2026年10月から始まる新TOPIXでは、構成銘柄が大幅に絞り込まれる見通しです。
現在のTOPIXには1600を超える銘柄が組み入れられていますが、QUICKが2026年8月までのデータを使って試算したところ、新TOPIXの銘柄数は最終的に987となります。
およそ6割の水準まで減る計算です。
なぜ日本株を代表する指数の銘柄をこれほど減らすのでしょうか。
背景には、TOPIXを「上場している企業を幅広く集めた指数」から、「投資対象として十分な流動性を持つ企業を選ぶ指数」へ変える考え方があります。
銘柄数を減らすこと自体が目的ではありません。
投資家が実際に売買しやすい市場を、より適切に表す指数へ変えることが目的です。
これまでのTOPIXはどのように作られてきたのか
TOPIXは1969年に算出が始まりました。
もともとは旧東証1部に上場している全銘柄を対象とする指数でした。
つまり企業が東証1部に上場すれば、基本的にはTOPIXにも組み入れられる仕組みでした。
そのためTOPIXは、企業を厳しく選別して構成する指数というより、東証1部市場全体を表す指数という性格が強かったのです。
2022年4月に東京証券取引所の市場区分が再編され、プライム、スタンダード、グロースの3市場になりました。
しかしTOPIXについては経過措置が設けられ、旧東証1部に上場していた企業を中心とする構成が残りました。
今回の改革によって、この歴史的な仕組みが大きく変わります。
なぜ1600銘柄をそのまま残さないのか
TOPIXに多くの企業を入れれば、日本株市場を幅広く表せるようにも思えます。
しかし銘柄数が多ければよいとは限りません。
TOPIXは単なる統計ではなく、実際の投資に使われる指数だからです。
TOPIXに連動する投資信託やETFなどは、指数の構成に合わせて株式を保有します。
そのため構成銘柄には、実際に投資家が一定量の株式を売買できることが求められます。
時価総額が小さく、日々の売買も少ない銘柄まで指数に大量に組み入れれば、指数連動ファンドが株式を売買することが難しくなる場合があります。
そこで新TOPIXでは、流動性を基準として銘柄を選ぶ仕組みに変わります。
流動性によって銘柄を選別する
新TOPIXでは、主に2つの基準が重要になります。
1つが年間売買代金回転率です。
株式が市場でどれくらい活発に売買されているかを見る指標です。
もう1つが浮動株時価総額です。
創業家や親会社などが固定的に保有している株式ではなく、市場で実際に流通する可能性の高い株式を考慮した時価総額です。
つまり新TOPIXでは、
実際に株式が売買されているか
投資できる株式の規模が十分にあるか
という2つの視点から企業を選びます。
この基準を満たさない企業がTOPIXから段階的に外れるため、最終的な構成銘柄数が減っていくのです。
約1,000銘柄という数字が先に決まっているわけではない
ここで注意したいのは、新TOPIXを「約1,000銘柄にする」という単純な制度ではないことです。
例えば最初から、
「時価総額上位1,000社をTOPIXにする」
と決めているわけではありません。
年間売買代金回転率と浮動株時価総額などの基準によって銘柄を選んだ結果として、構成銘柄数が現在より大幅に減ると見込まれています。
参考記事では、QUICKが2026年8月までのデータを使って試算した結果、最終的に987銘柄になるとしています。
したがって実際の銘柄数は、企業の株価や浮動株、売買状況などによって変わります。
「約1,000銘柄」は目標数ではなく、現在のデータから見た結果の目安と考える必要があります。
大企業だけの指数になるわけではない
銘柄数を減らすと聞くと、大企業だけを集めた指数になるように感じるかもしれません。
しかし新TOPIXは単純な大型株指数ではありません。
今回の改革では、TOPIXと市場区分が切り離されます。
プライム市場だけではなく、スタンダード市場やグロース市場も選定対象になります。
つまりプライム市場の企業でも流動性基準を満たさなければTOPIXから外れる可能性があります。
反対にスタンダード市場やグロース市場の企業でも、十分な流動性と浮動株時価総額があればTOPIXに入ることができます。
企業の所属市場ではなく、投資対象としての条件が重要になるのです。
TOPIXから外れる企業はすぐに0になるわけではない
今回の改革では、構成銘柄を一気に約1,000銘柄まで減らすわけではありません。
市場への影響を抑えるため、段階的な移行措置が設けられています。
2026年10月の初回定期入替で継続基準を満たさなかった銘柄については、指数への組み入れ比率をまず87.5%に引き下げます。
その後3カ月ごとに12.5%ずつ低下させます。
途中で再評価も行われます。
基準を満たせなかった企業については、最終的に2028年7月に組み入れ比率が0%となります。
TOPIXに連動する巨額の運用資金が一度に株式を売却することを避けるためです。
銘柄数を減らすことで企業間の競争が生まれる
新TOPIXの重要なポイントは、企業間の競争を促すことです。
これまでのTOPIXには、旧東証1部に上場したことで長期間採用され続けてきた企業もあります。
新TOPIXでは、一度採用されれば永久に残れるわけではありません。
流動性が低下すれば除外される可能性があります。
一方、現在TOPIXに入っていない企業でも、基準を満たせば新規採用される可能性があります。
企業にとっては、
企業価値を高める
株価を市場から評価してもらう
浮動株を確保する
投資家への情報発信を強化する
株式の売買を活発にする
といった取り組みの重要性が高まります。
TOPIX入りが既得権ではなくなるわけです。
約1,000銘柄でも日本株市場を幅広く表せるのか
銘柄数が減ると、日本株市場全体を表せなくなるのではないかという疑問もあります。
ここで重要なのが時価総額の分布です。
株式市場では、すべての企業が同じ規模ではありません。
大企業や中堅企業が市場全体の時価総額の大部分を占めています。
一方、時価総額や売買代金が非常に小さい企業を多数加えても、指数全体への影響は限定的です。
新TOPIXでは、浮動株時価総額の累積比率を使うことで、市場の大部分をカバーしながら流動性の低い銘柄を絞り込む考え方が採用されています。
単純に企業数を多くするのではなく、投資可能な日本株市場をどれだけ適切に表せるかを重視するわけです。
個人投資家にも銘柄選別の考え方が参考になる
新TOPIXの改革は、個人投資家が企業を見る際にも参考になります。
企業を選ぶときには、売上高や利益、配当、株価だけを見がちです。
しかし実際に株式へ投資する場合には、
市場で十分に売買されているか
必要なときに売却できるか
浮動株がどれくらいあるか
といった流動性も重要です。
どれほど魅力的に見える企業でも、売買が極端に少なければ、購入や売却の際に想定した価格で取引できない可能性があります。
新TOPIXは、こうした「投資のしやすさ」を指数そのものに反映しようとする改革でもあります。
結論
新TOPIXでは、現在1600を超える構成銘柄が最終的に大幅に絞り込まれる見通しです。
ただし、最初から約1,000銘柄にすると決めているわけではありません。
年間売買代金回転率と浮動株時価総額などによって流動性の高い企業を選んだ結果として、QUICKの試算では987銘柄になると見込まれています。
今回の改革の目的は、単純にTOPIXの銘柄数を減らすことではありません。
市場区分に基づいて幅広く企業を組み入れる指数から、投資家が実際に売買しやすい企業を選ぶ指数へ変えることです。
プライム市場の企業でも基準を満たさなければ外れ、スタンダード市場やグロース市場でも基準を満たせば入ることができます。
新TOPIXでは「上場しているから入る」のではなく、「投資対象として選ばれるから入る」という考え方が強まります。
約1,000銘柄への絞り込みは、日本の上場企業に継続的な競争を促す改革でもあるのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月25日朝刊 新TOPIX、競争促す
日本取引所グループ 2025年3月26日 TOPIX等の見直しについて