なぜ新聞は消費税1%にならないのか 同じ軽減税率8%でも扱いが分かれる理由編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

現在の消費税では、一定の飲食料品と新聞の定期購読に8%の軽減税率が適用されています。

ところが2027年4月から予定されている飲食料品の消費税率1%への引下げでは、新聞は対象になりません。

現在は同じ8%なのに、飲食料品は1%、新聞は8%のままになります。

なぜこのような違いが生じるのでしょうか。

ポイントは、今回の制度が現在の軽減税率そのものを8%から1%へ変更する制度ではなく、飲食料品に限定した臨時的な特例として設計されていることです。

現在の軽減税率は飲食料品だけではない

消費税の標準税率は10%ですが、一定の商品や取引については8%の軽減税率が適用されています。

代表的なのが飲食料品です。

酒類や外食などを除く一定の飲食料品には8%が適用されています。

もう一つ、軽減税率の対象となっているのが新聞です。

具体的には、週2回以上発行される新聞で、定期購読契約に基づいて譲渡されるものが対象です。

したがって現在は、一定の飲食料品と一定の新聞が同じ8%という税率で並んでいます。

今回は軽減税率全体を1%にする制度ではない

ここが今回の制度を理解するうえで重要です。

2027年4月から予定されている措置は、軽減税率8%そのものを1%へ変更するものではありません。

大綱案では、飲食料品について2027年4月1日から2029年3月31日まで消費税率を1%とする特例を設けるとしています。

つまり1%は、新しい恒久的な軽減税率ではありません。

あくまで飲食料品を対象とした2年間限定の特例税率です。

そのため、現在8%が適用されているものすべてが自動的に1%になるわけではありません。

新聞は現在の8%を維持する

大綱案では、この点が明確にされています。

現在の軽減税率の対象である飲食料品については1%の特例税率を適用する一方、飲食料品以外の軽減税率対象品目である新聞については現行制度を維持します。

したがって2027年4月以降は、

飲食料品は1%

一定の新聞の定期購読は8%

それ以外の標準税率対象は原則10%

という3つの税率が併存することになります。

現在は8%と10%を区分することが中心ですが、2年間は1%、8%、10%を区分する必要が生じます。

なぜ飲食料品だけを引き下げるのか

大綱案では、今回の飲食料品に対する税率引下げについて、現下の物価上昇を踏まえた臨時的な措置として位置づけています。

飲食料品は日常生活で継続的に購入するものであり、食料価格の上昇は家計に直接影響します。

そこで2027年4月から2年間に限って飲食料品の消費税負担を大きく引き下げる仕組みが採用されています。

新聞を含む軽減税率制度全体を変更するのではなく、今回の政策目的に沿って飲食料品だけに特例を設ける形です。

その結果、同じ8%だった新聞との税率差が生まれます。

1%と8%の差は7ポイントになる

現在は対象となる飲食料品も新聞も8%です。

ところが2027年4月からは、飲食料品が1%となる一方、新聞は8%のままです。

両者の税率差は7ポイントになります。

例えば税抜1,000円で単純に考えると、1%なら消費税相当額は10円、8%なら80円です。

同じ税抜価格でも70円の差が生じます。

これまで同じ軽減税率というグループに入っていたものが、税率面では大きく分かれることになります。

インボイスでも税率を区別する必要がある

事業者にとっても重要な変更です。

大綱案では、1%の特例税率が適用される飲食料品について、適格請求書などの適用税率欄には特例税率を記載し、消費税額等についても1%を前提として計算することとしています。

したがって複数の税率の商品を扱う事業者では、それぞれを正しく区分する必要があります。

例えば飲食料品と新聞の双方を取り扱う場合には、同じ軽減税率対象だった商品であっても、2027年4月以降は税率が異なる可能性があります。

さらに10%の商品も扱えば、1%、8%、10%という3税率への対応が必要になります。

レジや会計システムへの影響もある

税率が増えれば、実務も複雑になります。

レジでは商品ごとに正しい税率を登録する必要があります。

請求書や領収書、会計システムでも税率ごとに取引を区分しなければなりません。

しかも1%は2年間限定です。

2027年4月に8%から1%へ変更し、原則として2029年4月には再び8%へ戻すことになります。

事業者にとっては税率を一度変更して終わりではなく、2年後の復元まで見据えたシステム対応が必要になります。

2029年には再び同じ8%へ戻る

今回の1%は恒久措置ではありません。

予定どおり制度が実施されれば、2029年3月31日で飲食料品に対する1%の特例税率は終了します。

その後は飲食料品についても現在の軽減税率制度へ戻ることが前提となっています。

つまり、

2027年3月までは飲食料品8%、新聞8%

2027年4月から2029年3月までは飲食料品1%、新聞8%

2029年4月以降は飲食料品8%、新聞8%

という動きになります。

2年間だけ、現在同じ軽減税率に属している飲食料品と新聞が異なる税率になるわけです。

税率ではなく対象品目を見ることが重要になる

今回の制度が始まると、軽減税率対象だから何%と単純に判断することが難しくなります。

重要になるのは、その商品が何なのかです。

現在の軽減税率対象のうち、飲食料品に該当するのか、それとも新聞なのかを区別しなければなりません。

特に事業者にとっては、これまで8%としてまとめて処理していた取引を、そのまま一括処理できなくなる可能性があります。

消費者にとっては税率引下げが目立ちますが、事業者側から見ると税率区分を一つ増やす制度でもあります。

結論

現在は一定の飲食料品と一定の新聞の定期購読に、同じ8%の軽減税率が適用されています。

しかし2027年4月から予定されている1%への引下げは、軽減税率全体を変更する制度ではありません。

現下の物価上昇を踏まえ、飲食料品に限って2年間だけ適用する特例です。

そのため新聞は対象外となり、現在の8%が維持されます。

結果として2年間は、飲食料品1%、新聞8%、標準税率対象10%という3税率が併存することになります。

消費者にとっては飲食料品の負担軽減ですが、事業者にとってはレジ、インボイス、経理、会計システムなどで新たな税率区分への対応が必要になります。

今回の制度を理解するときは、軽減税率が8%から1%になると考えるのではなく、飲食料品だけに1%という臨時の特例税率が新設されると考えるのがポイントです。

参考

税のしるべ 2026年9月11日 令和8年9月14日号1面 飲食料品に係る消費税率引下げ等の大綱案が判明、具体的な財源は明示せず

飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱案 2026年9月8日時点

タイトルとURLをコピーしました