいほど深刻になる

300万円と500万円の借入れを比較すると、金利上昇による負担の違いが明確になります。

利率3%で20年間返還する場合、300万円の借入れでは利息負担が約99万円です。

500万円の借入れでは約166万円になります。

借入額が200万円増えることで、利息負担も約67万円増加する計算です。

ここで重要なのは、奨学金の借入額を決める際に、毎月受け取る金額だけを見て判断しないことです。

例えば、大学4年間で毎月5万円を借りる場合、借入元金は240万円になります。

毎月8万円を借りれば384万円です。

毎月10万円なら480万円になります。

毎月の借入額が数万円違うだけでも、4年間では大きな差になります。

さらに、金利が上昇すれば、その差に応じて利息負担も増加します。

奨学金は利用可能な上限まで借りるのではなく、必要な金額を慎重に見積もることが重要です。

新社会人の手取り給与に占める返還負担

奨学金の返還負担を考える際には、卒業後の給与水準との比較が欠かせません。

例えば、大学卒業後の月給が25万円の場合を考えます。

税金や社会保険料を差し引いた手取り給与を20万円と仮定します。

奨学金300万円を利率3%で20年間返還する場合、毎月の返還額は約16,600円です。

手取り給与の約8.3%に相当します。

500万円を借りた場合は毎月約27,700円となり、手取り給与の約13.9%を占めます。

ここから家賃、食費、光熱費、通信費などを支払う必要があります。

例えば、毎月の家賃が7万円、食費が4万円、光熱費と通信費が2万円、その他の生活費が3万円であれば、生活費は合計16万円です。

手取り給与20万円から生活費16万円を差し引くと、残りは4万円です。

そこから奨学金を約27,700円返還すれば、自由に使えるお金は約12,300円しか残りません。

急な医療費や冠婚葬祭費などが発生すれば、貯蓄を取り崩す必要が生じます。

奨学金の返還負担は、単なる利息の問題ではなく、社会人生活全体の資金繰りに関わる問題なのです。

奨学金返済とNISAによる資産形成の関係

奨学金の返還負担が増えると、若者の資産形成にも影響します。

2024年に始まった新NISAによって、若い世代にも長期積立投資が広がっています。

しかし、奨学金の返還額が大きければ、投資に回せる資金は少なくなります。

例えば、毎月3万円を20年間積み立てる場合、元本は720万円になります。

年率3%で運用できたと仮定すると、20年後の資産額は約985万円です。

一方、奨学金の返還負担によって毎月1万円しか積み立てられない場合、同じ条件で20年後の資産額は約328万円になります。

その差は約657万円です。

もちろん、投資収益は保証されず、運用損失が発生する可能性もあります。

また、奨学金の返還と投資を単純に比較して、必ず繰上返還を優先すべきというわけでもありません。

生活防衛資金の確保、借入金利、投資リスク、将来の支出予定などを総合的に考える必要があります。

ただし、奨学金の返還負担が大きいほど、若い時期から資産形成を始める余力が小さくなることは確かです。

教育のための借金が、卒業後の金融資産形成にも長期的な影響を与える可能性があります。

固定方式と見直し方式はどちらを選ぶべきか

第2種奨学金では、利率固定方式と利率見直し方式を選択できます。

金利上昇局面では、この選択も重要になります。

利率固定方式の利点は、貸与終了時に利率が決まれば、その後の金利上昇の影響を受けないことです。

将来の返還額を予測しやすく、長期的な家計管理に適しています。

一方、利率見直し方式は、おおむね5年ごとに利率が変更されます。

将来の金利が低下すれば、返還負担が軽減される可能性があります。

しかし、金利が上昇すれば返還負担が増える可能性もあります。

どちらが有利になるかは、将来の金利動向によって変わります。

特に、卒業後の所得が不安定になる可能性がある場合には、返還額の予測可能性も重要な判断材料です。

金利の低さだけでなく、将来の家計にどの程度の変動を許容できるかを考える必要があります。

繰上返還は金利上昇時代の有効な選択肢

奨学金の返還負担を軽減する方法として、繰上返還があります。

繰上返還とは、通常の返還予定より早く元金を返すことです。

有利子奨学金では、繰上返還によって将来の利息負担を減らせる場合があります。

例えば、賞与や貯蓄の一部を活用して繰上返還を行えば、返還期間を短縮できます。

ただし、繰上返還を優先しすぎることには注意が必要です。

生活費の予備資金が不足している状態で貯蓄を大きく取り崩すと、失業や病気などの際に資金不足に陥る可能性があります。

また、住宅購入や結婚などの予定がある場合には、手元資金を確保することも重要です。

繰上返還による利息軽減効果と、現金を保有する安心感を比較する必要があります。

特に、無利子の第1種奨学金については、金利負担がないため、繰上返還の経済的な効果は有利子奨学金とは異なります。

借入条件に応じた判断が求められます。

奨学金の金利上昇は教育政策の問題でもある

奨学金の金利上昇は、学生本人の家計管理だけで解決できる問題ではありません。

教育を受けるために借金を必要とする学生が多いこと自体が、日本の教育費負担の構造を示しています。

経済的に余裕のある家庭では、大学の授業料や生活費を親が負担できます。

一方、家計に余裕がない家庭では、学生本人が奨学金を借りる必要があります。

同じ大学を卒業しても、借金のない学生と数百万円の借金を抱える学生では、社会人生活の出発点が異なります。

金利上昇は、この格差をさらに拡大させる可能性があります。

そのため、給付型奨学金の拡充、無利子奨学金の利用機会の拡大、有利子奨学金の利率上限の見直しなどが政策課題になります。

また、所得に応じて返還額を調整する制度の充実も重要です。

教育は本人の所得向上だけでなく、企業の生産性や日本経済全体の成長にも貢献します。

教育投資の費用を誰が負担すべきかという問題は、社会全体で考える必要があります。

結論

日本の奨学金制度は、金利のある世界への移行によって大きな転換点を迎えています。

第2種奨学金の利率固定方式が上限の3%に達したことで、これまで以上に返還負担を意識した借入計画が必要になりました。

今回の試算では、300万円を20年間で返還する場合、利率0.5%と3%では返還総額に約84万円の差が生じました。

500万円の借入れでは、その差は約140万円に拡大します。

奨学金の借入額や利率の違いは、卒業後の生活費、結婚、住宅購入、NISAによる資産形成などにも影響します。

そのため、学生と保護者は、借入時点から卒業後の返還計画を具体的に考える必要があります。

給付型奨学金や授業料減免制度を優先的に確認し、有利子奨学金を利用する場合には、利率3%でも返還できるかを試算することが重要です。

同時に、政府には金利上昇による若者の負担を緩和する制度改革が求められます。

教育は将来の所得を高める可能性を持つ重要な投資ですが、その投資を実現するための借金が、卒業後の人生の選択肢を狭めてしまっては本末転倒です。

奨学金を借りられることだけでなく、無理なく返還できることまで含めて教育機会を保障する必要があります。

金利3%時代を迎えた今、奨学金は借入額の多さではなく、将来の返還可能性を基準に利用する時代へと変わりつつあるのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 2026年10月12日 朝刊 「日本の奨学金、『金利ある世界』どう生きるか 識者『利率上限下げも』」

日本学生支援機構 第二種奨学金の利率及び返還制度に関する公表資料

文部科学省 高等教育の修学支援新制度に関する公表資料

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