基礎控除と給与所得控除は何が違うのか 二つの控除を混同してはいけない理由編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

令和8年分の年末調整では、基礎控除と給与所得控除の両方が重要になります。

どちらにも控除という言葉が付いているため、同じような制度だと思われがちです。

しかし、この二つは所得税を計算するときの役割が違います。

給与所得控除は給与収入から給与所得を求めるための仕組みで、基礎控除は求めた所得からさらに差し引く所得控除です。

この違いを理解すると、令和8年度税制改正によって会社員の所得税がどのように変わるのかも見えやすくなります。

所得税は年収に直接かかるわけではない

会社員の所得税を考えるとき、まず理解しておきたいのが年収と課税所得は違うということです。

たとえば会社員が一年間に給与や賞与として受け取った金額が給与収入です。

一般に年収と呼ばれているものです。

しかし、この給与収入にそのまま所得税率を掛けるわけではありません。

まず給与収入から給与所得控除を差し引きます。

そこで求められるのが給与所得です。

さらに給与所得などから基礎控除をはじめとする所得控除を差し引きます。

その結果として求められる課税所得を基に所得税を計算します。

給与所得控除は所得を計算するための控除

給与所得控除は、給与収入から給与所得を求める段階で使われます。

会社員にも仕事をするためのさまざまな負担がありますが、個人事業主のように実際の必要経費を一つずつ差し引いて給与所得を計算するのが原則ではありません。

そこで、給与収入に応じた一定の給与所得控除を差し引く仕組みが設けられています。

給与収入から給与所得控除を差し引く。

ここまでが給与所得を求める計算です。

給与所得控除は、所得税の計算を始める前段階にある仕組みと考えると分かりやすいでしょう。

基礎控除は所得から差し引く控除

給与所得が求められた後に登場するのが基礎控除です。

基礎控除は所得控除の一つです。

所得控除には基礎控除のほか、扶養控除、配偶者控除、社会保険料控除、生命保険料控除などがあります。

これらを所得から差し引くことによって課税所得を求めます。

つまり、給与所得控除と基礎控除は同じ段階で使われる控除ではありません。

給与所得控除で所得を計算し、その後に基礎控除などの所得控除を差し引くという順番になります。

計算の流れを見ると違いが分かる

会社員の所得税の基本的な計算を簡単に整理すると分かりやすくなります。

最初に一年間の給与収入があります。

そこから給与所得控除を差し引いて給与所得を求めます。

次に給与所得などから基礎控除や社会保険料控除、扶養控除、生命保険料控除などを差し引きます。

そこで課税所得が求められます。

そして課税所得を基に所得税額を計算します。

給与収入から所得を求める段階に給与所得控除があり、所得から課税所得を求める段階に基礎控除があるという二段階の構造になっています。

令和8年分では両方が見直される

令和8年分の年末調整が例年以上に注目される理由の一つが、この二つの制度がともに見直されることです。

令和8年度税制改正では基礎控除が引き上げられました。

さらに給与所得控除についても最低保障額が引き上げられています。

つまり、給与所得者については給与収入から給与所得を求める段階と、その所得から課税所得を求める段階の双方に改正が入ります。

税負担への影響を見る場合には、基礎控除だけを取り出して考えるのではなく、給与所得控除の変更と合わせて考える必要があります。

控除が増えた金額だけ税金が減るわけではない

ここでもう一つ注意したいのが、控除額と減税額の違いです。

たとえば控除額が10万円増えたとしても、所得税がそのまま10万円減るわけではありません。

控除によって課税所得が10万円小さくなり、その減少部分に対応する税負担が軽くなるという仕組みです。

所得税には所得に応じた税率が適用されるため、同じ控除額の増加でも実際の税額への影響は人によって異なる場合があります。

控除額のニュースを見るときには、控除額そのものと実際に減少する税額を区別することが重要です。

年収の壁を考えるときにも重要になる

給与所得控除と基礎控除の違いは、いわゆる年収の壁を理解するときにも重要です。

税制上のさまざまな基準では、給与収入ではなく所得を使って判定するものがあります。

給与収入から給与所得控除を差し引くことで給与所得が決まるため、給与所得控除の金額が変われば所得の金額も変わります。

さらに本人の所得税を計算するときには基礎控除などが関係します。

そのため、年収だけを見て所得税や扶養の判定を考えると制度を誤解しやすくなります。

収入から所得へ、所得から課税所得へという順番で考えることが大切です。

年末調整では一年間の計算を完成させる

会社員は通常、自分で毎月の所得税を計算して納める必要はありません。

会社が給与や賞与を支払う際に所得税を源泉徴収しています。

ただし、毎月の源泉徴収だけでは一年間の正確な所得税額は確定しません。

年末に年間給与を確定させ、給与所得控除によって給与所得を求め、さらに基礎控除をはじめとする各種所得控除を反映して年税額を計算します。

そして、すでに源泉徴収された所得税との過不足を精算します。

令和8年分では税制改正後の仕組みを使ってこの計算を行うことになるため、二つの控除の違いを理解する意味が大きくなります。

結論

基礎控除と給与所得控除は、名前は似ていますが役割の異なる制度です。

給与所得控除は、給与収入から給与所得を求めるための控除です。

基礎控除は、その後に所得から差し引いて課税所得を求めるための所得控除です。

会社員の所得税は、給与収入から給与所得控除を差し引き、さらに基礎控除などを差し引いて課税所得を求めるという順番で考えると理解しやすくなります。

令和8年度税制改正では、この二つの控除がともに見直されています。

そのため、どちらか一方だけを見るのではなく、収入から所得へ、所得から課税所得へという所得税計算全体の流れの中で理解することが重要です。

この違いが分かれば、年末調整だけでなく扶養判定や年収の壁に関する制度も読み解きやすくなります。

参考

税のしるべ 2026年9月7日 8年分年末調整のしかたを公表、昨年との変更点や留意事項など掲載

国税庁 2026年8月31日 令和8年分 年末調整のしかた

タイトルとURLをコピーしました