転売規制を強めると新築マンションの倍率は下がるのか 抽選販売と投資需要の関係編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

人気の新築マンションでは、購入希望者が販売戸数を上回り、抽選になることがあります。

ここで問題になるのが、購入希望者の中に実際に住む人だけでなく、値上がり後の売却を目的とした投資家が含まれている場合です。

短期転売への税負担や規制を強化すれば、こうした投資需要が減り、抽選倍率が下がる可能性があります。

マンション価格高騰対策の効果は、販売価格だけでなく、誰が購入できるようになるのかという視点からも考える必要があります。

なぜ新築マンションで抽選が起きるのか

新築マンションでは販売できる住戸数が決まっています。

例えば100戸を販売するマンションに200件の購入申し込みがあれば、全員に販売することはできません。

特定の住戸に複数の申し込みが集まれば、抽選などによって購入者を決めることになります。

特に駅に近い物件や都心の大規模マンションなどでは、購入希望者が集中することがあります。

価格だけで需要と供給を調整せず、一定の販売価格で購入希望者を募れば、人気物件では抽選が発生しやすくなります。

実需と投資需要が同じ物件を取り合う

マンションの購入希望者は大きく分けると、実際に住むことを目的とする人と、資産運用を目的とする人がいます。

もちろん両方の目的を持つ人もいます。

自宅として住みながら、将来の資産価値も重視することは珍しくありません。

問題になるのは、短期間の値上がり益を主な目的として購入する需要が大量に加わる場合です。

実際に住みたい人が100人いるところへ短期転売を考える50人が加われば、購入競争は150人になります。

投資需要が抽選倍率を押し上げる可能性があります。

販売価格と市場価格の差が転売を呼び込む

短期転売が起こりやすくなる要因の一つが、新築時の販売価格と引き渡し後の市場価格との差です。

例えば1億円で販売されたマンションが、引き渡し後すぐに中古市場で1億2,000万円程度で取引できると期待されているとします。

購入できただけで大きな含み益を得られる可能性があります。

そうなれば自宅を探している人だけでなく、値上がり益を狙う購入者も申し込みやすくなります。

人気物件の抽選に当たること自体が、経済的な価値を持つような状態です。

転売コストを高くすると投資需要は減りやすい

短期転売への課税を強化した場合を考えてみます。

売却によって得られる利益のうち、税金として支払う金額が増えれば、最終的に手元へ残る利益は小さくなります。

さらに売買手数料や登記費用、借入金利などもあります。

短期転売による期待利益が小さくなれば、抽選に申し込む投資家の一部は撤退する可能性があります。

投資需要が減れば、販売戸数が同じでも抽選倍率は下がる方向に働きます。

倍率が下がれば実需層にはメリットがある

例えば100戸に300件の申し込みがあったとします。

そのうち100件が短期的な投資目的だったと仮定します。

転売対策によってこの100件がなくなれば、申し込みは200件になります。

販売価格が変わらなくても、実際に住みたい人が購入できる可能性は高まります。

つまり転売対策には、価格を下げる以外にも住宅取得機会を広げる効果が考えられます。

これはマンション高騰対策を評価するときの重要な視点です。

ただし倍率低下だけでは成功とはいえない

抽選倍率が下がったからといって、必ず政策が成功したとは限りません。

例えば短期転売への規制によって投資家が申し込みをやめても、販売会社が価格を引き上げる可能性があります。

100戸に300件の申し込みがあるのであれば、価格が需要に対して低いと判断されることもあります。

次の販売期から価格を引き上げれば、購入希望者は減るかもしれません。

倍率は下がりますが、実需層にとって購入しやすくなったとは限りません。

抽選倍率と販売価格をセットで見る必要があります。

投資家が長期保有へ切り替える可能性もある

短期転売だけを規制した場合、投資家が市場から完全に退出するとは限りません。

例えば購入後1年以内の売却に追加的な負担が設けられれば、2年や3年保有してから売却する戦略へ変える可能性があります。

その場合、新築マンションの購入申し込み自体は減らないかもしれません。

短期転売は減っても、投資目的の購入需要は残ることになります。

どのような税制を導入するかによって、抽選倍率への影響も変わります。

現金購入者には金利上昇の影響も小さい

投資需要を考えるときには資金調達方法も重要です。

住宅ローンなどの借入金を使う購入者は、金利上昇によって購入コストが増えます。

一方、現金で購入する投資家であれば、住宅ローン金利上昇の直接的な影響は小さくなります。

都心の高額マンションでは、購入者の資金力によって市場環境の変化に対する反応が異なる可能性があります。

税制、金利、購入者属性を合わせて見る必要があります。

販売方法そのものも論点になる

短期転売を抑える方法は税制だけではありません。

マンションを販売する事業者側が購入条件を設ける方法も考えられます。

例えば同一人物による複数住戸への申し込みを制限したり、一定期間の転売について条件を設けたりする考え方です。

一方、住宅は重要な資産でもあるため、所有者が自由に売却できることも重要です。

販売時のルールでどこまで転売を制限できるのかは、税制とは別に検討が必要な論点になります。

誰が買えたのかを見ることが重要

新築マンションの投機対策を評価するときには、短期売買件数だけを見るのでは十分ではありません。

抽選倍率はどう変わったのか。

購入者のうち実際に居住する人の割合は増えたのか。

販売価格はどう変化したのか。

購入後すぐに売却される住戸は減ったのか。

こうした数字を組み合わせて確認する必要があります。

最終的な目的が実需層の住宅取得を後押しすることであれば、短期売買件数そのものより、誰が住宅を取得できるようになったのかが重要になります。

結論

人気の新築マンションでは、実需層と投資家が同じ物件へ申し込むことで抽選倍率が高くなる可能性があります。

特に新築時の販売価格と引き渡し後の市場価格に大きな差があれば、短期間の値上がり益を狙う購入需要が集まりやすくなります。

短期転売への税負担や規制を強化して期待利益を小さくすれば、一部の投資需要が減り、抽選倍率を下げる方向に働く可能性があります。

その結果、実際に住みたい人が購入できる機会が広がることも考えられます。

ただし倍率が下がっても、販売価格が上昇すれば住宅が購入しやすくなったとは限りません。

また、投資家が短期転売から長期保有へ切り替えるだけの可能性もあります。

マンションの転売対策を評価するときには、価格や短期売買件数だけでなく、抽選倍率と購入者の実態まで見ることが重要です。

参考

税のしるべ 2026年9月14日 国交省が新築マンション高騰対応で税制措置を要望、主に短期売買を問題視か

タイトルとURLをコピーしました