3割特例終了後に簡易課税へ移れるのか 届出書の特例と提出時期を整理する編

税理士
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令和8年度税制改正で設けられた3割特例は、一定の個人事業者について消費税の納付税額を売上税額の30%とする負担軽減措置です。

しかし、3割特例も恒久的な制度ではありません。

特例が終了した後は、本則課税や簡易課税など通常の消費税制度によって申告することになります。

そこで問題になるのが、3割特例を利用した後に簡易課税制度へ移行したい場合、いつまでに届出書を提出すればよいのかという点です。

簡易課税には原則として事前の届出が必要

簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下である事業者が、一定の要件のもとで利用できる制度です。

実際の仕入税額を積み上げる代わりに、売上税額へ事業区分ごとのみなし仕入率を適用して仕入税額控除を計算します。

簡易課税を選択するためには、原則として簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。

通常は、簡易課税を適用したい課税期間が始まる前に届出書を提出しておかなければなりません。

通常ルールでは判断を早くする必要がある

例えば、個人事業者が翌年1月1日から簡易課税制度を利用したいとします。

通常のルールであれば、原則として前年12月31日までに簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。

つまり、翌年の売上げや仕入れがまだ分からない段階で、簡易課税を選択するかどうか判断しなければなりません。

特に特例制度から通常制度へ移行する事業者にとっては、判断が難しい場合があります。

3割特例の後には届出時期の特例がある

そこで、3割特例を適用した事業者が、その翌課税期間から簡易課税制度へ移行する場合には、届出時期について特例が設けられています。

一定の要件を満たせば、簡易課税を適用しようとする課税期間が始まる前ではなく、その課税期間に係る消費税申告書の提出期限までに簡易課税制度選択届出書を提出することができます。

これは通常の簡易課税制度の届出ルールと比べて大きな違いです。

3割特例から通常の消費税制度へ移行する事業者に、判断するための時間を確保する仕組みといえます。

申告期限まで比較できる

この特例を利用できれば、簡易課税を選択するかどうかを課税期間が始まる前に決める必要がありません。

実際の売上げや仕入れなどを確認したうえで、簡易課税制度を選択するか検討できます。

例えば、事業内容からみなし仕入率が高く、簡易課税の方が税負担を抑えられるのであれば、簡易課税への移行を検討できます。

一方、多額の設備投資があり、本則課税による実際の仕入税額控除の方が有利になるのであれば、本則課税を選ぶことも考えられます。

選択のための時間が増えることは、小規模事業者にとって大きな意味があります。

3割特例を使えば自動的に簡易課税になるわけではない

注意したいのは、3割特例を利用した後、自動的に簡易課税制度へ移行するわけではないことです。

簡易課税制度を利用するためには、原則として簡易課税制度選択届出書が必要です。

3割特例の適用実績そのものが、簡易課税制度の選択届出に置き換わるわけではありません。

そのため、3割特例終了後にどの計算方法を利用するのかを検討し、簡易課税を選択するのであれば必要な届出を忘れないことが重要です。

2割特例にも同様の考え方がある

このような届出時期の特例は、3割特例だけに突然設けられた考え方ではありません。

インボイス制度導入時の2割特例についても、2割特例を適用した課税期間の翌課税期間から簡易課税制度へ移行する場合について、一定の届出時期の特例があります。

令和8年度税制改正では、3割特例についても同様に、特例終了後の簡易課税への移行をしやすくする仕組みが用意されています。

2割特例から3割特例、さらに通常の消費税制度へと段階的に移行することを意識した制度設計といえます。

簡易課税を選んだ後の影響も考える

簡易課税制度は、ある年だけ税額が少なくなるから選べばよいというものではありません。

簡易課税制度選択届出書を提出すると、その後の課税期間にも影響します。

また、設備投資をした場合でも、簡易課税では実際に支払った消費税額をそのまま仕入税額控除するわけではありません。

そのため、将来大きな設備投資を予定している場合には注意が必要です。

申告期限まで選択を待てるからこそ、目の前の1年だけでなく、その後の事業計画も含めて判断することが重要になります。

3つの計算方法を比較する

3割特例終了後の消費税を考える際には、本則課税、簡易課税、そして終了する3割特例の税負担を比較しておくと制度の変化を理解しやすくなります。

3割特例では売上税額の30%を納付します。

簡易課税では事業区分ごとのみなし仕入率によって納付税額が決まります。

本則課税では実際の課税仕入れに係る消費税額を基礎として計算します。

売上規模だけでなく、業種、経費構造、設備投資などによって有利な方法は変わります。

結論

3割特例を適用した後、その翌課税期間から簡易課税制度へ移行することは可能です。

通常、簡易課税制度選択届出書は適用を受けようとする課税期間が始まる前に提出する必要があります。

しかし、3割特例を適用した事業者については、一定の要件を満たせば、その翌課税期間に係る消費税申告書の提出期限までに簡易課税制度選択届出書を提出できる特例があります。

これによって、実際の売上げや仕入れ、設備投資などを確認しながら、簡易課税を選択するか検討できるようになります。

ただし、3割特例終了後に自動的に簡易課税へ移行するわけではありません。

3割特例が終了する時期を見据え、本則課税と簡易課税のどちらを利用するのかを早めに検討し、必要な届出を確実に行うことが重要です。

参考

税のしるべ 2026年9月7日 令和8年・役に立つ消費税実務問答集

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