東京と地方の財政力格差が再び拡大するなか、2027年度税制改正では地方税収の再配分が重要なテーマになりそうです。
これまで税収偏在の是正では、主として法人事業税や法人住民税などの法人関係税が使われてきました。
ところが今回、固定資産税の再配分まで議論に上っています。
固定資産税は土地や建物など、その地域に存在する資産に対して課税する代表的な地方税です。
もし固定資産税まで本格的な再配分の対象となれば、地方税制の考え方そのものに踏み込む大きな議論になる可能性があります。
2027年度税制改正が重要になる
政府・与党は2026年度税制改正大綱で、地方税収の偏在問題について2026年末に結論を得る方針を示しています。
そのため、具体的な制度改正の焦点となるのが2027年度税制改正です。
背景には再び拡大した東京と地方の財政力格差があります。
東京都の2026年度の財政力を示す数値は1.525です。
これに対して東京を除く46道府県全体では0.588、最も低い高知県は0.278です。
東京都と46道府県全体との差は0.937となり、2008年度以来の大きさになりました。
これまでの偏在是正措置だけでは十分ではないという問題意識が強まっています。
まず焦点になるのは法人事業税
最初に検討されるのは、これまで再配分の中心となってきた法人事業税の仕組みです。
現在も企業所得などに対する課税部分について、大都市に集中する税収の一部を地方へ再配分しています。
総務省は、その割合をさらに引き上げることを視野に入れています。
企業利益が東京などに集中すれば法人事業税も集中します。
そこで所得に連動して増える税収について、全国的な調整をさらに強化しようという考えです。
既存制度の延長線上にあるため、比較的理解しやすい見直しといえます。
資本規模に対する課税部分も対象になる可能性
さらに注目されるのが、法人事業税のうち企業の資本規模などに応じて課税する部分です。
企業が利益を上げているかどうかだけでなく、資本金など一定の基準によって税負担を求める仕組みがあります。
この部分についても新たに再配分の対象とする案が浮上しています。
実現すれば、偏在是正の対象となる税源がさらに広がります。
大企業が集中する東京都への影響も大きくなる可能性があります。
これまで以上に法人事業税全体を全国的な財政調整に利用する方向へ進むことになります。
なぜ固定資産税まで議論されるのか
さらに踏み込んだ案が固定資産税の再配分です。
固定資産税は土地、家屋、償却資産などに課税されます。
地価が高く、大規模なオフィスビルや商業施設などが集積する大都市では、大きな税源になります。
東京には高額な不動産が集中しています。
経済活動の集中が土地価格や建物価格を押し上げ、それが地方税収の集中にもつながります。
法人関係税だけを調整しても財政力格差が縮まらないのであれば、不動産から生まれる税収についても偏在是正を検討するという考え方が出てくるわけです。
固定資産税は地域との結び付きが強い
ただし、固定資産税の再配分には法人関係税とは違う難しさがあります。
固定資産は所在地が明確だからです。
東京都内にある土地や建物であれば、その地域の道路、消防、防災、上下水道などの行政サービスと密接に関係します。
不動産は別の地域へ簡単に移動することもできません。
そのため固定資産税は、地域と税源の結び付きが非常に分かりやすい税金です。
その税収を別の地域へ移すことになれば、なぜ東京にある土地や建物から徴収した税金を他地域で使うのかという問題が生じます。
地方税の受益と負担という原則が、これまで以上に問われることになります。
法人関係税とは性格が違う
法人関係税については、企業活動が全国にまたがっているという事情があります。
本社は東京でも工場は地方、店舗は全国という企業は珍しくありません。
そのため、企業から生まれる税収をどの地域に帰属させるべきかという議論には一定の余地があります。
固定資産税は事情が異なります。
土地や建物は特定の自治体に存在しています。
自治体もその資産のために道路や消防、防災などの行政サービスを提供しています。
したがって固定資産税まで再配分する場合には、法人関係税以上に明確な説明が求められるでしょう。
東京の不動産価値は東京だけで生まれたのか
一方で、別の見方もできます。
東京都心の不動産価格が高いのは、その土地や建物だけに価値があるからではありません。
企業や人が東京に集中し、交通網や商業施設、大学、行政機関などが集積しているからこそ、高い不動産価値が形成されています。
さらに東京の経済活動は、周辺県から通勤する人々や全国の企業活動にも支えられています。
そう考えれば、東京の不動産から生まれる税収についても、その一部を広域的な財政調整に利用するという考え方は成り立ちます。
問題は、どこまで地域固有の税源と考え、どこから全国的に共有すべき財源と考えるかです。
再配分対象を広げ続けることにも問題がある
財政格差が広がるたびに再配分する税目を増やす方法には限界があります。
法人事業税を再配分する。
法人住民税も再配分する。
それでも格差が広がれば固定資産税も対象にする。
この方向が続けば、地方税でありながら自治体が自由に使える税収が次第に小さくなる可能性があります。
地方自治の基本は、自治体が自ら財源を確保し、自らの判断で住民サービスを提供することです。
再配分を強化しすぎれば、この自主財源という考え方が弱くなる恐れがあります。
東京の税収を減らすことが目的ではない
偏在是正の議論で注意したいのは、東京都の税収を減らすこと自体を目的にしてはいけないということです。
本来の目的は、全国の自治体が必要な行政サービスを提供できる財政基盤を確保することです。
東京の税収を地方へ移した結果、東京の行政サービスが低下する一方で、地方の経済基盤そのものは変わらないのであれば、根本的な解決にはなりません。
地方自身が企業や雇用を増やし、自主財源を確保できる政策も同時に必要です。
再配分は財政格差を調整する手段であり、地方経済を成長させる政策そのものではありません。
2027年度税制改正で見るべき3つのポイント
2027年度税制改正では、単純に再配分額がいくら増えるのかだけを見るのでは不十分です。
第1は、どの税目を再配分の対象とするのかです。
法人事業税の既存部分を拡大するだけなのか、資本規模に対する課税部分まで広げるのか、さらに固定資産税まで踏み込むのかによって制度の意味は大きく変わります。
第2は、どのような基準で地方へ配分するのかです。
人口、財政力、行政需要など、配分基準によって恩恵を受ける自治体は変わります。
第3は、地方交付税との関係です。
すでに地方交付税による財政調整が存在するなかで、地方税そのものをどこまで再配分する必要があるのかという整理が欠かせません。
結論
2027年度税制改正では、東京と地方の財政力格差を縮小するため、地方税の再配分をさらに拡大することが検討されています。
中心となるのは法人事業税ですが、企業の資本規模に応じた課税部分や固定資産税まで議論が広がっています。
特に固定資産税は、土地や建物の所在地と密接に結び付いた地方税です。
その税収まで全国的な再配分に利用するのであれば、地方税とは何かという根本的な議論が避けられません。
財政力格差を放置することには問題があります。
しかし、格差が広がるたびに東京から移す税収を増やすだけでは、東京一極集中という根本原因は変わりません。
2027年度税制改正で本当に問われるのは、再配分額の大小だけではありません。
自治体が自ら確保すべき税源と、全国で共有すべき財源の境界線をどこに引くのか。
今後の地方税制の方向性を左右する重要な議論になりそうです。
参考
日本経済新聞 2026年10月8日朝刊 東京と地方の財政格差、08年度以来の大きさ 総務省が再配分拡大検討