3割特例と簡易課税はどちらが有利になるのか みなし仕入率との違いを理解する編

税理士
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令和8年度税制改正で設けられた3割特例は、一定の個人事業者について、売上げに係る消費税額の30%を納付税額とする負担軽減措置です。

計算が簡単なので、3割特例を利用できるのであれば、そのまま使えばよいと思うかもしれません。

しかし、消費税には簡易課税制度もあります。

業種によっては、3割特例より簡易課税制度を利用した方が納付税額が少なくなる可能性があります。

特に重要になるのが、簡易課税制度の「みなし仕入率」です。

3割特例では売上税額の30%を納付する

3割特例では、売上げに係る消費税額の70%を仕入税額とみなして控除します。

その結果、残った30%が納付税額になります。

例えば、売上げに係る消費税額が100万円だったとします。

3割特例では70万円を控除し、30万円を納付する計算になります。

実際に仕入れや経費でいくら消費税を支払ったのかは、基本的に納付税額の計算に影響しません。

簡易課税も売上税額を基準に計算する

簡易課税制度も、実際の仕入税額を1件ずつ積み上げるのではなく、売上げに係る消費税額を基準として仕入税額控除を計算する制度です。

ただし、3割特例との大きな違いがあります。

簡易課税では、事業の種類ごとに定められたみなし仕入率を使います。

実際に仕入れや経費で支払った消費税額ではなく、売上税額にみなし仕入率を掛けた金額を仕入税額とみなして控除します。

そのため、どの事業区分に該当するのかによって納付税額が変わります。

卸売業のみなし仕入率は90%

簡易課税制度では、第1種事業である卸売業のみなし仕入率は90%です。

例えば、売上税額が100万円だったとします。

簡易課税では、その90%に当たる90万円を仕入税額とみなして控除します。

したがって、納付税額は10万円になります。

同じ売上税額100万円について3割特例を利用すると、納付税額は30万円です。

この条件だけを比較すると、簡易課税の方が20万円少なくなります。

卸売業では、3割特例が利用できる場合でも簡易課税の方が有利になる可能性があることが分かります。

小売業ではみなし仕入率80%

第2種事業である小売業などのみなし仕入率は80%です。

売上税額100万円であれば、80万円を仕入税額とみなして控除し、納付税額は20万円になります。

3割特例なら納付税額は30万円です。

この場合も、単純な税額比較では簡易課税の方が10万円少なくなります。

一定の農林水産業についても80%のみなし仕入率が適用される場合があります。

したがって、こうした事業を営む個人事業者についても、3割特例と簡易課税の比較が重要になります。

みなし仕入率70%なら税額は同じ水準になる

簡易課税制度には、みなし仕入率70%となる事業区分もあります。

売上税額100万円に70%を掛ければ、みなし仕入税額は70万円です。

納付税額は30万円となります。

3割特例も売上税額の30%を納付するため、単純な計算では同じ水準になります。

このように、3割特例と簡易課税の違いを理解するには、納付割合だけでなく、みなし仕入率を見ると分かりやすくなります。

みなし仕入率が70%未満なら関係が逆転する

簡易課税のみなし仕入率が70%を下回る事業では、単純な税額比較では3割特例の方が有利になる可能性があります。

例えば、みなし仕入率が50%の事業で売上税額が100万円だったとします。

簡易課税では50万円を控除するため、納付税額は50万円になります。

3割特例なら納付税額は30万円です。

この場合には3割特例の方が20万円少なくなります。

つまり、簡易課税だから常に有利というわけでもありません。

複数の事業を営んでいる場合は計算が複雑になる

個人事業者が1種類の事業だけを営んでいるとは限りません。

例えば、商品の卸売りと小売りを行いながら、サービス業も営んでいるケースがあります。

簡易課税では、事業の種類によってみなし仕入率が異なります。

そのため、複数の事業を営んでいる場合には、売上げを事業区分ごとに管理することが重要になります。

一方、3割特例では、基本的に事業区分ごとのみなし仕入率を使って納付税額を計算する必要はありません。

税額だけでなく、計算や売上管理の事務負担にも違いがあります。

簡易課税には届出が必要になる

3割特例と簡易課税には、手続面でも違いがあります。

3割特例は、適用要件を満たしたうえで、申告書に適用を受ける旨を記載して利用する仕組みです。

一方、簡易課税制度は原則として簡易課税制度選択届出書の提出が必要です。

通常は、簡易課税を適用しようとする課税期間が始まる前に届出書を提出しておく必要があります。

ただし、3割特例の適用後に簡易課税へ移行する場合については、令和8年度税制改正で届出時期に関する特例が設けられています。

したがって、税額だけでなく、いつまでにどの届出書を提出する必要があるのかも確認することが重要です。

本則課税も比較対象になる

3割特例と簡易課税だけを比較すればよいとは限りません。

多額の設備投資をする年などには、本則課税の方が有利になる可能性があります。

例えば、店舗改装や機械購入などによって多額の消費税を支払った場合、本則課税なら実際の仕入税額を控除できます。

3割特例や簡易課税では、実際の設備投資額がそのまま仕入税額控除に反映されるわけではありません。

そのため、消費税の計算方法を検討するときには、3割特例、簡易課税、本則課税の3つを比較することが重要です。

結論

3割特例では、売上税額の70%を仕入税額とみなして控除し、残る30%を納付します。

一方、簡易課税制度では、事業区分ごとに定められたみなし仕入率によって仕入税額控除を計算します。

卸売業のみなし仕入率は90%、小売業などは80%です。

そのため、これらの業種では、単純な税額比較なら3割特例より簡易課税の方が納付税額を抑えられる可能性があります。

反対に、みなし仕入率が70%を下回る事業では、3割特例の方が有利になるケースがあります。

さらに、多額の設備投資がある場合には本則課税も比較する必要があります。

3割特例を利用できるからといって自動的に選択するのではなく、自分の事業区分、みなし仕入率、設備投資の予定、届出状況を確認しながら計算方法を検討することが重要です。

参考

税のしるべ 2026年9月7日 令和8年・役に立つ消費税実務問答集

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